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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
85/103

85話 ウニバーシタス帝国へ

「ねえ、今皇帝に謁見って大丈夫なの?」

「問題ないけど、あー、それ読んだのか」


 私の手元の新聞記事を見て頷くサクの表情が嫌そうに歪む。


「あんまり記事の内容鵜呑みにしないで」

「うん……」


 記事にはイルミナルクスとウニバーシタス国境付近でウニバーシタス帝国騎士が襲われる事件が発生したとあった。ウニバーシタスの新聞だからか、イルミナルクスの騎士ではないかと言及している。実際誰がやったか確定していない。


「ウニバーシタスに行ってサクが辛い目に遭わなければいいんだけど」

「え? なにそれ、心配してくれてるんですか?」


 当然でしょって言おうと思ってやめた。鼻を押さえてクラスが心配してくれてるとかなんとかぶつぶつ言い始めたからだ。こっちは真剣に考えてたのに。


「どちらにしろ現皇帝は戦争したがらないから大丈夫ですし、イルミナルクスの騎士が理由もなく襲うことはありません」

「うーん……」


 あまりいい雰囲気でもないだろうにウニバーシタスの人間やめにきましたと言って会うのもどうなのだろう。


「結婚する気になりました?」

「……サク」


 最近しきりに聞いてくる。私が少しでも戸惑うようになった途端ぐいぐいくるんだから油断も隙も無い。


「ふふふふ、行きましょうか」

「ん」


 いつも通りの質素なワンピースを着て差し出されるサクの手をとって外に出た。


「ウニバーシタスの家を引き払わなくて良かったです」


 ウニバーシタス、旧ステラモリス、イルミナルクス、今後他の国の名前が出てきてもここまでくれぱ驚かないだろう。旧ステラモリスは置いといて、残り二つは大きい屋敷だ。他の国で屋敷を持つと言い始めたらまた大きなものを用意しそう。家に対する価値観が全然違うから困ったものだ。

 相変わらずな豪華な馬車に乗りウニバーシタスへ向かう。謁見用の服はウニバーシタスのサクの家にイルミナルクスから送って向こうで着替える形をとる。


「少し歩く?」

「うん」


 帝都を歩くといつも通りの活気だ。

 新聞記事だけが不穏なだけで、帝国民の日常にも雰囲気にも変化は見られなかった。

 ここでもなにかしら関わりがあったのかサクに友好的な商会の人間が声をかけたりする。サクって休む暇ないタイプね。


「奥様と一緒の所お話しする内容じゃないと思うんですが」


 私のポジションが変わらずどの国でも奥様と呼ばれる。結婚してないのに。


「また酔っ払いの暴力が増えてきました」

「酒ですか?」

「酒のルートはアチェンディーテ公爵のおかげで粗悪品は出ていません。これはまだ噂なんですが」


 言葉を濁す商人に対してサクは先を促した。


「……水路に何か混ぜた人間がいるという話です」

「へえ」


 にこやかにその場を後にする。サクが考える時の癖、口元に手を添えたのを見ていつも通りの姿に少し安心した。けどそれもすぐにやめて満面の笑みが降りてくる。


「では屋敷で着替えて城に行きましょうか」

「サク、さっきのはいいの?」

「ええ」


 満面の笑顔は崩れなかった。


「想定の範囲内です」


 サクの話では酒の粗悪品を潰してもなくならない時点で次に水路が出てくると踏んでいたらしい。

 ここ最近の暴行事件はヴォックスが酒のルートを潰してから発生範囲が変わった。被害が酒を好まない人間にも及び、酩酊状態という点では女性子供まで被害が拡大したのもあって、拡大手段が酒ではなくなったと分かる。実際予想通りの話が入ってくるのだから、サクの考えは当たりなのだろう。


「以前は広範囲の中にまばらに点在していました。今は一つの中心から局地的に発生してるので分かりやすいんです」


 けど水の中に入ってしまうと時間が経てば経つほど流れてしまうから、内容の特定が難しいとか。


「水路を使っているとしか考えられない。ここさえ抑えればやる事に限りが出るのですぐですよ」


 と、余裕の体だった。さすがサクだ。

 帝都の水路といったら、細かく広く張り巡らされている。最初の水の入り口・出始めが一つしかないとしても解決の為に進むには範囲が広い気がする。


「一つの入り口というのはリスク管理上よくないんですが、まあおかげで絞れはしたのでよしです」

「そう」

「シレたちも動いてますし、帝国民に不安がこれ以上広がる前に手を打てば問題ありません」

「うん」


 そしてそれはシレたちの仕事でサクの仕事ではない。僕は何もしませんと言ってるけど、ほぼ首突っ込んでいる。なんだかんだ身内に甘い。


「そうそう、城では僕から離れないで下さいね」

「うん」


 どうしてときこうとしたら、サクが不穏な笑い方をして見下ろしていた。


「念の為です。それに、クラスを苦しめた最たる原因がいる場所で一人にさせたくありません」


 元第一皇太子妃フィクタ。どうせ後宮から出てこれないし、私が来たことすら知らないでしょうに。


「正直あの女にはもっと痛い目にあってほしいんですけど」


 目が笑ってなかった。


「サク」

「ああ、ごめん。恐かった?」


 恐くはないけど、そこまでの顔する相手でもない。過保護なんだからと一つ息を吐いた。

ついにクライマックス編へ入ります。終わりは決まっていません(笑)。この土日でどうにか終わりを決めたいところですが。

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