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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
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84話 サクのお誕生日祝い 後編

 落ち着いてから隣に座ってお茶を飲むことにした。ばたばたしたけど、この落ち着きなら話せるはずだ。

 血に染まったハンカチは水に浸して血を抜いていくしかない。これは一生涯持ち続けますとじゃぶじゃぶ洗いながら言っていたけど、さすがに一度血に染まったものはどうかと思うから、早い内に新しいものを用意して差し替えようと思う。

 さておき、誕生日を祝う席で話す事ではないかもしれないけど、私の決意を話してもいい頃合いのはずだ。


「サク、大事な話」

「はい」


 ゆっくり息を吸って吐いた。


「今度、ポステーロス城に行くの、付き合ってほしい」

「帝国に? 構いませんが」

「その後、イルミナルクスに行きたい」 


 私の訴えることに心当たりがあったのかサクの肩が震えた。


「何故か、きいても?」

「所在抹消をしに」

「え?」


 その言葉の意味を理解したサクが目を開く。


「ウニバーシタスから自由になりたい」

「クラス」

「結婚するって返事はできないんだけど、ウニバーシタスの人間はやめようと思うの」

「クラス、それは」

「けどステラモリスはないから、所在抹消後はイルミナルクスの人になりたいな、って」


 我が儘だと思う。死ぬ場所を選ぶならここでいいと思っていたけど変わってしまった。サクが最初に言ってくれたように、彼に看取ってもらって亡くなりたい。帝国に捕らわれた私ではなくて、自由になった身の私でありたいと思った。


「ひどいこと言うけど、サクに最期を看取ってもらえれば」

「僕?」

「最期の時にサクが見える方がいい」


 好きな人を目に焼き付けて逝きたい、なんていうのは、すごく我が儘なことだと思う。

 そんな考えになってしまったのは、こんな近くでずっと一緒にいてくれて甘やかされたからだ。私を駄目人間にしたんだわ。死ぬのが嫌だなんて思うことないと思ってた。今はこんなにも惜しい思いが膨れている。できれば、と先のことを考えてしまう。


「それは僕が好きってこと?」

「っ……」


 図星に反論できない。いつもきかれることなのに、今日はスルーできなかった。今、すごく顔が赤い。いけない、サクにバレてしまう。


「クラス」

「サ、ク」


 隣に座っているサクが髪を撫でた。


「クラスが生きたいと言ってくれれば叶える事が出来るし、望んでくれればこれから先も一緒にいられる」

「え?」

「最期を看取るのは全然いいけど、ずっと一緒に暮らした先の話にしてほしい」

「サク」

「ずっと一緒がいい……もう別れたくない」


 切実なサクの言葉は十年前の痛そうな顔をした時と同じ色をしていた。

 終わりの先を約束できないけど、今だけは側にいられる。私にとっていいとこどりなのは許してほしい。今こんなにも別れを辛そうにしているサクにすぐの別れを前提に今だけ側にいる答えをするなんて仕打ちがひどすぎる。


「待った」

「サク」

「今のはなし。格好悪い」


 少しおどけてみせようとして隠しきれてない辛そうな姿に視線を泳がせ逡巡してしまう。きゅっと歯の根を軽く噛んだ後ぐっと距離をつめた。


「クラス?」

「……」

「え?」


 頬に唇を寄せただけだ。本当に一瞬だけ。


「……た、誕生日、だから」

「え、クラス、今?」

「……サクから私の誕生日でいっぱいもらったし、いつもも勿論なんだけど、その、」


 自分で言い訳重ねてしでかしたことに耐えられなくなってサクの胸に顔を埋めた。恥ずかしさを隠す為だ。それに、これでドラゴンとフェンリルの言う抱き締めるは遂行できたはず。


「ああもう可愛いことを」


 腕が回って抱きしめられる。問い詰められることがなくなってよかったと思いたい。


「所在を変えるだなんて、ただのお願いでプレゼントにならないし、サクの誕生日にする話じゃないのは分かってる。お誕生日なのに、その」

「そんなことない」


 頭上からサクの言葉が降りてくる。


「クラスが少しでも変わりたいと思ってくれた証でしょう? それは僕が欲しいものです」

「サク」

「そのついでにキスとハグがあるなんて想像してなかったので、今ちょっと軽く天に上る勢いでした。意識飛びました。今も飛びそう」

「落ち着いて」

「ねえ、やっぱり結婚」

「しないの」


 ちぇーと言うサクの表情がありありと見えた。

 それを可愛いと思えてくるようになったあたり、随分と毒されてしまったものだ。

 思わず、すりと顔をサクの胸に寄せた。サクの身体が震える。


「クラス」


 ぐぐっと唸ったサクが続けた。言葉の調子が少しかたい。


「鼻血出ます」

「台無しだよ」


 これはさすがにきついですってと言うサクから離れる。きちんとハンカチを鼻に当てて変わらぬ姿に笑い合う。見合って笑いあえるぐらいが丁度いい気もした。それがサクが気を遣ってやってくれてることでも。

好きな人を目に焼き付けて……好きな人を目以下略

とまあ結局この回では言葉にしてないけど、きっちり自覚が表面化。十年前のお別れチッスのお返しみたいな感じのことをしてみたり、恥ずかしさに混乱して抱き着いたりしてサクにとっちゃうっはうはな展開でした。まあ明日からクライマックス編なので仕方ないのです、ないのです…。


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