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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
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59話 盛り盛りプレゼント

「片付けは僕がやります」

「え、いいよ、私も」

「今日はクラスの誕生日でしょう? 色んな事を二人でするようになってきましたが、今日ぐらいは何もしないで下さい」

「う……」


 お茶をいれ直しますねと、いつも通りの様子でお茶をいれる。

 サクが来てから私は変わった。自覚がないけど自分が変わっていたのが恥ずかしくて仕方ない。


「さて。では上書きといきましょうか」

「え?」


 サクは満面の笑みだ。意気揚々としている。


「僕のプレゼントが一番だって証明してみせます」


 滅茶苦茶張り合ってる。これは面倒なことになったと嫌な汗が伝った。


「最初はユースティーツィアと被りますが」


 私の読書スポット、カーテン裏のソファ席が色取り取りの花で埋め尽くされていた。いい匂い。花の匂いがこないようにしていたのか全然気づかなかった。


「新しい本も棚に追加しました。ヴォックスとは被っていないので安心して下さい」

「ほお」


 ヴォックスの本も隣に入れてみる。これにサクは笑顔のまま微妙な空気を出していたけど無視した。どっちにしたっていつかこの棚に入るのだから今でもいいよね。


「後、そこに立てかけてあるのが机です」

「ああ作業用?」

「ええ。シレのアシストしたみたいで嫌なんですけど、薬作る時の机もガタがきていたでしょう?」


 今使っているのも折り畳みの机だけど、だいぶ古くなったからか畳みづらいし、組み立てても傾いてる時があった。直して調整はしてたけど、そろそろ限界かなと思っていたから丁度いい。


「新しい香油も」

「あ、嬉しい」


 お風呂が充実するようになったから、こうしたお風呂で仕えるグッズは助かる。


「クラス、今日お腹減りそうですか?」

「うん、そんなに食べてないし」


 なら夕飯は当初考えていた通り作りますねと笑う。これはユツィたちに対抗して盛りに盛って作る気だわ。ここまでくるとサクが絶対譲らないと分かるから諦めて受け入れることにした。本当はささやかにおめでとうと言われるだけで充分なのに。


「準備してる間は読書でもしてて下さい」

「そうする」


 お腹減らす為にストレッチしながら本を読もうかな。お行儀悪いからこっそりやろっと。


「この世にゲーム機があればいいのだがな」

「健康ゲームか」

「ゲームスポーツをやりたい」

「成程」


 ソファに寝転がって足だけあげて腹筋背筋鍛えている横で本を読みながらドラゴンとフェンリルが話し込んでいる。娯楽の話かな。

 サクがくれた本もヴォックスがくれた本もどっちも興味があってほしかった本だから、すぐにでも読み切りたい。けど我慢だ。時間をかけてゆっくり読もう。読書で徹夜も良くないし。


「クラス」

「ん」


 いつものご飯の時間より少し遅れてサクが私を呼ぶ。ドラゴンとフェンリルを連れてリビングに戻った。

 夕飯は品目少なめのコース料理。サクってば本気で一日どうプレゼントしていくか考えていたのね。ご飯ですらプレゼントだった。食器まで新調してるし気合いの入れ方がすごい。


「すごかった……」

「なによりです」


 綺麗に片づけられた机の上にサクがこつんと置く。入れ物でもう分かってしまった。

 視線でもらっていいものだと察して手に取る。蓋を開ければ予想通り。


「さっきの勢いで渡せなかったプレゼントです」

「これ」

「ええ、僕が作りました」


 十年前に拗ねて会議に出ないと言った時、お願いして一緒に作った私への誕生日プレゼントと同じ。

 手作りしたハンドクリームだった。


「覚えててくれたの」

「忘れるわけないじゃないですか」

「……ありがとう」


 あの時と同じ香りがした。私が好きだと言った香りだ。


「ね。僕からのプレゼントが一番でしょう?」


 顔を上げると自信満々で言うのに少し困った顔をして笑うサクがいた。さっきの勢いで渡せなかったのは一番がかかっていたから?


「うん、一番だよ」


 少しだけ、サクが安心したように見えた。十年前も欲しがっていた一番は彼の中でとても特別なものになっているような気がする。

 どちらにしろ、サクから貰ったクリームが一番に決まっていた。さっきまで張り合っていたものなんて比じゃない。


「では僕が塗りましょう」

「え、いいよ」

「何故です? 十年前は、」

「無理」


 サクの声を遮ってお断りした。

 あの時はサクの御機嫌取りも兼ねていたし、小さいサクだったから許された触れ合いだ。今のサクとするのはさすがに憚られる。


「ではお風呂上りに」

「断ってるよ?!」

「ええ、塗りあうまでがプレゼントなもので」


 受け取った時点で了承したものとみなしますときっぱり言われた。問答無用だと言わんばかりの圧がかかる。最初にそういうこと言わないと詐欺で捕まるわよ。


「まあそれは後々の楽しみにして」

「断ってるのに」

「はい、こちら」


 食料保存棚、ドラゴンたちの言う冷蔵庫から出てきたのは巷の女性が好きなスイーツだ。


「ケーキです」

「これ、サクが?」


 専門店も真っ青な出来栄えだった。小振りだけど、とても手が込んでいるのが見て取れるし、なによりとても美味しそう。

一番ほしくて豪華さと献身さで頑張るサク、けどクラスにとって一番心にくるのはハンドクリームというすれ違い模様。そんなもんですよね(笑)。そんな器用なようでいてすれ違う不器用が好き。

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