表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魅了魔法持ち王女は、女嫌いの皇帝に一途に溺愛される  作者: 青空一夏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/50

26 side皇帝

「おっ……俺の嫁、かわいすぎないか?」

アウレリア王女が馬車から降りようとしているところだった。俺は無意識に歩幅を早め、そっと手を差し伸べたその瞬間――彼女の心の声が耳に飛び込んできた。

(……嘘、こんな……美しい人が……皇帝?まったく“醜男”ではないのだけれど?とても……綺麗……だわ)

(醜男?……あぁ、あの軟弱な宰相が吹聴した大嘘か。ずる賢そうな奴だったからな。まぁ想定内だ。どうせ碌でもない状況で聞かされたのだろう)

思わず心の中で苦笑した。


ひとまず分かったのは、俺の顔面は王女にとって、どうやら“合格”らしいということだ。昔からこの容姿はあまり好きじゃなかった。女の心を覗けば、中身なんて少しも見ておらず、俺の“外見”と“地位”しか求めていない者ばかりだったから。


だが不思議なことに、 彼女に美しいと思われるのは、嫌じゃなかった。……いや、むしろ嬉しいと思う。本当は、俺から見れば彼女の方がよほど美しいのだが、そんなキザな台詞を初対面で言えるほど俺は器用じゃない。


王女の傍らには、一人の騎士がついていた。背筋はまっすぐ、心も――うん、まっすぐだな。彼の心を軽くのぞけば、アウレリア王女への揺るぎない忠誠と、 俺への敬意だけが静かに流れていた。一切の邪念がない。


(……ふむ。こういう“芯の通った男”を、あの腐った王国で埋もれさせるのは惜しいな。見たところ身分は下級騎士だろうが、実にもったいない)


そう思った俺は、迷わず声をかけた。

「……望むなら、この国に残るといい。アウレリア王女の近衛として鍛え直してやろう」

控えめに恐縮していたが、王女に軽く背中を押され、彼はすぐに覚悟を決めたようだ。


アウレリア王女が安心して暮らせるように、まずは周囲を“味方”で固める。そのためにも、有能で誠実な者は残すに限る。だが、グラディス王国から来たのは彼のような者ばかりではなかった。そう、“余計な荷物”もついてきたのだ。


あろうことか、俺の可愛い嫁に足を引っかけて転ばせようとした不届きな侍女たちだ。しかも主である王女に向かって、不敬極まりない言葉まで吐き散らしやがった。


この帝国では、あんな侍女は存在しない。いや、この俺が存在させない。普通なら即・地下牢送りか、国外追放だ。


(それに……こいつらの心の声、陰湿すぎるな。グラディス王国に突き返してもいいんだが……さて、どう料理してやろうかな)


すぐに、面白い……いや、“効果的な”方法を一つ、思いついた。こいつらが一番屈辱を感じる方法――それは、奴らが最も嫌う自分より下と見ていた相手“に管理され、指導されることだ。これほど堪える屈辱もあるまい。


ダリアという侍女の心の声を読むに、長年アウレリアに仕え、忠義を尽くしてきたようだ。この三人から受けた嫌がらせへの鬱憤も、しっかり胸にしまっている。


(ふっ……いい。実にいいぞ。さぁ、ダリア――仇を取れ……いや、きっちり“教育”してやれ)


「……ではダリア、これよりこの三人の教育係を命じる。こいつらは、主を敬う忠義心も礼節も足りていない。まずはそこから叩き込め」

俺はそのまま三人の侍女たちを、ダリアの部下に任命した。性悪侍女たちは青ざめ、ダリアは明るい表情で元気に返事を返す。


少し離れた位置で控えていたアンドレが、その様子を観察しながら肩を震わせて笑いを堪えているのが見えた。


(……やれやれ。俺が“心を読んでいる”ことを唯一知っているからな。こういう展開になると察していたのだろうし、相当楽しんでいるな)


その直後、 アウレリアの心から、俺を怖がる声が聞こえた。


(ああ、そうだった。俺が怒ると怖いのは自覚している。皇帝をやっている以上、迫力がなければ舐められるしな。だが……可愛い嫁にまで怖がられたいわけじゃない。彼女が不安そうだと胸が痛むぞ……さて、どう宥めようか? ここは……にっこり微笑むしかないな。よし)


俺は抱きかかえたまま、彼女に優しく微笑みかけた。“愛おしい”という感情が胸にあふれる。なぜなら彼女の心からは、俺を誘惑しようとか、俺に取り入って権力をものにしようとか、そんな俗っぽい考えが一切聞こえないからだ 。ただ“俺に嫌われたくない”そんな可愛い心の声が聞こえるだけ。


外套すら持たされなかったとか、トランクに詰められたドレスが恐ろしく下品なこととか、 宝石が全て偽物だとか、そんなことがばれて俺に軽蔑されるのが、とても辛いと嘆いていた。


(そんなことで軽蔑するわけもないし、嫌うわけがない。だいたい、粗悪品を持たせた王妃が悪いし、それを許した国王が悪い。ドレスならいくらでも買ってやる。宝石も、好きなだけだ)

 

なぜなら、アウレリアは俺の唯一の皇妃になる女性なのだから。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ