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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
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80話 予知夢

 山が崩れる。

 大きな白い塊が視界を覆う。

 雪が滑り落ちてくる。


「クラス? クラス起きて」

「……っ」


 サクが心配そうに見下ろしていた。支えられるように背中に手を添えて起こしてくれる。


「うなされてたけど」

「あ、夢かあ」


 妙に臨場感ある夢だったな。


「顔色が良くない」

「え? 本当?」


 夢見が悪いだけなのに、サクはやたら話を聞きたがった。山の上から雪が崩れ落ちてくるってだけなので、あまり面白味はない。

 サクが手を口元に添えて考えた。考える時のいつものポーズだ。


「その山って、ステラモリス?」

「あ、そうかも。小さい頃よく見たのだから公都南側の」


 今の場所からでいうなら北側の山を越えた先にある集落の北西に位置する山かな。 


「ドラゴン」

「サクの想像通りだろう」

「フェンリル」

「ドラゴンに同意だな」


 三人でしか分からない会話をし始めた。私には説明なく、そのまま顔を洗って朝御飯を食べる。焼きたてパンが外側さくさく中ふっくらでたまらない。


「じゃなくて、ねえ三人でなにを話してたの?」


 ああとサクが今気づいたとばかりの顔をした。


「クラスの夢が予知って話」

「予知?」

「なので食べ終わったらすぐに動こうかと」

「え?」

「先触れの手紙はシレに送ったから問題ないけど」


 話が三段跳びで進んでいた。だってあれはただの夢なのに?


「ここ最近火山性地震が観測されていて、ここ二日で火山性微動に変化したので、注意されてた場所がステラモリスのその山で」


 そんなのいつ把握してたのよ。というかサク詳しすぎない? 専門用語よく分からないよ。


「クラスも聞いたことない? サラマンドラ山の噴火の逸話」

「昔、赤い炎を上げた精霊山の作り話のこと?」

「そうそう。その手の話は事実を元にしてる事が大半ですよ」


 火の精霊が生まれ拠点を移動し続け辿り着いた場所がステラモリスのサラマンドラ山だった。火の精霊は時折怒りを噴火で現して人々の横暴を戒めるよう啓示を顕にしたとかどうとか。

 精霊なんて姿を見た人間ですらいない世の中にぴんと来ない話だ。そもそも精霊って移動するの?


「精霊が噴火させるって?」

「精霊はさておき、噴火はあった。あれはまだ生きた山で死んでいない」

「ん?」

「いつまた噴火してもおかしくないって事」


 逸話では精霊の怒りに触れて村が一つなくなったとあっさり怖いことが書かれていた。それが事実で再び噴火するなら麓の集落が危険だ。


「なら急がないと」

「ええ、準備できたら行きましょう」



* * *



 サラマンドラ山の麓に着くとヴォックスとユツィと合流した。騎士団を連れているあたり避難を想定してるのだろう。

 まだ午前中、麓は農作業をしている民が多かった。


「一ヶ所に集めましょう」


 長にお願いして集まってもらう。今日の作業は区切りをつけてきてもらい、ヴォックスから事情を話してもらうもあまりいい反応は返ってこなかった。

 地震については理解していて、古くからここは火山活動のある山だ。その山の麓で長い間生活してきた為、今の頻繁な動きに危機を感じてはいた。過去、小さな噴火なら何回かあったらしく、火山灰も積もりやすい。うまく付き合いながら生活していた。だから今回も同じで、いつも通りすごせばいいのだと言う。


「長年サラマンドラ山と共に生きてきた貴方方なら今回起こりうるものの規模も分かるのでは?」


 長や古くからいる者は経験から分かるようだった。それでも決して避難の提案に首を縦に振らない。民の反応を見て妙にそわそわして落ち着かなくなってくる。かつて関わりがあったわけではないけど、ステラモリスがあった頃は同じ国の民だった。両親が大事にしていた公国民を危険に晒したくない。


「大規模な噴火があれば、火山灰が多少積もる程度では済みません。皆さんの命ですら奪われます」

「だとしても我々はここに残る」

「そんな……」

「何故でしょうか?」

「精霊の怒りを甘んじて受ける為です。公国が亡きものになり十数年、いつしか公国を失った罪を償うかと思っておりました」


 みんなそのつもりだった? なんで?

 公国がなくなったのは公国民のせいじゃない。ただの戦争の被害を被っただけなのに。ううん、本来どちらも悪くない。ウニバーシタスもステラモリスもどちらも正しいと思ってきた。

 ステラモリスが、父と母がウニバーシタスの併合を受け入れたのは公国民の為だ。それが最善だと両親が判断しただけで、公国民の誰かが悪いことにはならない。


「やめて下さい」

「クラス?」

「公国の為にされても嬉しくありません」


 皆が両親を覚えてなくても言葉が前に出る。


「父と母は噴火で皆さんを失う為に公国を亡くす決断をしたのではなく、公国民に生きてほしいから併合を受け入れたんです」


 公国民の生活の保障を一番にしていたもの。


「家はまた建てられる。耕せば野菜もできる。時間はすごくかかっても公国は戻ってくる。けど、貴方方がいなくなったら公国は二度と戻ってこない」


 だから助かってほしい。避難をしてほしい。ただそれだけだった。

 たとえ公国が二度と戻ってこなくても、公国民がその場所で暮らしていれば両親は満足のはずだ。だから今は非難をして欲しい。助かってほしかった。


「…………ステラモリス公爵」

「え?」

サラマンドラ=サラマンダー、というわけで、ね!ね!という私の作品を網羅している方でないと分からないネタを導入。まあでもサクはきちんと分析した上でやってますけどね(笑)。とはいえ、実際の火山噴火を考えるとだいぶファンタジー設定の上での噴火になりますので、噴火が気になる方はきちんと専門書をお読み下さい。

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