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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
44/103

44話 育て方間違った?

「結構です」


 自然と出た私の言葉に対してサクは全然こたえた様子なく笑い続けた。


「ふふふふ」

「……どうしよう私の知ってるサクじゃない」


 肩に乗ってきたドラゴンに助けを求める。首を横に振られた。


「これがサクであると言えるが、今のサクの人格まではどうにもならんさ」


 鼻血をハンカチでおさえ続ける姿に引きつつも心配になってくる。


「鼻血、治す?」


 笑顔から目を開いた驚きの表情を見せた。そのまま大丈夫です、と軽く返してくる。


「すぐまた出ますし」

「はあ」


 慣れている。十年前にサクが鼻血出すなんてなかったのに。そこだけがサクがサクじゃないとこかな。

 サクが押さえていたハンカチをとった。すっかり鼻血の形跡がなくなっている。


「クラスは変わらず優しいですね」

「え?」

「僕の事、警戒してる割に治癒を申し出るものですから」

「怪我してたら治すものでしょ?」

「そう考えるのはクラスだけですよ」


 無償で治そうなんて考えませんとしれっと言う。もっと打算的に自分の利の為に治癒魔法を使う人間はたくさんいると。


「そんなクラスだから側にいたくなる」

「サク?」


 視線を逸らし、少し俯きぎみに囁く。


「クラスは最初に顔を会わせた時から悪意が見えませんでした。あの城では自分勝手に搾取するばかりの人間や貶めようとする人間しか見なかった中で、不思議な人間がいるものだと思ったんです」


 ツンツンむすっとしてるだけだったのに、そんなこと考えてたの。

 入城直後、皇帝謁見時の周囲の悪意ある視線に嫌な思いをしたという。子供相手に大人げないのね。


「ウニバーシタスは第一皇子が自分に有利になるように人材を連れ込んでました。その結果ですから、なるべくした人選でしたね」


 さすが内情に詳しい。


「どんなに凄惨な目に遭ってもクラスの輝きは消えなかった。人を惹き付ける空気というか雰囲気があるんですよ。僕を含めてヴォックスたちがクラスの元に集まるように」


 トップにたつには必要な才能です、とサクは笑う。

 公主に戻るつもりないよ?


「そこがきっかけですね。そこからは部屋を隣にしてなるたけ側にいました。いつの間にか側にいればいるだけ離れ難くなってしまったんです。正直、家族とか家庭には憧れがあったので、擬似体験していた節もありますね」


 イルミナルクスでサクの面倒を見ていた叔父家族はとても仲がよくて憧れていたらしい。その中の一員として叔父家族が見てくれても、自分はどこか違うと勝手に線を引いていたのもあり、憧れだけが膨れていたところの私の出会いだったと言う。


「淋しかったの?」


 直接的な言い方だっただろうか。サクが困ったように眉を寄せた。


「そうですね。それもクラスが全て癒してくれました」

「そう?」

「ええ。物理的な怪我も中身も癒してくれる人間が真の聖女なのかと思ったものです。あの女が貶めようとするぐらいクラスの存在感は眩しかった」


 褒められて嬉しいし恥ずかしいけど中身が美化しすぎて怖い。サクにとって神様か何かになってる。小さい頃に優しくしすぎたせいで鳥の刷り込みみたくなった?


「治癒が出来るから聖女というわけではないぞ」


 フェンリルが話に入る。サクが首を傾げた。


「以前も仰ってましたね。しかし多くの文献で聖女は特殊な治癒魔法が使えるとありますが?」

「確かに聖女にしか出来ない治癒もあるが、それが証ではない」


 ドラゴンが続ける。


「聖女は精霊王が指名する。大昔に聖女制度が廃止されてからは一度も聖女は現れていないな」

「ねえ、精霊王ってなに?」


 この世界には精霊や魔物も本来はいるけど、伝承レベルの話になっている。その精霊や魔物は元々見えない世界にいるらしい。

 その昔は世界同士の境界線は薄く、人との行き来もやり取りもしやすく精霊王と親密だった。王と名のある通り、精霊を束ねる長、精霊が人に危害を加えないよう見守り統率するのが精霊王の役目だ。


「精霊王っているの?」

「ああ、いるさ。表舞台に出てこないだけだ」

「どんな人なの?」

「今は安定しているが、昔は繊細すぎたか」

「そうだな」


 人間みたいな言い方をする。

 サクは口許に手を当てて考えていた。その姿が昔よく見た姿と重なる。ああ、この人サクなのね。


「聖女は自身の祈りや願いが形になる力を持っているのだよ」

「治癒じゃなくて?」

「治癒も含めてさ」


 スーパーマンみたいなもの? そういえば十年前にドラゴンとフェンリルがチートって言葉を使っていたかな。飛びぬけている力だとか。そういう力を持っているということね。

 すると考えていたサクが真面目な顔をしてドラゴンとフェンリルに視線を戻した。


「最初に繋がった時、男女の声が聞こえました」

「サクの繋がっている世界に精霊王がいるからね」

「ならあれは」


 幼少期、高熱を出してからサクは神童の道を歩むことになった。その高熱を出している時に出会ったのが精霊王だったと。


「どんな人だったの?」

「姿までは覚えてないんですが……若い男女で親密な様子でした」

「そうだろうな」

「その女性は最初の聖女で精霊王の奥方だよ」

「え?」


 精霊と人間が結婚してたの?


「ではあの男性が聖女を指名すると?」

「そうだ」


 再び考えるサク。


「……」

「精霊王と話をしたの?」

「ええ。ですが記憶が曖昧ですね」


 まあそんな事どうでもいいです、とサクが再び笑顔に戻った。


「僕にとってクラスは聖女なので」

「聖女じゃないよ?」

「いいえ、僕の中では聖女です。クラスが望めば真の聖女として連合国家全てに周知、認識させますよ?」

「いいってば」


 クラスは特別なので相応の待遇をされるべきですと主張する。


「ああでも多くの目に触れるのも嫌ですね。僕だけが知っていればいいですし」


 やはりここに二人きりで生活がいいかなとぶつぶつ言い始める。考え方が極端だよ。


「ひとまず結婚前のプレを楽しみましょう」


 プレ……この世界で使わない言葉を平気で交ぜてくる。その言葉は私がドラゴンとフェンリルから教えてもらった言葉だ。やっぱりサクなのね……にしてもだ。


「育て方間違った?」

何気ない聖女談義。これ話すと長くなりますが、私の作品のスーパーマンも実は聖女家系。金髪碧眼が証明という裏の裏設定ですな(笑)。話上語られません。育て方間違ってないよ!

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