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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
1章 新興国のツンデレショタっ子は魔女に懐かない
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4話 子供扱いすんな

「ウニバーシタス帝国の手が入った国で治癒と医術に長けているのはステラモリス公国しかない。ステラモリスは併合されたから、姓が違うのもその為だろ?」

「うわ、よく分かったね」


 すごーいと誉めると嫌そうに顔を歪ませる。子供扱いはだめらしい。

 私が六歳の頃ってこんなだったっけ? 森の中を笑いながら駆けまわってた気がする。


「君はとてもクールね?」


 クール? と訝しんでたけど、そこは言及しなかった。

 あまりこの国に馴染みのない言葉はドラゴンとフェンリルから聞いているけど、たまについ口走ってしまう。気を付けないとだめね。


「普通だろ」

「ふーん……ねえ名前聞かせて?」

「は?」


 さっき聞いただろみたいな顔をされる。無愛想な顔してるけど、目鼻立ちははっきりしてて肌も綺麗な子だ。睫毛も長いなあ。


「君から名前聞きたいな? 自分で言える?」

「子供扱いすんな」


 歳だって似たようなもんだろと囁く。


「私は十六歳だけど?」

「……」

「君は?」

「……」

「自己紹介できない?」


 あからさまにむっとした。


「イリスサークラ・ソンニウム・アチェンディーテ……六歳だ」

「そっか~」

「……なんだよ」

「そしたら……イリス、うーん……サークラ……サクかな?」

「はあ?」

「君の愛称」


 シレはイーラと呼んでたけど、ちょっと変わった呼び方したら少しは仲良くしてくれるかな、なんて思ったり。


「……」

「サクって呼んでもいい?」

「……」

「いい?」

「……好きにしろ」

「ありがとう」


 可愛い。

 思ってたよりもツンツンしてない。少しほっぺ赤くしてもじもじしたから恥ずかしいだけみたいだ。きっと一人で知らないところにきて不安なだけね。虚勢張ってて可愛い。

 だからこそ味方はいるんだよって教えてあげるのがいいはずだ。ヴォックスやユツィが私を助けてくれたように。


「……変な奴」


 もじもじから戸惑いを少し滲ませて探るように私と目を合わせる。

 私が初めてここに来た時は不安しかなかった。今でこそ十分な暮らしだと思えるけど、右も左もわからず味方もいないと思う心細い日々もあったから、最初から大丈夫だと安心できる場所があると知っててほしい。私と違って歓待されているようだから必要ないかもしれないけど念の為、ね。

 それにサクのことを気遣って、というよりは、私自身が淋しくないようにと思ってやっているのかもしれない。彼に当時の自分を重ねているのだから。打算的でごめんねと内心謝ってみる。


「サク」

「……なんだよ」


 ちゃんと返事してくれた。渋々感もあるし不機嫌だけど、ちらりと目を合わせて返事をする。その瞳の輝きが珍しくて思わず口走ってしまった。


「サクの瞳って虹がかかってるのね」

「はあ?」


 薄い紫に虹が含まれている、そんな瞳をしていた。

 宝石みたい。とても綺麗な色合いに目を細める。


「綺麗ね」

「っ」

「好きだなあ、その色」

「な、なんだよ!」


 素直な感想を述べただけで、文句ありみたいな感じで突っかかられた。なんで?

 大人三人、というか主にシレが珍しく興味深げにサクを見て頷いている。サクはそれに気づいていないし顔が少し赤くなった。


「……お前」

「クラスでいいよ?」

「……宮廷魔法使いでないなら普段どこにいる」

「ん? 西の端っこに部屋もらってるよ」

「は? 西は侍女や下働きのいる場所だろうが」

「うん?」


 何が言いたいのか分からなくて笑顔で首を傾げたら呆れて息を吐いたサクがシレを見上げる。シレはこれでも頑張ったんだよと苦い顔で答えた。


「……おい」

「クラスでいいよ?」

「……西に行きたい」

「ん? 案内しようか?」

「ああ」


 少しは距離縮めてもらえそうかな?

 意気揚々と案内することにした。シレやヴォックスとユツィもついてきて、ごつい案内になったけど仕方ない。第二皇子兼騎士団長、第三皇子、第二皇子の婚約者兼騎士団副団長……肩書が荘厳すぎるでしょ。


「ん?」

「なんだよ」

「いいえ?」


 案内するので先導しようとしたら、ちゃっかり私の隣にサクがいた。

 もしかして初対面にして心許してもらえそうな感じ? ツンツンしてる割に懐いてくれるかもしれない。


「ふふふ」

「……なんなんだよ」


 何もない所で笑うと気持ち悪いぞと言われる。

 初対面にして懐いてくれたかもって思えたら嬉しくて顔が緩んだ。これはもう仕方ないと思う。

5話もきちんとツンデレします(笑顔)。更新は通常通りで、日曜からは1日1話更新を基本でいきます。

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