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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
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89話 聖女は誰か

「ではお任せしましょう。アチェンディーテ公爵には私から話を」

「私が勝手をしたってきちんと言ってね」

「ええ」


 でないと烈火のごとくユツィを怒りそうだもの。それはだめだ。私が個人でやってることなのだから。


「お願いします」


 フィクタの侍女にフェンリルを連れることを伝え、人でないならと了承をもらう。そのへんの人よりも只者じゃないのに。当然肩に乗るドラゴンは侍女には見えなかった。

 離れたところにある後宮へ入る。きちんと整えられて清潔さが保たれていた。それでも人気のなさは淋しさを助長する。


「こちらでお待ちを」


 手前の応対用の部屋に留まるよう言われる。

 ソファに座ると両側をドラゴンとフェンリルが座った。


「一緒に来てくれてありがと」

「なに我々も自身の為にしているからな」

「予定外のことはおさまったんじゃなかったの?」

「最後の一踏ん張りといったところだ」


 予定の範疇を超えたことが起きたからウニバーシタスにやってきて、私の存在の有無が目的の良し悪しに繋がると聞いていた。


「ねえ、私じゃなければ誰?」

「分かっているんじゃないのか」


 そうだね。私と関わりのある人物には限りがある。そしてその中から命の危険度を比べるなら行き着く先は彼だった。

 ずっと深く聞かないでいたけど、今日は話してもいい気がする。


「サク?」

「ああ」

「サクに死なれたら困るの?」

「ああ」


 サクは国家反逆罪を着せられそうになったりとやたら第一皇子に目をつけられている。私が助けたというには弱いけど、この城で出会って関わりができたのは間違いなかった。


「クラスと出会わないとサクが死ぬ可能性があがる。もう一つは世界が滅ぶルートだな」

「なにそれ?」

「クラスと出会えてもクラスが早くに死ぬとサクが耐えられずに破滅の道を辿る」

「え?」


 小説の世界みたいなことを言う。けどそれがひどく真面目に語られていると分かった。息をゆっくり吐く。


「なんでサク?」

「繋がっている話は以前したな」

「ああ、精霊王のいる世界だっけ」


 だから特別な存在になったはず。風邪のような内側から発症する病に対して治癒魔法が効かないのもそれが原因だった。


「サクは聖女だ」

「は?」

「いや、聖人と言うべきだな」

「言い方はこの際どっちでもいいよ」


 私が散々聖女と呼ばれサクもそう言っていたのを前に二人は否定した。要件があると。

 その要件を満たしているのがサク?


「だから髪の色も大きく変化した」


 赤毛から金髪になったのはサクが聖人になるために必要なことだったってこと?


「けれど完全な聖人ではない」

「他人を引き寄せる力と言うのは聖人ならではだが、瞳の色が変わらないからな」


 瞳は紫ではだめらしい。見た目の要件がそんな大事なのだろうか。


「聖女、聖人という存在はね、その者の願いを具現化する力がある」

「サクにその力が?」

「力が弱いのもあり、あまり目に見えたものはないな」


 なのに聖女……聖人になるの?

 精霊王の世界と繋がっているのと髪の色だけじゃない。


「サクは逆手にとった。具現化するなら自身で選ぶことをな」

「繋がった先は意識の世界だ。過去現在未来、自身の知らない範疇の事を把握出来る」

「全てを網羅している世界から必要な事を拝借して利用しているのさ」


 水路も冤罪を晴らしたのも見慣れない新しい食べ物も全部サクが選んで採用した。


「それもこれもクラスと結婚する為というのがなあ。仕様のない奴だ」


 呆れたようにドラゴンが溜息をついた。


「しかしこれが最善のルートだったさ」


 ドラゴンが微妙な唸り声をあげる。確かに私利私欲だものね。聖人っていうと全ての民の為に動くイメージだ。古典ロマンス小説に出てくる聖女はそんな感じだった気がする。


「私がいなかったり死んだりしたらだめなんだよね?」

「ああ」

「サクには私が必要だったの?」

「正確に言えば愛さ」

「あい」


 人はいつの世でも感情、一際愛で変わると詩人みたいなことをドラゴンが言う。サクが私を好きになって愛を知って初めて生きる道が開かれる。具現化の選択を良い方向に活かせるという。

 なんだか突拍子もなくて信じられない話だ。


「納得がいかない顔をしているな」

「いい証拠があるだろう」

「ああ」


 不審げな私に対し、二人は納得だと頷いている。


「クラスが作る菓子で騎士達の体調が改善しただろう?」

「そういえばそんな話あったね」

「それは間接的にサクが関わっている。以前の予知もその類だ」


 私がサクに触れることでサクの聖女の力を私の身の内にためてしまうらしい。それは私の御先祖様の血らしいけど、その体質に加えサクが私を聖女と思っていることもあって、癒しの力が変に増強してしまった。確かにサクが来てから作ったお菓子には癒しの効果があったけど、初めてお菓子を作った時、メルたちに目立った変化はなかったはずだ。


「加えてサクは鼻血をよく出すが、それも聖人の力を使う反動だな」

「反動?」


 聖人なんだから普通に使えるんじゃないの?

 首を傾げるとフェンリルが首を横に降った。


「サクは全ての要件を満たしていないのに、繋がった為に力を使えている。本来はただ願うだけで叶うのだから、具現化の選択をしている時点で力が弱いのが分かるね? つまり聖人の力を百パーセントで使おうとすると身がもたないのだよ」

「まさか鼻血が?」


 てっきり性癖とか体質だと思ってた。


「まあいかがわしい思いで出ている時もあるがな」


 あるんだ。

限りなく聖女=クラスで描写してきました。特に一章あたり、ドラゴンとフェンリルはクラスの為に来たというニュアンスでも書いてきたはず。なんですが、血筋的にクラスは聖女候補(無表情わんわん×裸族女子)、サクはきちんと聖女の血を引いている(ラッキースケベ被害者×最後の聖女)。

というか精霊王の世界と繋がった時点でサクが聖女なんですけどねえ。この時点でバレバレですよねえ。鼻血はさておき(笑)。

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