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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
75/103

75話 デート、移動中の奇襲

「クラス、また来て。一人で全然いいから」

「メル」

「主人ないがしろなのはどうなんだよ」


 手紙を書くことと新しいロマンス小説をおくってもらう約束をしてイルミナルクスを後にした。ドゥルケを筆頭に十年前に見た面子も顔を合わせることになってなんだか色々感情忙しなくなったけど、そこは仕方ないと思う。おかげで名残惜しく去る形になってしまった。


「僕と結婚すればいつでも屋敷に行けますよ」

「またそういう意地悪言うのね」

「計画的と言って下さい。それに僕とクラスの結婚に賛同してくれた人間だけ連れてきてます。皆僕たちが夫婦になるつもりですよ」

「え、なにそれ」


 そんな話聞いてないし、メルだって言ってなかった。昨日今日で私たちが結婚するのか~みたいな気持ちで見てたってこと? なかなか恥ずかしい。


「クラスと結婚して、新居に人が必要だから屋敷で働かないかって誘ったんですよ」

「それで集まったの?」

「ええ。メルは僕をからかいたいというのもあるみたいですけど、皆僕とクラスが結婚すると思ってます」


 サクってば外から埋めてきたのね。いやらしい。国王にだって婚約してる前提の同居で話通してるし、やたら準備がよすぎる。


「もっと若くて立場もあって綺麗で可愛い女の子がいるのに」

「クラスじゃないと意味ない」


 少し拗ねているようにも見えた。立場や実績を考えれば周辺国の王女様だって迎えられるぐらいなのに。


「ん?」


 あまり揺れない馬車ががたんと揺れて止まる。なにかあったのだろうかと外を見ようとしたら、サクの手が伸びて視界を遮られた。


「デート中なのに空気読めない奴」

「サク?」


 完全な営業笑顔になった。戻るまで絶対あけないで下さいと言いきって出ていった。

 隙間からかろうじて見えたのはウニバーシタスの騎士たちだ。しかもあれは第一皇子と皇子妃の直轄だったはず。


「何用ですか」


 かろうじて聞こえるのは剣呑な雰囲気に喧嘩腰の騎士たち、呆れぎみながら冷静に流すサクの声音だった。

 どうやら検問らしく、通行証が偽物だと騎士側は主張している。そこをサクはウニバーシタスの法に則った様式の仕様や適用範囲について淡々と説明した。それでも良からぬ者だと言われ続ける。この前サクが話していたここ十年に起こっている水への異物混入の犯人ではないかと咎められる始末。いちゃもんつけるにしても強引だ。


「国家転覆を目論んでいるのは分かっている」


 サクが誰か分かっていて話している。ウニバーシタスを乗っ取る気だろうと騎士の一人が叫んだ。次に剣が抜かれる音がした。

 サクが冷静に諭す。イルミナルクスの人間に剣を向けることがどういうことか。

 通常検問で疑いがあれば、拘束の末調査を行い場合によってはウニバーシタスの監視下の元軟禁になり、相手方が仕掛けてこない限り騎士は剣を抜けないはずだった。


「こっちはデート中なのに」


 シリアスな場面でサクが場違いな言葉を発する。この際デートはどうでもいい。今、大罪を着せられている。音の具合からしてそれなりの人数にも囲まれているのだから、もう少し真面目に考えないと駄目でしょう。


「折角いい雰囲気のピクニックから始まって、親代わりにも会わせて外堀上手く埋めて、可愛い服もたくさん買って新居も気に入ってもらって、生足晒してもらったり逆ドンしてもらったり、やっと弟から抜け出せそうで、屋台デートでやたら汁こぼしたり汗かいたりえっろい姿見れたり、懐かしい面子揃えて情に訴えて、今、すごく順調なのになんでここで邪魔するわけ?」


 恥ずかしいこと言ってきた! 時間をかけてサクとすごしたことを一気に捲し立てられて、しっかり思い返すと色々恥ずかしくなってきた。

 私が一人馬車の中で慌てていると外が騒がしくなった。あ、これ間違いなく戦うことになってるやつ。絶妙な金属音も騎士たちの荒々しい声が聞こえた。


「どうしよ……」


 剣がまじわる音、怒号に加えて違う音も混じる。爆発音? 強い風の音? 水の音もあったような?

 けどそれも暫くしたら驚くぐらい静かになった。騎士の声も聞こえない。


「サク」


 我慢ならなくて馬車の扉を静かに開けると地面に倒れている騎士とローブを着こんだ魔法使いたちが見えた。合わせて二十人ぐらいだろうか。馬車から数歩先にサクがなんてことない風に立っていた。


「サク」


 私の声にゆっくり振り返る。いつものサクだった。


「あ、出てきちゃ駄目でしょう」

「これ、全部サクが?」

「もー……こんな野蛮な姿見せたくなかったのに」


 気まずそうに馬車に乗り込んでくる。そして見せないとばかりに扉をすぐに閉めた。


「先に喧嘩ふっかけてきたのはあっちだから」

「それはなんとなく分かってたけど」


 サクが御者に走らせるよう指示をだす。何事もなかったかのように馬車が進み始めた。


「騎士と魔法使い?」

「ええ。ヴォックスやシレと比べたら弱すぎて手応え全然なかったです」

「そ、そう……」

「それにこの馬車に近づいたらトラップ出るようにしてます」

「へ?」


 魔法使いが魔法使えなくするとか、騎士は動けなくなるとか。サクが強すぎるからそうなる前に相手をボコボコにして終わりになる。以前ヴォックスと一騎打ちしてたサクを思い出して、今さっきの戦いを見なくてよかったと思った。


「まあいいです。時間をかけすぎましたが予定通りいきましょう」

「予定? 帰るだけじゃないの?」

「いいえ?」


 サクがいやにいい笑顔で返した。


「次は帝都でデートですが」

「どういうこと」

まあ邪魔が入るのはなくはないとして、次のデートまだあるんかいというツッコミがね(笑)。十年分の反動ということで許してやってください。

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