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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
63/103

63話 それはもう僕が好きって事ですよね?

「バレた」


 踵を返し走り出した。木々が高く多いとはいえ城の庭だから広さに限度がある。

 少し後ろを振り向いて確かめるとドラゴンとフェンリルが追いかけてくる。視界の端にサクが外回廊から庭に出たのが見えた。


「げっ」

「クラス逃げるのか」

「う、うん」


 別に必要ないと思うがとドラゴンが言うけど無理でしょ。あんなに瞳孔開いてたし。十年前に私が皇太子妃に痛め付けられていた時、怒りの表情を見せていたのと同じように開いていた。勝手に追いかけてきたから怒ってるの?


「追い付かれるぞ」

「た、助けて」


 ならば変身しなさいとフェンリルが言う。あの子犬にもう一度なれるの? サクにはどう足搔いたって足の速さでは勝てない。


「ええいやるしかない!」


 気合いでイメージする。側のドラゴンが大きく羽ばたいて高い木々を越えて空に出た。


「良く出来た」


 どうやら犬になれていたらしい。フェンリルに咥えられ、よしこのまま逃げきれると思ったら急な圧力がかかった。


「?!」


 浮遊感が来てしっかり見渡すと眼下に高い木々が、遠く帝都が見えた。


「よしきた」

「?!」


 頭上のドラゴンが近づいてくる。フェンリルが私を咥えてすぐに放り投げ、上空でドラゴンがキャッチする流れだったのね。そのまま飛んで逃げ切るだなんて冒険小説の主人公っぽくていいわ。


「成程」


 ふんわり包まれたと思ったら目前にはサクがいた。え、どうして? どうやって?


「クラス」


 滞空時間が妙に長いけど魔法を使ったのだろうか。

 ドラゴンが追い付かれたかと笑っていた。


「可愛いですね」

「……」


 変身した時は違和感がなかったけど、この姿だと子犬らしい高い鳴き声しか出ない。ドラゴンとフェンリルだから言葉を分かってくれてたのね。


「ふふふふ」


 ゆっくり下降する中でサクが私の……子犬の腹から胸に顔を寄せる。鼻先が当たってくすぐったい。というか犬の状態とはいえ、そういうことされても恥ずかしいだけだ。やめてほしい。


「クラスですね」


 この人匂いを嗅いで判別したの? 今の私より余程犬みたいなことして。恥ずかしいじゃない。


「変身したという事は……もしかしてクラスは今裸? 今裸のクラスを味わってる?」


 いけない出そうとか言い始める。この場で鼻血吹いたら私の身体は白毛から真っ赤に変わるから止めて欲しいんだけど?


「服ごと変身してるぞ」

「……なんだ」


 心底がっかりしてる。どうつっこめばいい?

 結局ずっと嗅がれた状態で宙から降りて地上に戻ってきた。そしてなぜかサクは私をおろさず両手で包み抱えたまま。もぞもぞしてみるけど、思いの外がっつり捕まれているので逃げられない。


「何故ここに?」


 びくっとあからさまに身体が震えた。犬だと反応が大袈裟じゃない? 


「……」


 恐る恐るサクを見上げると眉を八の字にしてきた。さっきは満面の笑みだったのにどうして? やっぱり迷惑だった?


「この姿だと喋れない?」

「!」

「ああ、喋れないな」

「我々は分かるが」

「ドラゴン、フェンリル……連れてきたのは貴方達ですか」

「ああ」


 すぐに察するのね。ドラゴンが空から降りてきて、フェンリルが追い付いた。

 同時ぽむんと妙な効果音を立てた後、視界がサクを見下ろす形になる。


「おっと」

「ん?」


 戻ったかというドラゴンの言葉に子犬から人に戻ったことを悟る。

 同時に今の状態を把握した。サクの腕に座っているから見下ろす形になったの。ぐらりと身体が後ろに傾く。


「わっ」

「おっと」


 落ちると思ってサクの頭に腕を回してしまった。サクはサクで片腕を私の腰に回して安定させてくれる。


「あ、危なかった」

「おやおや」


 ひやっとした私に対しサクは満足そうに噛み締めるような物言いをした。


「やっぱり犬よりこっちのがいいですね」

「サク!」


 腰を引き寄せられ抗議の声をあげると笑う。からかってるわね。


「おろして!」

「えー? 折角なのでもう少し」


 なにがもう少しだ。けどこの不安定な姿勢にも関わらず、離れようにも離れられない。なんでよ。


「……もう」

「ふふふふ」


 いくらかの攻防の末、敗北を認めることになった。悔しい。機嫌が良さそうなので、私を抱き上げたままのサクに聞いてみることにした。


「私、てっきりサクはイルミナルクスで働いてると思ってた」

「あー、それはですね……」


 視線を一度右往左往させて、再び眉をさげる。向こうでも宰相なんですがと言う。


「勿論イルミナルクスでも仕事はしてるんですが、今のメインがウニバーシタスで……一時的に手伝いみたいな形で来てるんですよ」


 他の国からも人材来てますよと言うけど、どこか焦っているよう。


「第一皇太子が王位剥奪されたでしょう? それによる混乱の収拾と連合国家成立のアピール、加えてシレが宰相筆頭になる為に整える期間が必要だったので」

「へえ」


 確かに最初にシレと言い合ってたのはやめるやめないの話だったし、宰相になったとかなんとか言っていた。


「サクはなにに焦っているの?」

「いえ、その……」


 言葉を待つとサクは伏し目がちに視線を逸らした。


「クラスはウニバーシタスにいい思いを持っていないでしょう? それなのに僕がウニバーシタスにいるとなったらクラスを裏切ってるみたいじゃないですか」

「んー?」


 なにを言ってるのだろう? サクはただ仕事をしているだけだ。


「国家連合で必要なことでしょ? 立派なお仕事だから気にしないで」

「本当ですか?」


 幻滅してない? 怒ってない? と急に捲し立ててくる。気にしてたのね。


「むしろ私が勝手にここに来たから、それを気にしてるのかなって」

「いいえ?」


 なにを言っているのだろうという顔をして首を傾げた。


「だって僕の事、気になって来たんですよね?」

「なにしてるのかなと思って」

「それはもう僕が好きって事ですよね?」

「違う」

人、それをハUル歩きという(@ジ●リ)。そしてこ奴もくんかくんかする系だった(残念)。

裸かどうかって結構大事な話ですよね(きりっ)。

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