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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
72/103

72話 イルミナルクスデート、壁ドン

 メルが準備してくれている間に屋敷の中をサクが案内してくれる。

 イルミナルクスの屋敷のお風呂も広かった。温泉が近くでわいているのかお湯には困らないらしい。


「足湯でもします?」

「えっ」


 それは魅力的な話だったのでお願いしてみた。けど次にサクがクラスの足、ナマ足……とかぶつぶつ言って鼻をおさえるものだからやめようか悩んだ。


「私の足なんていくらでも見てるのに」

「服の裾を捲って足を晒しながらお湯に浸かるなんてシチュエーションはなかった」


 力強く断言された。

 スカートの裾をあげて足を晒す姿が最高らしい。サクの性癖が理解できず首を傾げる。

 もうよく分からないから鼻血を無視して勢いのまま足だけ温泉に入る。足洗ってから入ってないとかそういう無作法はこの際目を瞑ってほしい。


「気持ちいい」

「無防備だなあ」


 鼻をおさえて嬉しそうにされても困る。


「あ、すべすべする」

「効能の一つですね」


 触りたいとぼそっと言ったのは無視だ。さっきからなんなの。サクの性癖が理解できない。


「温泉いいね」

「結婚すればいくらでも入れます!」

「はいはい」


 逞しいな。

 サクの言うことは適当に流して次を案内してもらった。


「書斎?」

「クラス、本読むの好きでしょう?」


 奥の方に進むと窓際に座れる奥まった空間がある。


「リーディングヌック?」

「はい。寝室にもありますよ」


 旧ステラモリスの家のリビングにカーテンつけてソファを設けた空間を見て私がヌックを求めていると思ったらしい。確かにヌックがあると嬉しい。本を読める快適空間……これは魅力的だ。


「甘やかされてる」

「何を今更」

「サクってばもう」


 苦笑する。当たり前のように断言されても事実だから言い返しづらい。

 寝室にも入ってリーディングヌックに腰かけてみた。いくつか見させてもらって分かる。私が好きな家具で揃えてあって周到だ。結婚すれば快適ですよと言わんばかりだけど、そこはもうスルーしてヌックを堪能することにした。

 ヌックに隣り合って座って、一緒に窓の下を見下ろす。その先にメルがいた。机と椅子が用意され、背筋よく立つメルがこちらを見上げている。寝室のヌックからは庭がよく見えるのね。


「景色いいんだね」

「ええ。そう思って造りました」

「ここで本読んだりお茶飲んだり」

「ええ、できますよ」


 腰かけて足のばしてのんびりできる小さな空間。私が普段ソファに足のばして本読んでいるのが知られていてなんとも言えないところだけど、理想とする空間だから文句が言えない。


「ふふふ、いいねえ」

「気に入りました?」

「うん、好き」


 サクが僅かに肩を鳴らしたような気がしたけど気のせいかな?

 さておき、ここのヌックはとても出来がいい。絶妙に柔らかくて座り心地がいいし、陽の光も入るよう設計されている。コップも置けるようになってて有能だった。


「サクには狭いかな?」

「いいえ」


 二人並んで座っても問題ないけど、足のばすとギリギリだろうか。見上げると少し強張った顔をしたサクがいた。


「どうしたの?」

「いえ……こんなに早くクラスとここに座るとは思ってなくて」

「そう?」


 泊まる場所がこの屋敷なら、ヌックを案内されて座るのも必然な気もする。私は想像してなかったから嬉しい出会い。ここならかなり本読んでいられる気がする。軽くて薄い上掛けでもあれば季節のいい日はお昼寝もよさそう。


「いいなあ」

「?」

「うん、ずっといられる」

「……」


 造ったかいがありましたぐらい言ってくるかなと思ったら反応が薄い。ここは寝室なのにという言葉がかろうじて聞こえた。また自分の世界に入っちゃったみたい。


「庭に出る?」

「いえ」


 メルが屋敷側に戻るのが見えた。呼びにきてくれるのだろうか。

 外を眺めていたら左側がみしりと音を立てた。サクが窓に手を置いている。


「サク?」


 思っていたよりサクが近かった。少し腰を上げて私を見下ろす形で近づいてくる。


「そんなにここのヌックいいです?」

「うん。すごく好み」

「好き?」

「うん、好き」


 ぴくりと身体が震えて離れていった。


「あー……」

「どうしたの?」

「いや」


 魔が差したと囁いたのを聞き逃さないんだから。


「サク」

「ちょっと、時間」


 時間が欲しいのだろうか。少しつんとした態度が十年前のサクだった。


「……意識してんの自分だけだな」

「サク?」


 むすっとしてる。サクだ。その姿が見られるのが嬉しい。


「前のサクだ」

「待って戻るから」

「そのままでいいのに」

「嫌だ」


 二重人格みたい。別人だものね。


「魔が差せば前のサクになるの?」

「え?」

「確か……」


 ヌックのソファに膝立ちになって壁に手を添える。サクは片手だったかな。でもバランスとるなら両手の方がやりやすいや。


「は?」

「さっきこれしたじゃない」


 あ、鼻おさえた。態度は十年前のサクでも鼻血は消えないのね。


「んのっ馬鹿!」


 両肩に手をかけて壁から引き剥がされた。サクの耳が赤い。


「だって愛想笑いだけのサクは嫌だし」


 魔が差せばいけると思った。


「魔が差すの使い方が違う」

「だって……」


 このタイミングでドアが叩かれた。メルがやっぱり迎えにきたらしい。


「はあい、サク~理性どお~?」


 サクが盛大に舌打ちをした。

恒例の壁ドゥンですいえー! 満面笑顔で好きだ好きだ(ヌックが)と側で言われたので疑似告白を体験したみたいになったり、たり…サクはクラスからならぐいぐいこられてもおいしい派(笑)。


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