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魅了魔法持ち王女は、女嫌いの皇帝に一途に溺愛される  作者: 青空一夏


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36/50

35 俯瞰視点

こちらはグラディス王国。

昼下がりの王族専用サロンでは、お茶の時間の優雅な光景が広がる。王妃は紅茶を飲み、ミリアは菓子をつまみながら、ファッション雑誌をぼんやり見ていた。


レオニスは国王と、雑談を交わす。

「最近、税収が伸びんのだ。民が怠けているに違いない。私の政策はすべて完璧なのにな」

「はぁ、全くおっしゃる通りですね。父上も嘆いておりましたよ」


そこへ、王妃付きの侍女が駆け込んできた。

「お……王妃様っ! 本日、アルシオン帝国よりお手紙が……!」

サロンの空気が一瞬で張り詰めた。

王妃が眉をひそめ、扇子越しに侍女を見つめる。

「帝国? 珍しいわね……手紙をよこしなさい」

侍女は震える指で手紙を差し出した。


王妃の指先が封を裂き、中身を取り出した瞬間、ふっと頬を緩めた。

「……あぁ、帝国について行かせた侍女たちの報告だわね……どうせ、アウレリアがみじめな生活を送っているという内容に……えっ?どういうことよ!」


ミリアが身を乗り出す。

「え? お母様、ちょっと見せてください」

手紙を奪い取ったミリアの顔が、読み進めるごとに真っ赤になり、次には真っ青になった。手紙にはマーサの歪んだ近況報告が記されていた。


****************

王妃殿下


アウレリア様のアルシオン帝国での生活を、箇条書きでご報告申し上げます。


 ・皇帝陛下はアウレリア王女殿下を皇妃として迎え入れました。

 ・皇帝陛下に側妃は一人もおりません。

 ・最高級のドレスが山ほど仕立てられ、皇族専用宝飾店ではティアラやネックレスを特注されました。

 ・アウレリア殿下は皇帝に蕩けるほど溺愛されており、毎日幸せそうにお過ごしです。


その下には、マーサの嫉妬と怒りのこもった個人的な感想が連なっている。


毎日が腹立たしいです。私ども三人はダリアの部下になり、メイドの地位に落とされました。 なにか粗相をすると、皇城中のご不浄を掃除させられます。

アウレリア殿下は、皇帝の寵愛を盾に取り、威張り腐っています……そして、皇帝は醜男どころか、絶世の美男子です……


マーサ・フォーデン

****************


ミリアの顔が醜く歪んだ。

「な……なによこれ……っ!お姉様が…… そんないい暮らしをしているというの!…… 私は毎日退屈しているというのに!?」


震えながら封筒の奥を漁ると、一枚の厚紙が指に触れた。

「なによ、これ……? 誰かの肖像紙だわね。えっ……すっごい美形なんだけど……こんな素敵な男性、今まで見たこともないわよ……」

取り出した瞬間、ミリアは口を ぽかんと開けたまま、だらしない顔で見惚れた。


裏面を見ると、『アルシオン帝国、シルヴァン皇帝の精緻な肖像紙です。こんな麗しい皇帝に毎日アウレリア殿下は愛の言葉を囁かれています』と記されていた。


光を帯びた白銀の髪に、神秘めくアメジストの瞳。

引き締まった細身の体には、剣士のような緊張感と艷やかな色香が共存している。

存在そのものが視線を奪う、完全無欠の男。

女性の理想を詰め込んだ“究極形”と言って差し支えない美貌だった。


「なっ……なに、これぇ! なんでお姉様が、こんな極上の男性に甘やかされていますの!? 私が……私がお嫁に行けば良かったわ!私の幸せを奪ったのはお姉様だわね……悔しいぃー!」

すっかり取り乱して叫ぶミリア。


「えっ!……醜いどころの話ではありませんわ!この国では見たこともないほどの美男子ですこと……!どうしてあのアウレリアが、こんな幸運を掴むのかしら!?……忌々しい……本当に忌々しいわ!」

王妃も不満を漏らした。


「皇帝がアウレリアを皇妃として迎えただと……!?全く話が違うではないか! 宰相を呼べ! 嘘を吐きおって……私を騙したのか……くそっ、レオニスよりもはるかに美男子ではないか……」

シルヴァン皇帝の肖像紙を見た国王は、駄々っ子のようにわめき散らす。


突然シルヴァン皇帝と比較されたレオニスは、何と言っていいのかわからない。拳を握りしめ、ただ耐えていた。だが、ミリアがレオニスをさらに追い詰める。

「レオニス!どうしてあなたは……そんなに“普通”なのよ!お姉様は、こんなにも美しいアルシオン帝国の皇帝に溺愛されて、毎日愛をささやかれて、ドレスも宝石も山ほど与えられているというのに……なのに私は、宰相の一人息子というだけが取り柄の、つまらないあなたと一緒にいなきゃいけないわけ?こんなこと……間違っているわよ!」


レオニスのプライドは粉々に砕け、いつもは損得を考えて抑えていた感情のタガが外れた。

「君こそ人のことが言えるのかよ! 平凡な顔に、お粗末な頭。話すことといえば、ドレスと宝石と占いの話ばかり。美貌も教養も、気品も話術も何ひとつない。そのうえ性格まで最悪じゃないか……!」


サロンは阿鼻叫喚の地獄と化し、 王族たちの嫉妬と怒気が渦巻くのだった。


ここまでお読みくださりありがとうございます!

少しでも楽しいと思っていただけたら、評価のほうをつけていただけると更新のモチベーションがあげりますので、どうぞよろしくお願いします。

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