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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
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69話 イルミナルクスデート、服を買う

 サクの叔父こと、イルミナルクス国王陛下は語るだけ語って去っていった。本当にただお茶を一杯飲むためだけに来たのだろうか。なんかもっと話したいことあったんじゃないの?


「クラスの事を気に入ったようです」

「え、そんな感じはなかったけど」

「分かりにくいんですよ。笑って誤魔化す手段は参考になりますけど、本音を出せなくなるのが欠点ですね」


 今のサクそのものじゃない。十年前も本音を言わない兆候があったけど悪化させてどうするの。

 にしても終始にこにこしてて本当私のことを気に入った気配はどこにもなかった。今日なんてデートだというのに最低限の装いで……とそこではたと気づいた。


「サク」

「?」

「私、とてもみっともない格好を……」


 なにかおかしいことがと首を傾げる。サクや国王は軽装でも上等なものを着ているけど、私は使い古したワンピースだ。高爵位の人物に会う装いではない。一張羅でももう少し小綺麗なのがあればよかったのに。


「気にしてないかと」

「だって、実質サクのお父さんみたいな存在に御挨拶したってことでしょ? もっと綺麗な服用意しておけばよかった」

「ん?」


 サクが少しは固まった。なんだろうと見上げると期待が漏れ出ている。


「もしかして、いつもより緊張してたのは父代わりの叔父に粗相のないようにと気を配ってくれていた?」

「うん、そうだね。失礼ないようにとは思ってて」

「叔父に認めてもらう為?」

「んー……そうかも」


 サクと一緒に住んでいる身として認めてもらいたかったのかもしれない。十年前の事もふまえて。

 にしても同棲を認めてくれるとはなかなか寛大な王だ。イルミナルクスでは結婚前同棲が浸透しつつあるあたり、サクの影響力の強さもあるのだろう。

 考察に勤しんでいたら、サクがそわそわした様子で訴えてきた。


「それは僕と結婚したいって事ですか?」

「なんでそうなるの」

「結婚しないつもりなら良く見せる必要がない」

「ん?」


 言われてみればそうだ。ここまで緊張する必要はなかった。普段の私ならもっと肩の力を抜けたはず。けど終始、粗相のないようにとか良く見せようだとかそういった思いがベースにあったのは否めない。


「クラスは目上であろうと対等に接する事が出来る人間です。王族といった立場も関係ない」

「確かに」


 改めて考えてみる。あの極度な緊張はなんだったのだろう。サクと一緒に会う……どちらかといえば三者面談な気もする。子育てを間違えたし、土下座の覚悟だった。サクは公爵位とはいえ、王族の血を継いでいる。


「叔父への臨み方が、結婚でよくある両親への御挨拶みたいに感じたんですが」

「んー、育て方へのお詫び? が一番近いかな?」

「ああ」


 片手を額にあて空を仰いだ。


「サク?」

「……そっちかよ」


 ぼやかれた。なによ、もう。こっちは緊張したのに。

 おしかったなと呟きながら戻ってきた時にはいつも通りだった。


「次行きましょう」

「次?」


 服です、とサクが笑う。


「服を買いに行きましょう」


 嫌な予感がした。


「サクの服?」

「いいえ。クラスの服ですよ」


 さっきのみっともない格好云々のことを引きずっているわね。


「いいよ。もう終わったから必要ないし」

「これから沢山デートするんですから、沢山あってもいいじゃないですか」


 ほらと手を引かれる。


「いいってば」

「大丈夫です。僕がプレゼントするので、お金は僕持ちです」

「だからいいんだってば」


 ずいずい腕を引いてカフェを出てすぐ近くにあった店に入る。

 サクが連れてきたのはやっぱり上等な服屋さんだった。


「アチェンディーテ公爵閣下」

「出してくれます?」

「はい」


 奥の個室に案内され、サクが声をかけるとずらっと服から帽子、靴やらアクセサリー全部出てきた。


「クラスとここに来ると思っていくらか見繕っておきました」


 いつやったのとか、こんなにたくさんいらないとか、言うことは色々あるのにそのまま試着に駆り出される。

 そして予想通りサイズがぴったりだった。


「……こわ」

「閣下」

「んー、もう少しゆとりあった方がいいかな」

「直しましょう。腰回りで?」

「腕回りも」

「承知致しました」

「ゆとり?」

「クラスにはもっと肉つけてもらうので、今よりゆとりあった方がいいでしょ?」


 安易に太らせますということ? 前も言ってたけど、このままでもいいと思う。


「閣下の仰る通り、奥様は些か痩せております」

「そうですか……」


 着替え途中、差し出がましいですがと添えられた上で指摘される。だいぶ肉ついたと思ってたのに周囲はまだまだだらしい。

 というか奥様ってなに?


「奥様次はこちらを」

「は、い」


 奥様で通っているのはなんで?

 試着する服も、近場に遊びに行く軽いワンピースではなくて、明らかに貴族の社交用のドレスを着させられる。


「うん、良いね」

「有難う御座います」

「サク、ドレスはいらない」

「いいえ、必要です」


 これもまた何着も買っていく。今までの食費も後々サクに返せないかと考えていたけど、ここまできたら無理そうだ。

 散々着せ替えをした後、一息つくのでソファに埋もれる。他人に着せてもらうのは慣れない。


「まだありますよ」

「ええ……」


 とてもいい笑顔を向けられた。

勿論シンプルなワンピースも普段用で買いましたが、明らかに将来結婚した時に必要なものを買い占める男(笑)。サイズぴったりでお分かりの通り、全てオーダーメイドです。いやあ気持ち悪いですね!

サイズ把握全デザイン指定してきた変態すごい。

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