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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
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81話 聖女の予知、公国民を救う

 呼ばれて視線を向けると年齢を重ね腰を折った男性がいた。どこかで見たような気がして懸命に記憶を探れば、かつて公国城に庭の手入れで定期的に来ていた一人だと気づいた。


「懐かしい……忘れておりました」


 空よりも濃く湖のような深さを持つ孔雀青に金色を帯びた白い髪。国の象徴だったと私の手をとり見上げてくる。


「おい」

「ハルトラムスじいさん、どうしたんだよ」

「ここ最近めっきり話さなくなってたのに」


 周囲がざわめく。


「貴方様がわざわざ足をお運びになったという事は、これは危機なのですね」


 なんだか妙に崇められてる感があるけど、ここは乗るしかないと思った。住民避難が一番だもの。


「ええ」

「貴方様は我々に生きろと」

「はい」

「御館様……御嬢様ああ会いたかった」


 なにを思い出したのか、目の前の庭師は泣いてしまった。思い出したくない両親の死を思い出したのだろうか。

 公国民は辛い思い出だから思い出したくなくて呪いをそのまま受け入れていた。目の前の男性はそれを破り悲しいことごと思い出してくれている。


「一緒に来てくれますか?」

「ええええ勿論ですとも」


 その言葉に安心する。周囲はざわつきから一人の男性の決断にはっとしていた。


「ステラモリス公爵に覚えがなくても」


 サクが口を開いた。


「貴方方の身を案じてくれる女性が懸命に助けようとしてくれています。一度だけでも、今日だけでも主義に反して頂けませんか」


 死ぬなとは言わないし生きろとも言わないけど、サクの言いたいことは明確だった。暫く気まずい沈黙が流れた後、どこからかしゃーねーなという声が聞こえる。


「ハルトラムスじいさんとあんた見てるとじいさんの希望を叶えたくなるわ」

「あー、孫と祖父じいさんみたいだもんなー」

「じいさんが頑張るなら手伝うか、みたいな?」

「そうそう」

「ま、孫と祖父じいさん……」

「まあちょっと丘の上にあがるだけだろ? 山登りは得意だしな」


 ユツィが先導する形で移動が始まった。スムーズすぎて準備の良さを実感する。

 かつての庭師が他の騎士の手を取り連れだったところでサクに声をかけた。


「サクありがと」

「いいえ、むしろこちらがクラスに感謝すべき所です」

「でも本当に噴火するの?」

「ええしますよ。サラマンドラ山の八合目が妙に隆起……膨らんでいるし、火山性微動に入った時点でアウト。むしろ二日ももっていたのがおかしい」


 難しい話だけど、いつ噴火してもおかしくなかったってことね?

 そもそも雪が積もっていて違いが分からない。サクには全然違うものに見えるのだろうか。


「噴火の規模と範囲の想定をするに、事はそこまで大きくならないけど、麓は噴火による雪崩に巻き込まれるのは分かっていたから、今日動けて良かった」

「私の夢?」

「ええ」

「私の夢がなくても動けたでしょ」

「こういった場の説得にはクラスが必要だと思って」

「なんで?」


 そうこうしている内にちょっとした山登りが終わる。ひらけたそこには野営の準備がしてあって快適なもてなしつきだった。これってもう私の夢があろうとなかろうと決まっていたことだよね?

 私の予想通り、お茶を飲んでまったりしてたところで、一際揺れた。同時サラマンドラ山のサクが示していた部分の雪が崩れる。


「おや、予想と異なりました」

「え?」

「ほら」


 雪崩た最初の地点を良く見ると勢いよく水が噴き出している。白く煙るのを見て確信した。


「温泉?」

「ええ」


 火砕流が押し寄せるよりもずっと助かるけど。

 雪は多少麓まで雪崩れてきたけど、建物の倒壊はなさそうだった。いくらか畑は飲み込んだけど、今は冬の雪の下に寝かせて育てる野菜が主だから夏場より被害はなさそう。


「……予言通りだ」


 誰かが囁いた。


「御嬢様は、ステラモリス公爵閣下は我々を御救いくださった」

「ハルトラムスさん、私全然」

「クラスの予知のおかげですね」

「サクっ」


 サクがわざとらしく聞こえよがしに言うものだから、周囲の民たちが湧きだってしまった。予知のおかげから始まり、聖女がどうこうの話にまで膨らんでいる。


「聖女じゃないのに」

「アチェンディーテ公爵の目論見通りですね」

「ユツィ?」


 そばにユツィが立つ。かつての英雄、他国とはいえ公国の騎士だからか、ここの人たちにも人気でユツィを称えている。ここまで先導したのはユツィだし、どうやら前々日からユツィはここに来ていたらしい。早くから寄り添ってくれた王族というので盛り上がりが増した。


「サクの目論みって?」

「貴方の功績を作ることです」

「私?」

「ええ。罪人ではなく国の命を救う英雄にするんですよ」


 そうすればウニバーシタスから出やすくなる。出ないとしても自由が手に入りやすくなると。


「サク」

「……」


 知らんぷりした。笑顔で誤魔化さないだけマシだけど、そういうことは言ってくれてもいいと思う。


「言ったらクラスは必要ないとか目立ちたくないって断るかなと思って」

「そうだろうけど」

「いいじゃないですか。これでここは農業以外でも儲けますよ」

「ん?」

「ここにも公衆浴場を作れる。いやもっと違うものにしましょうか」


 お仕事の話になって誤魔化された気がしたけど、周囲も落ち込んでないし結果オーライかなと思って受け入れる。だいぶサクに甘いかなと思ったけど、サクも私に甘いからどっちもどっちだ。

火山の仕組みはファンタジーなので気になる方はご自分でお調べください。

ということで温泉が湧いたよ\(^o^)/救ったのはクラスでクラスは聖女になったよ!(笑)そういう流れにしててもクラスはサクを許すあたりもういつ婚姻届出す?な感じになってきました(落ち着け)。お互いがお互いに甘いの好き。

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