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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
45/103

45話 安心してクラスを甘やかせます

「育て方間違った?」

「そう思うのも無理はないが、クラスの責任ではない」

「奴が気持ち悪いだけだ」


 ドラゴンとフェンリルのフォローの中、再びサクが私の手をとる。


「今日からよろしくお願いします」

「ええと?」


 どう足掻いても帰ってくれないらしい。困る。


「荷物は順次運びますね」

「空き部屋ないよ?」


 元々医療物資を入れていた小屋を人が住むように軽く改築しただけだ。一人で住むには充分だけど、必要最低限しかないから二人では広さが足りない。

 玄関を開けたらリビング兼キッチンがすぐ目の前、中央の通路を奥に入っても左手にトイレ、右手に私の寝室しかない。入ってリビング右手の窓際のテーブル奥に引いたカーテンの先のリーディングヌックのソファを使ってもらうしかないかな。カーテンを開けてサクに示した。


「ソファを移動すればどうにか寝られるかな?」

「このままでいいですよ?」


 今気づいたけど、一国の宰相で公爵位の人間をソファで寝かせるのはさすがにだめかな。というか元小屋に寝泊まりさせるのもいかがなものだろう。


「私の部屋のベッドを使ってもらって、私がソファで寝た方がいいのかな?」

「いえ、クラスはきちんとしたベッドで寝て下さい」

「けどサクをソファにっていうのは……」

「クラスが普段使っていたソファですよね? クラスの匂いに包まれながら寝られるって事じゃないですか? 最高ですよね?」


 一気に捲し立てられて引いた。目が爛々としている。挙げ句ハンカチを顔に当てた。また鼻血出したの。肩に乗るドラゴンが気持ち悪いと囁いた。


「うんまあ、ひとまず今日はここで明日また考えよう、かな?」

「ええ」


 昼御飯がまだでしたから準備しましょうと笑う。転移で来た荷物の中から食材を取り出し、てきぱきと調理器具を出した。やっぱりキッチン回りのことをよく知っている。さっきからこの家の中を把握されすぎてて怖い。


「クラスは座って待ってて下さい」


 渋々お茶を片手に待つことにした。その間に作戦会議といこうか。


「ねえ、なんだか押し切られた感があるんだけど?」

「そうだな」

「強引な所は昔から変わらない奴だ」

「クラスが甘い事を知っていての言動と行動だな」


 私足元見られちゃってるの? なんだか悔しい。


「今からでも帰ってもらうしか」

「無理だろう」

「じゃあどうすれば」

「諦めるしかないだろうな」

「ええ……」


 ドラゴンとフェンリルがあらかじめ追い返さずに迎え入れた時点で逃げられないことだった。二人曰く、自分たちが跳ね返そうとしてもサクなら突破してくるだろうと言う。それほど魔法の力を高めてしまったらしい。


「何もしない生活が出来るをご褒美だと思って過ごすしかないだろう」

「ニート生活だな」

「ニートになりたいわけじゃないんだって」


 溜め息まじりにドラゴンが続ける。


「クラスもそろそろ人と長く触れ合う時間が必要になったという事か」


 十年、たまに来てくれるユツィたち以外とは関わらない生活をしていた。私にとってはドラゴンとフェンリルが人として関わる大事な家族でもあったのだけど、それは二人にとって健全なことではないらしい。


「期限もあるならいいじゃないか」


 来年の春、呪いが発動するまで。今まで頑張ってきたからと二人は言う。私にとってウニバーシタスの城にいた時はそう思えても、ここ十年に関しては穏やかすぎて頑張るもなにもなかった。


「できましたよ」


 二人の分もとドラゴンとフェンリルにも皿が置かれる。


「ホットケーキだ」

「ええ」


 そして当たり前のように目の前に座る。にこにこしながら机の上に片肘をついて顔を乗せた。


「今回はおかず系のホットケーキですよ」


 タマゴにベーコン、サラダも添えてすごく豪華だ。


「普段あまり食べてないでしょう?」

「そんなことないよ」


 日々の食事内容知ってるとかじゃないよね? 探るように見れば、腕が細すぎますと言われた。


「腕……」

「もう少し体重と肉を増やしましょうね?」


 栄養バランスも考えてメニュー作りますからとサクがにこにこしている。

 十年前も同じように細いと言われた。あの時はかなり怒ってくれたけど、今日はとても優しく伝えてくる。


「サクは食べないの?」

「向こうで食べてきたので」


 滅茶苦茶ガン見されながら食事することになった。でも見た目かなり美味しそうだし、あったかい内がいいよね。久しぶりに食べたい気持ちが沸いた。


「いただきます」

「はい」


 ナイフをいれる。柔らかくてふわっふわだ。

 とろとろ卵を絡め、こんがり焼けたベーコンと一緒に頬張る。


「!」


 美味しさに顔を上げるとサクと目が合った。美味しいですかと問われて口をモゴモゴしながら大きく頷く。この際食事のマナーは問わないでほしい。


「良かった」


 そこから無言の食事タイムだ。見た目結構なボリュームだったホットケーキを瞬殺する。ドラゴンとフェンリルも同じようにがつがつ食べていた。


「………美味しかった」


 ご馳走さまでしたと伝えると自分でお皿をもっていく前にサクに回収された。洗い物ぐらいと申し出ても断られる。隣で洗い物をするサクを眺めながら、料理上手になったと話を振ってみた。


「ええ、ずっと続けてました」


 料理に限らず家事の全てをと。


「クラスがそういう生活をしてると聞いていたので自分だけ楽はしないと決めました」

「そんな気にしなくても」

「どちらにしろ今こうしてクラスの面倒を見る事に繋がっているのでよしです」

「ええ……」


 にしても良かったとサクが笑う。

 首を傾げていると洗い物に目線を注いだままだった。


「これで料理は及第点ですね。安心してクラスを甘やかせます」

「……そう」

「食べたいものがあれば言って下さい」

「うん」

「本当食べてるクラスが可愛いから色々我慢するの大変でした」


 おっとと鼻をおさえる。折角料理上手で好感度上げたのに、鼻血と言動で台無しだよ。

私はニートになりたい(本気)。で、お金は定期的に今の年収以上入ってきて、家事も全部お任せ生活…最高だよ(落ち着け)。家も買ってリーディングヌックを設けたい。そして個人でキャンプエリアを購入し(以下略)。料理上手男子大歓迎ですな。

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