表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魅了魔法持ち王女は、女嫌いの皇帝に一途に溺愛される  作者: 青空一夏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/50

34

私はシルヴァンと皇城の庭園をゆっくりと歩いている。昼食のあとや夕方には、こうして二人で庭園を散歩するのが、いつの間にか私たちの日課になっていた。


柔らかな陽光が、楽園のように降り注いでいる。庭園のあちらこちらで、小さく澄んだ鳥のさえずりが聞こえていた。

風に乗って届くその音色は、まるで鈴が鳴るように軽やかだ。

花の上にとまった小鳥が、陽を浴びながら喉を震わせて歌っている。

その姿があまりに自由で、美しくて、可愛い。


(……鳥の声をこんなに近くで聞けるのが嬉しいわ……太陽の下をこんなふうに歩くのも、本当に気持ちがいいし、隣には大好きな旦那様もいる……)


シルヴァンと腕を組んで、頬に触れる光の暖かさに目を細めながら、にっこり微笑んだ。ふわりと頬を撫でる風さえ、まるで祝福のように感じる。

 

十歳の頃から、私は太陽を浴びて外を歩くことなど許されなかった。常に北の塔へ閉じ込められ、花の香りを胸いっぱい吸い込むことや、こうして爽やかな風を感じることすらできなかった。


「アウレリア、眩しいだろう?日傘を持って来させよう」

シルヴァンは歩調を合わせ、わずかな段差にも注意を払ってくれている。


その優しさに胸がほっこりと温まり、嬉しさが募る。


「大丈夫ですわ……。とても気持ちいいです。こんなふうに歩けるのが……ありがたくて……幸せです」

声が震えそう。嬉しくて泣きそうになるけれど、慌てて笑顔を取り繕う。


(泣いたりしたら、優しいシルヴァンが困ってしまうものね)


「そうか……」

ふと横顔を見ると、穏やかに微笑んでいた。

まるで私が光の中で笑っている姿を見ることが、彼自身の幸せであるかのように。


「……アウレリアが太陽の下で、こんなに楽しそうにしていると、俺まで嬉しくなる。ずっと……よく耐えてきたな。窮屈な思いをしてきただろうに、どうしてこんなに清らかで、気高いまま育ったんだ。俺は神に感謝したいよ」


シルヴァンの優しい声と労るような口調に、涙が込み上げた。

胸の奥で、何かがほどけていくような気がした。


(……そんなふうに言ってもらえるなんて……夢みたい……)


シルヴァンはそっと私の手を握る。

温かく、力強く、けれど驚くほど優しい。


「これからは、好きなだけ太陽の下を歩けるぞ。この帝国では、花も風も光も……全部アウレリアのものだ。俺が自分の持てる力のすべてを使ってでも、君を守るから」


もう涙をこらえられなくて、花の香りが漂う風の中で、子どものように泣きじゃくってしまった。


「……はい。ありがとうございます、シルヴァン……」


光を浴びながら大好きな旦那様に抱きしめられて、まるで世界でいちばん幸福な女性になったみたいだった。


ダリアは少し離れた場所で私たちを見守っていて、時々ハンカチで目元を拭う。きっと、私の幸せな様子に感激して泣いてくれているのだと思う。だって、いつもそうだから。


カミラは周囲に目を鋭く配って、不審者がいないかと目を光らせていた。マーサたちが庭園に近づこうとすると、手で追い払い、威嚇していた。

「せっかくの美しく清らかな純愛の世界に、どす黒い根性のマーサたちはいりません。さぁ、さっさと床磨きに戻りなさい!しっしっ!」

カミラの迫力にはマーサたちも、一言も反論できないのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ