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魅了魔法持ち王女は、女嫌いの皇帝に一途に溺愛される  作者: 青空一夏


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5/50

魅了魔法とは、歴史の教科書に刻まれた禁忌の魔法。

魔導士の答えはまさにそのものだった。


魔導士の震える声が、広間に落ちる。

「アウレリア王女殿下……あなた様の魔法属性は“心を惑わせる魔法”。

かつて王国を破滅寸前に追い込んだ“禁忌”の力でございます……!

忌まわしく、最も憎まれるべき魔法なのです!」


その瞬間、空気が凍りついた。

さきほどまで、私を畏敬の眼差しで見ていた貴族たちの視線は

驚愕へと揺らぎ、 やがて恐れと侮蔑へと変わっていった。


鑑定した魔道士は顔を歪め、

静かに、はっきりと距離を取る。

 

大臣の一人が、堪え切れず呟いた。

「なんと……すべては魅了の力だったのか……!どうも妙だとは思っていた。アウレリア殿下はあまりに完璧すぎた……。

我々はまんまと騙されていたのだ!」

 

 別の大臣が怒鳴る。

「また高位貴族の跡継ぎたちが破滅させられるぞ!だからあれほど美しく、驚くほど優秀だったのだ!

魔法で実力以上に見せていたに違いない!」

 

(無礼者……なんてひどいことを……!

お父様、お母様……怒ってください。私を守ってください……)


私は藁にもすがる思いで両親を振り返った。

けれど、 二人は大臣達よりも、さらに険しい顔で私を見つめていた。


怒りでも悲しみでもない。

それは長い謎の答えをようやく得たような、どこか安堵した表情だった。

 

「アウレリア……やはり……そうだったのか。

腑に落ちる点はいくつもあった……」

お父様は低い声でおっしゃった。それは確信に満ちた響き。


お母様も呟く。

「……どうして、アウレリアがそんな邪悪な力を……?

でも、これでようやくわかったわ。

あなたが私たちの子にしてはあまりに美しく、あまりに優秀だった理由。

全部……まやかしだったのね」

苦悩のようでいて、どこかホッとした笑みが浮かんでいる。

まるで喜んでさえいるような……


(どうして……どうしてそんな顔をするの……?

どうして臣下たちに怒ってくれないの……? 

守ってくれないの……?)

胸の奥が、きゅっと冷たく縮んだ。

 

「アウレリアを部屋へ連れて行け! 扉の前には見張りを置け。 ……お前は一歩たりとも外に出るな!」

お父様の怒声が、大広間に鋭く反響した。


近衛騎士たちが私の両側に近づいた。

その顔を見た瞬間、息が止まる。

いつもは敬愛の眼差しで私を守ってくれていた騎士たちが、

今は……明らかに怯えと嫌悪を隠していなかったのだ。

視線を合わせることすら避けたいと言わんばかりに、

目を逸らせ口を一文字に引き締めていた。


(どうして……? いつも優しくしてくれたのに……)

 

そして、お父様とお母様の後ろにいたミリアと視線が合った。

ミリアは、まるで見知らぬ怪物でも見たかのように、

大きく目を見開いていた。


「……ミリア……?」


呼びかけようとしたけれど、声が喉に貼りついて、

掠れた小さな音しか出なかった。


ついさっきまで「お姉様、お姉様」と笑顔で抱きついてきた妹が、

今は恐怖と困惑に震えるようなまなざしで私を見つめ、一歩、後ずさった。


そして、どこか明るい声音で

はっきりとこう言った。

「……なんだ……、お姉様は偽物だったのですね……。私と全然似ていないと思っていました。魔法で……そう見えていただけなのね?」

 

お母様と同じ、どこかホッとしたような安堵の表情だった。やはり、少しばかり嬉しそうに目が輝いている。

 

(ミリアまで……私を……疑うの……? そして、お母様と同じように喜ぶのね?)


胸の奥がツキンと痛んだ。その痛みは、さっき両親に裏切られた瞬間よりも、ずっと鋭かった。

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