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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
1章 新興国のツンデレショタっ子は魔女に懐かない
35/103

35話 サクとの別れ

「……一緒に来い!」

「え?」


 サクが掌を差し出す。

 イルミナルクスに一緒に行こうとサクが言う。

 サクと一緒に行けば、第一皇太子妃からの暴力もなくなるし、今まで通りサクと穏やかな日々を過ごせるかもしれない。


「………できない」

「クラス」

「ここに、いる」


 私がイルミナルクスに行けば丁重に保護してもらえるだろう。サクが守ってもくれるし、この城での暮らしなんて比じゃない生活を送れるはずだ。

 けど私の存在がサクを、イルミナルクスを苦しめる可能性がある。

 魔女でありサクと同じ国家反逆罪を背負う私の身柄引き渡しを帝国、第一皇太子と第一皇太子妃は要求するだろう。これに対してイルミナルクスは庇いきれないはずだ。これがサクの引き渡し要求であれば、イルミナルクス国の民であり王族の血も継いでいる立場から拒否されてもウニバーシタスは手出しできない。

 私がイルミナルクスの人間ではない以上、強い拒否をした場合、自国の民に関する権限が強いウニバーシタスが国として動きかねない。一歩間違えると戦争が起きる可能性が出てくるわけだ。

 それは避けないといけない。サクが目指す国家連合を根本から崩されるわけにはいかなかった。


「……クラス」

「いかないよ。サクは早くイルミナルクスに戻って」


 私が考え至ることならサクはもっと深いところまで考え及んでいるはずだ。一人の人間が原因で大規模な戦争を起こすことは愚であるとサクは重々に理解している。

 数秒の無言、自分の手を握り締め続け震わせながら引っ込めた。そうしてやっと苦々しく答えを紡ぎ出す。


「…………分かった」


 手元をごそごそ動かして、サクが私に手を出した。掌を差し出すとそこに小さく綺麗なものが置かれる。


「髪飾り?」

「……」

「サク?」

「本当はもっと……いや」


 苦しそうにかぶりを振った後、真っ直ぐこちらを射貫く瞳でとらえた。


「俺、が、クラスを魔女と呼ばせない」

「サク?」

「クラスが堂々と歩ける場所を作るから」


 それまで持ってろ。

 と、いつも通り頬を赤くして言ってきた。けど、今日だけは可愛いと思えるゆとりがない。

 サクは怖いだろうか。

 家族みたいに過ごして互いに淋しさを紛らわして、端から見れば傷の舐め合いに見えても、確かにそこには温かい幸せがあったと思う。少なくとも私はサクとの時間を失うと思うと胸が苦しくなった。周囲がよくしてくれてて充分幸せなのに、サクがいなくなるのが辛いなんて欲張りになってしまったものね。


「毎日つけるね」

「……」

「サクの事忘れてないよって印」

「……おう」


 ヴォックスが行くぞと声をかける。急がないと時間がない。


「気を付けて」

「……」


 駄目だ、これ以上話していたら私が離れがたくなる。

 すると一度座り直したサクが、離れようと一歩下がりかけた私を追いかけるように身を乗り出した。


「サク」


 後ろで支えるヴォックスがいるから大事だろうけど、落馬したらと思って動きを止める。サクはそのまま近づいてきた。


「サ、ク」


 頬に感触。

 サクの髪と一緒に柔らかいものが頬にあたる。


「…………迎えに行く」

「サク?」

「それまで待ってろ」


 いつも通り、唇を少し尖らせて視線を逸らして顔を真っ赤にして囁く。

 思わぬサクの行動に頷いてしまった。

 

「う、うん」


 可愛い通り越して恥ずかしさに私の頬にも熱が灯る。急になんてことをするの。サクは瞳に虹を輝かせて細め、私の頷きに満足そうに笑った。


「…………よし」

「……サク」


 いいぞと小さく囁き、ヴォックスが馬が出した。

 触れられた頬に片手を当て、去っていくサクを見送る。後ろにヴォックス直轄の精鋭が続き、けたたましい音が小さくなってすぐだった。


「クラス・トラジェクトーリア・ドゥークス」


 名を呼ばれ振り返ると、第一皇太子妃の側付の護衛が皇太子派の騎士を数人連れていた。


「クラス」


 シレとユツィが私を庇おうと前に出る。

 大丈夫だと伝えると、眉根を寄せて苦しそうな顔をした二人が私を見下ろす。


「御用件は」


 私のどこにも怯えがないのを見て第一皇太子妃の側付は不快感を顕わにした。


「国家反逆を目論んだ罪で身柄を預かる」

一緒にはいかないよ/(^o^)\ナンテコッタイ 贈り物してちゅっちゅして別れとか、いい王道でしたね(満足)。贈り物は帝都視察で買ったはいいけど渡せなかったという裏話。

二章だひゃっはー!

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