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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
70/103

70話 イルミナルクスデート、まさかのお泊まり

 出されたお茶を飲んでいるとテーブルの上に小箱が置かれ始める。中身は宝石だった。ドレスに合うアクセサリーを買えと? すごく高そうだし、こんな沢山いらないでしょ。


「サク」

「服の分必要なので」


 買い物できて嬉しそうなサクを見て譲らなさを悟る。机の上の並ぶ宝石を眺めていると、目の止まった石があった。


「……ブルージルコン」

「クラス?」

「……ヴァイオレットモルガナイト」


 この前見なかったことにした結婚指輪の裏石と同じ石があって目が止まってしまう。クラスは特段好きな宝石ないですよねとまたまた把握されてる言葉をサクがかけてきたので、そこはスルーした。


「……ん、なんでもない」

「ではその二つを」

「サクってば」


 宝石高いのに。ドレスも高いだろうけど、立派なドレスが一枚あればアクセサリーで装飾するほどのものでもない。


「ああ、あとこれも」


 いくらかある髪留めを手に取り私の髪にあてる。嬉しそうに目を細めるサクになにも言えなかった。それが十年前にもらった髪留めと似ていたからか、サクがあまりに満足そうだったからかは分からない。


「これはつけていきます」

「承知致しました」


 特段私が何も言わないのをいいことに、隣に座ってサクに背を向けるよう言われる。髪留めぐらいと思って素直に従ってしまうあたり、私もだいぶサクに甘いなと思う。


「動かないで下さい」

「……」


 基本はおろした形で少しだけとって纏めた髪型を鏡で見せてもらうと髪留めは私の髪によくあっていた。サクのこういうセンスはいつもすごいと思う。


「十年前もきちんと渡したかった」


 眉根を寄せてそんなこと言われたら苦しくなる。十年前のあの日、サクはお別れの時間で髪飾りをくれた。本当はもっと、と言い淀んで。こんな風に楽しい時間を過ごしている時に渡したかったのだろうか。 そう思うと無碍にできないし優しくしたくなるのはサクの人徳だと思う。正直ずるい。


「可愛いくなりました」

「ん、ありがと」


 大事にするからと加えるとサクが少し意外そうな顔をして、その後珍しく照れた。頬を赤くしてどぎまぎしている。


「どうしたの?」

「少し珍しいなと思って」

「なにが?」

「クラスが笑うから」


 笑わないわけじゃない。私だって笑う時は笑う。けど今のはサクの考えに及ばない喜び方笑い方だったらしい。


「いえ、大丈夫です」


 頬を赤くしてたのはどこへやら、すぐにいつも通りのサクに戻る。十年前は照れた後にツンと意地はってきてたのに。


「アチェンディーテ公爵閣下」


 服は公爵邸にお送りすればいいか問われサクは頷いた。


「屋敷に送って下さい」

「かしこまりました」


 支払い先がやっぱりサクになってるから自分で払うよと伝える。何年かかる分からないけど……あ、私もうすぐ死ぬから払うならきちんとスケジュールたてないとか。


「お金の事なら気にしないで下さい」

「でも」

「ステラモリス公国の総資産を考えれば安いですよ」

「え、そこ?」


 この十数年でウニバーシタスに取り込まれたステラモリス公国が持つ財産を公国民に振り分け、そこからステラモリス公爵家分を算定して出た数字まるまるもぎ取っていた。冤罪裁判の時に済ませ、名義は私できちんと戻ってきているとか。


「一時的に僕が預かってますが、いつでも返還できます」

「そう……」

「興味なさそうですね」

「できれば私の分は公国民に再振り分けしてくれてもいいよ?」

「それはいけません」


 じゃあせめて今日の買い物分は差し引いておいてと伝えた。全部サクがお金出しそうだけどお願いしとくにこしたことはない。


「サク、楽しかった?」

「ええ」


 服買うのって女性の方が好きそうだけど。サクはずっとしたかったことだと言った。どこにでもあるお出掛けがしたかったと。

 十年前、城から出たのも帝都視察の一度だけだものね。


「服の数だけクラスとデートできますし」

「え、相当な数買ったよね?」

「服の数だけデートです」

「うわ……」


 決意かたい。


「イルミナルクスも広いので今日では回りきれません」


 何日もかけて出掛けましょうねと笑顔を向けた。割と広めの国土を持つイルミナルクスを何日もかけて回るとかなったら、長期宿泊を伴う旅行になる。分かってて言ってるの?


「当面イルミナルクスに住む気?」

「クラスが望めば」


 ああそしたらと、何を思いついたのか違う場所へ連れて行かれることになった。王都の端っこだから少し距離があり馬車に揺られている間に外の風景を眺める。

 活気のある市場や屋台が並ぶ食べ歩きの通り、ブランドがひしめく高級通りととても華やかな印象を受けた。


「気になる?」

「うん」

「なら明日も来ますか?」


 屋台なら夜もいいですねと外に視線を寄越す。夜までいたら帰りが大変だ。そう伝えるとサクはにっこり笑った。あ、嫌な予感がする。


「大丈夫、泊まりますんで」

「やっぱり」


 この人なんてことを言うの。二人で暮らしている時点でアウトだけど、さらにアウトを重ねる気だわ。

思い出の髪留め話でシリアスしたところからの、お泊まり(笑)。正直、本当の移動時間を考えるとイルミナルクスへ行くだけで道中宿泊しないとつかない距離ですが、そこはファンタジーなのでね!ね!

お泊りだいえー!

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