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魅了魔法持ち王女は、女嫌いの皇帝に一途に溺愛される  作者: 青空一夏


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48/50

47 俯瞰視点

シルヴァンは腕を広げ、はっきりと言い放つ。

「アルシオン帝国は今この瞬間をもって、敵国グラディス王国に対し経済封鎖・ 国境封鎖・さらに周辺諸国への外交布告による包囲網を実施する!」


民衆から、地鳴りのような歓声が湧き上がった。武力による即時制圧ではなく、シルヴァンは“じわじわとグラディス王国を追い詰める”道を選んだのだ。


「グラディス王国よ!我が皇妃を冤罪で貶め、帝国を侮辱した代償……覚悟しておくがいい!」


帝都の空気が震え、民衆の怒りと支持が一つにまとまった。

こうして、アルシオン帝国による歴史的制裁が幕を開けたのである。


◆◇◆


それから数日後、グラディス王国側の商人一行は次々と各地で取り押さえられ、シスターたちも一人残らず捕縛された。


取り押さえられた瞬間、シスターたちは一斉に悲鳴を上げた。

「離しなさい!私は悪くないのよ!グラディス王国の王妃様の指示に従っただけなのに!」

「私は知らない、何もしてない!」


シスター長は暴れて兵士の腕を噛もうとまでしたが、あっさり地面に押さえつけられ、泣き喚きながら引きずられていく。

「やめてぇぇ! 私は中央孤児院のシスター長だったのよ!こんな扱い、許されるはずがないんだからっ!……こんなことになったのも、いきなりやって来た皇妃のせいよっ!あの女さえ、いきなり孤児院視察に来なければ……」


シスターたちの誰一人、自分の過ちを認めなかった。調べの結果、噂の流布に関わっていたのは彼女たちだけであることが判明し、商人たちは即刻グラディス王国へ送還された。


だが当然のごとく、その日を境に、グラディス王国とアルシオン帝国の貿易は完全に途絶える。

帝国市場から締め出されたグラディス王国の商人たちは、翌日から目に見えて取引先を失い、国はゆるやかに、しかし確実に、衰退の道を辿り始めた。


捕らえられたシスターたちの処遇について、カミラは自ら教育係を買って出た。

「陛下、ぜひ私にお任せください。私の敬愛する女神様を貶めた者たちには、徹底的な教育が必要なのです。マーサたちと同じく“下働きのメイド”として、私とダリア先輩でビシバシ躾けていきます!」

きらきらした目で訴えるカミラに、シルヴァンはにやりと笑みを浮かべた。


本来なら、シスターたちは処刑されてもおかしくない罪を犯した。しかし、心優しいアウレリアは処刑を望まなかった。

そしてシルヴァンもまた“生きて償わせる方が良い”と判断した。


ならば、 正義感が強く、アウレリアを“女神様”と崇めるカミラに任せたほうが面白い。そう考えたシルヴァンは、彼女の申し出をそのまま受け入れた。


こうしてシスターたちは、毎日のようにダリアの説教とカミラの怒声に悩まされる日々を送ることになった。


朝から晩まで、下働きとして引きずり回される。井戸の水運びに始まり、山のような洗濯物を手洗いし、厚手の布を絞れば腕が悲鳴を上げた。王宮中の床磨きでは膝にタコを作り、時には馬小屋の掃除――馬糞の処理や藁の総入れ替えまで任される。


そしてどんな作業にも、背後には必ずダリアがいる。

「こんなことで疲れたですって?大丈夫、すぐ元気になれますわ。アウレリア様への敬意が、何よりも大きな活力になります。つまりあなた方には、私が心から敬愛するアウレリア様への“基本的な敬い”が全然足りていません!」

ダリアは作業の合間ごとにアウレリアへの賛美を復唱させ、腹の底から声を絞り出させた。


床磨きの際は、自分の姿が映るまで何百回でも磨かせる。

「床磨きは心磨きです。光るまで磨けば、あなた方の心もきっと光りますよ?」

手を抜けば即座にやり直し。逃げようとすれば、どこまでもカミラが追いかけ、ひょいと抱え上げてはダリアの元へ戻される。


そして少しでもサボろうものなら、休日は返上。カミラの“地獄のしごき”が始まるのだ。

「では、心を鍛える訓練に移る!腕立て伏せ連続百回!女神様の美点を唱えながらスクワット百回!最後に水桶を両手に持って、皇城のまわりを二周です!!」

「ひっ……む、無理です……」

「大丈夫!できますとも!“女神様に迷惑をかけました”と唱えながら歩くだけです!水をこぼしたら最初からやり直し!返事は腹の底からしなさい!」

「はっ、はいぃ……!」

シスターたちは涙目になりながら、今日も下働きとして働き続けるのだった。


一方、グラディス王国では……


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