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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
65/103

65話 買い物リハビリ

 シレにも知られてしまってどうしようかと思ったら、なぜか今度は町に出ようと誘われた。

 というかサクに抱っこされた姿なんて見られたくなかったのに今になっても恥ずかしい。


「買い物の練習みたいなものですよ」

「うーん?」


 十年前に帝都に行った以来だろうか。旧ステラモリス内の近場の市場に出ることになった。


「執行猶予保護観察処分的な?」

「冤罪晴らしました」

「例えだよ」


 サクの言葉遣いも笑顔も急には変わらない。けど態度は少し変わった気がする。緊張がなくなった。それは私もらしいけど、十年前の関係に戻ったという解釈をしている。


「クラス」

「シレ」


 麓におりたらシレが待っていた。曰く、水路の件の罪滅ぼしらしい。水路のことは別にいいのにと思いつつ、ありがたく好意を受け取ることにした。


「本当邪魔」

「そう言わないでよ」


 シレが苦笑する。サクが金だけ渡して帰れとまで言ってきた。


「サクやめて」

「クラス……」


 しょんぼりしたってだめだ。甘やかしちゃいけない。


「三人でも楽しいと思うよ」

「……はい」


 渋々言っている。シレに視線を送ると肩をすくめた。いつものことなのかな。


「折角クラスとデート出来ると思ったのに」


 二人で出掛けたかったとぶつぶつ言ってる。今からこんなだと買い物の雰囲気悪くなっちゃう。


「サク」

「……」


 ぶすっとして黙り込んだ。こうして十年前みたいな姿を見られるのは嬉しいけど譲らないのは困る。大人びてて身体も大きくなったけど、中身はまだ子供ね。


「……今度二人で出掛ける?」

「え?」


 目を丸くした。今までの私なら言わなかっただろうけど、サクが私のお願いを聞いて少しずつ本当のサクを見せてくれるようになっているなら、どこかでご褒美みたいなものがあってもいいはずだ。


「どこに行くでもいいけど……嫌?」

「い、いいえ! 是非!!」


 目を開いたまま嬉しそうにもしないから心配になって聞いてみたら、前のめりになって両手を手に取ってきた。どさくさに紛れてなにしてるの。


「クラスはサクに甘いねえ」


 シレが笑うのを無視してサクは絶対ですよと念を押してきた。頷いたけど、なんだか不安になってきたな。ここまで食いついてくるとは思わなかった。


「さあ、買い物に行きましょうか!」


 急にやる気だした。


「……私、間違った?」

「うーん、どうだろうね?」


 シレが隣に立ってこちらを見下ろす。そしたらすぐにサクが割り込んだ。シレの苦笑が濃くなる。行動がお子様すぎるわよ。


* * *


 この旧ステラモリスの市場が買い物場所だ。

 シレは水路の確認と私の素行調査も兼ねているだろう。


「変わったのね」

「規模は少し大きくなったかな」


 まだ公国があった頃は自国内で全て済ませることをしていた。今はウニバーシタスの一部になっただけあって、人の出入りが多くなった市場になっている。


「ステラモリスの特産品をここで売れば不当に値を上げられる事を防げます」

「ああ」


 十年前に帝都での売買を覚えていたのだろうか。


「サクが頑張ったんだよ? 今では帝都でも適正価格で売られているし、買取価格の基本値も引きあがったんだ」


 それをサクが?

 話すなよと少し気まずそうにサクが視線を逸らした。


「取引業者も選定されるし、売買には審査を通らないと出来ないんだよ」

「へえ、すごい」

「そ、れは、他の吸収された全ての国の独自性を保護する為で」

「サク、ありがとう」

「はい」


 少し照れた。最後はいつもの笑顔に戻ったけど、頬は赤いままだった。

 すると売り手がこちらに気づいて声をかけてくる。


「皇子殿下」

「アチェンディーテ公爵閣下もお越しで」


 シレもサクもステラモリスの人々に知られていて友好的で、買い物もしつつ元公国民たちの話をよく聞いていた。


「おや、どこかでお会いしましたかね?」

「え?」


 売り手の親御さんだろうか。腰を折った白髪混じりの男性に話しかけられた。


「父さんどうした?」

「いや気のせいかな?」


 記憶を消されているステラモリス公国民が私を知るはずがない。見たところ公国城で働いていた人とでもなかった。


「綺麗な瞳をしているなと」

「あ、」

「綺麗な髪だなと」


 今日は近場だからだと軽く纏めてもらうだけだった。サクが纏めてくれたけど、十年前の帝都に出た時とは違って髪の色を隠すことはしていない。

 少しでも覚えてくれているのだろうか。この白い髪もピーコックブルーの瞳もステラモリス公爵家にしか出ない色だもの。


「……ありがとうございます」


 お揃いですねと笑うと、嬉しそうに返された。


「クラスこれはね」

「お前黙れ」


 なにか言おうとしたシレをサクが遮る。いいじゃないと言うシレにサクが睨みをきかせた。


「サク、なにかあったの?」

「いいえ、何も」

「でも」


 私とサクの様子を見たおじいさんが首を傾げる。


「お嬢さんはアチェンディーテ公爵閣下の奥様で?」

「え!」

「違います」


 随分親密だったものですからと苦笑した。色気のない地味なワンピースを着たみすぼらしい女が若い公爵のお相手なものか。お世辞にしてもやりすぎだ。


「親密……」


 鼻をおさえたサクがぶつぶつ言いながら喜んでいる。機嫌がいいならよしとしよう。けど人目はあるので、鼻血だけは出さないでほしい。

デート……ざわ……ざわ……デート……ざわわ(落ち着け)。一張羅のワンピースでお出掛けするクラス、なかなか初めてのおつかい感がありますねえ(保護者同伴だけども)。


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