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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
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48話 添い寝問答

 宰相という立場なのだから当然仕事でイルミナルクスに行くはずだ。公爵として社交の場にも立つだろう。個人的な用事だってあるはずだ。

 ならそういう時ぐらいはやらせてほしい。


「……分かりました」

「うん」


 そのかわり、とサクが笑顔で続けた。


「外出する時はいってらっしゃいとおかえりなさいを下さい」

「?」


 それは当たり前のことではと思いつつ首を傾げる。


「ここが、クラスのいる場所が帰る所にしたいんです」

「かまわないけど?」


 特別なことでもないのに、すごく嬉しそうだった。イルミナルクスでだって侍女侍従がしてくれると思う。私としては簡単なことで農作業できるなら安いからよしだ。

 今日はもうサクが手早く終らせてしまったけど、明日からは私の仕事を残してもらいつつ外出してもらおう。


「じゃあ早速いってらっしゃい?」

「はい。昼の食事は用意済みですので」

「ありがとう」


 朝の仕事も終えて、洗濯物を干して掃除をしてご飯を作ってからサクは出ていった。

 挨拶は玄関でいいみたいで一応結界の外に出るまで見送ったけど振り返ることはない。大袈裟な別れの渋りもなかった。


「いつも通り、のんびりしよ」


 ほとんどサクがやってしまったので、僅かにある朝の作業をこなせば自由時間がたくさん手に入った。読書したり周辺散策したり昼寝をしたり色々できる。

 サクのお手製昼御飯はとても美味しかった。ドラゴンとフェンリルも食欲旺盛で、たくさん作ってあったのに全部なくなってしまう。夕飯分兼ねてたのではと思ったけど時すでに遅しだった。


「クラス」


 結界を通ったのが感覚で分かるドラゴンとフェンリルがサクの帰還を教えてくれる。

 扉が開いたら近くまで駆け寄りおかえりと伝えると心底嬉しそうに笑った。本当こんなのでいいのね。


「夕飯もきちんと食べましょう」


 地域によっては軽くしか食べないし、事実昨日はあまり食べなかったのだけど、今日の夕飯はとても豪勢だった。帰りがけに食料を調達したらしくお肉もあり畑の野菜もありで彩りも豊かだ。

 サクにはいっぱい食べることを勧められつつも無理には食べさせず、私がお腹いっぱいになるタイミングで食事を回収した。残りは翌日リメイク料理されるらしい。器用だしよく見ているなと思う。


「クラスはゆっくりしてて下さい」


 サクが片付けをしている間、私は湯浴みして着替える。悩んだ挙げ句、念のため上に軽いガウンをかけてリビングに戻った。サクはとっくにお茶を用意してて、寝室に運ぶつもりだったと言ったけど、ここで飲むことにすると嬉しそうに目を細める。本当は湯浴み後の着替えた姿で会うのはよくないのだろうけど、いつも通り過ごせないのはなんだか嫌で甘える形になってしまった。


「サクはゆっくりしないの?」

「ええ、もう少ししたら」


 明日の準備なのかキッチン回りを整えていた。その後はゴミを纏めたりと下働き真っ青の仕事振りだ。今日仕事して、帰ってきても家のことするなんてオーバーワークすぎる。


「私、寝るね」

「はい」


 私がいるから休めないのかもと思って先に寝ることにした。話したいことはあるにはあるけど焦らなくてもいいだろう。

 灯りを寝台近くに置いて消さずにベッドに潜り込む。目を瞑り静かな時間をすごしていたら、割と早くに扉が開いて閉じる音がした。


「ん?」


 ごそごそする音に顔を向けると当たり前のようにベッドに潜り込むサクが見えた。よかった、灯り消さないでおいて。


「ちょっと」

「ああすみません、起きちゃいました?」

「違う。そうじゃなくて」

「一緒に寝てくれると言いました」

「言ったけど……」


 けどだからって連日一緒ってなに? 週三なら二日に一度じゃないの?


「……だめですか?」

「うっ……」


 しょんぼりされると弱い。自分が虐めてるみたいに感じてしまう。眠りづらくなって睡眠の再教育が必要なのは分かっている。

 ベッド近くに寝ているドラゴンとフェンリルは見て見ぬ振りだ。絶対起きてるくせに。助けてくれてもいいじゃない。


「クラス」

「だって……」


 伏し目がちの瞳が明かりに照らされて泣きそうに見えてしまう。こんな迷子のような顔されたら切り離せない。


「……だめですか?」


 思わず唸ってしまった。そのまま枕に顔を突っ伏してしまう。良心が痛む。やろうとしてることは、はしたなく公爵としても間違っていることを教えてあげたいけど無理だった。


「……」

「クラス」


 いいですか、と三度目の伺いがあって枕に顔を突っ伏したまま頷いてしまった。小さく分かりにくい私の返事をサクは見落とさず、声音を明るくありがとうございますと言ってくる。

 次の瞬間、ぐいっと腰に腕が回った。


「ちょっと!」


 横向きにされて枕から顔を出す。背中に感触と温かさを感じて背後を見ようとしても腰をがっちり拘束されて振り向けなかった。


「せめて寝るまでは、このままで」


 掠れる声になにも言えなくなった。泣きそうに聞こえてしまったからだ。

 普段あれだけ気持ち悪い言動と鼻血ばかりの癖に、こんな時だけ切なげな声を出して。わざとなの?


「……もう」


 背中に感じるあたたかさに震えたのは私だ。私も人肌恋しいのだろうか。そうだとしたら足元見られているみたいで癪だ。


「ありがとうございます」


 結局、なし崩しにサクの添い寝を許してしまった。もっと毅然としないと。子育てやり直しなんだから。

クラスは割と押せばいけるタイプ(笑)。というか庇護欲くすぐられると駄目なタイプ。だからあざとくなった小賢しい男に懐柔されるわけです(言い方ひどい)。

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