表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
1章 新興国のツンデレショタっ子は魔女に懐かない
27/103

27話  治癒魔法が効かない風邪

「あれ?」


 ユツィがお冠だったのはサクと一緒のベッドで寝ているからだと思う。その習慣はまだ続いていた。

 大概私の方が早く起きて、ツンのない可愛い寝顔を見てから起こしてあげるのがいつものルーティンだけど、そのサクの寝顔がおかしい。


「サク?」

「……」


 私が抱き込みながら寝るのがいつもだけど、抱き締めてる感じが違う。いつもよりあったかい、というより熱い。


「サク、起きれる?」

「……ん」


 顔が赤くて少し汗ばんでる。息苦しいのか呼吸も荒い。私の呼び掛けにも返事はするけど目を閉じたまま、ぐったり気味に応えた。

 まさか。


「風邪?」


 サクが唸る。

 季節は夏を迎えたとはいえ、朝夜は割と冷える。今も体感暑くないから、汗ばむ程ではない。掌をサクのおでこに当ててみると案の定だった。


「熱い……やっぱり風邪ね」

「……クラス」


 私の手で目が覚めたのかうっすら瞳が開かれる。ぼんやり気味の潤んだ瞳が風邪だと言っていた。


「昨日はなんともなかったのに」

「……」


 よく一緒にいる傍らサクの体調はよく見ていた自負はある。特に子供は原因不明で急変することも多い。


「……治癒が効かない」

「……」


 治癒の魔法が効かないものは稀にあり、両親から聞いたことがあった。原因は分からないのだけど初めて見る。


「サクにはクラスの治癒は効かないだろうな」

「ドラゴン?」

「大丈夫だ。寝ていれば治る」


 だからそんな顔をするなと二人が困った顔をした。

 起きていたドラゴンとフェンリルがサクを覗く。ぼんやりした瞳のまま起き上がらない。


「なんで効かないの?」

「ふむ」


 前に手の怪我をしたのは治せた。それは表面だったから、かろうじて効いたのだろうとドラゴンが言う。納得がいかない。身体の中の病は治せなくて表面の切り傷ぐらいなら治せるなんておかしいじゃない。

 水を出してもらい、サクを起こして支えながら飲んでもらう。少し目が覚めたのか、瞳に光が入った。


「……俺が繋がっているとかいうのだろ」

「知っているのか?」

「そう聞いただけで中身を知る奴がいなかったし、話せる奴は全部話さなかった。俺の推測だ」

「繋がる?」


 ドラゴンとフェンリルは分かっているようだった。

 タオルでサクの汗を吹きながら話を聞く。


「簡単に話すと、サクはこの世界の人間とは少し違うものに変質している」

「んん?」

「……ようは化け物ってことだろ」

「精霊に近いな」

「似たようなもんじゃねえか」


 苦しそうに息を吐きながら憂鬱な顔をしてサクは反吐が出ると囁く。


「もっとポップな言葉でいうならゾンビか?」

「ドラゴン、それは例えがよくない」

「ふむ」


 言葉は難しいなと首を傾げる。

 人だけど人ではない。サクが自身の国イルミナルクスで高熱を出し目覚めた時にまじない師から言われたらしい。サクはその言葉を考えた末、答えに辿り着いていた。

 サクが神童と呼ばれるのも”繋がった”からだと。知識が膨大に入ってきても身にできる、大人と同じ舞台に立てる。確かにそれは異常だ。


「この世界には人が立つ世界の他に精霊のいる世界、意識の世界があるのだよ」

「そういうとこにサクはいるの?」

「繋がっているだけだね。しかし繋がると人の持てる力の領分を超える」

「意識の世界から智を得るからな」


 だからサクは人とは違う。たぶんサクは分かっていた。その言葉に気だるげな瞳を暗くする。


「そしたら私も人とは違うよね?」

「クラス?」

「治癒に関する魔法はステラモリス公国、私にしか使えないから、私も人とは違うでしょ?」


 確かにクラスは少々特別だがとドラゴンが同意する。

 深くは聞いてなかったけど、ドラゴンとフェンリルは想定外のことをどうにかするために現れた。


「予定と違うからってここに来たのは私のこと?」

「違うよ。けどクラスがいることで目的に変化があったから、今ではクラスも予定に組み込まれてしまっているね」

「私が治癒を使えるから?」

「違う。確かに人より治癒を深く使えるがね」


 ある程度の治癒であれば魔法を使える人間は習得できる。私程のは珍しい。


「クラスは聖女だろ? 充分特別だろうが」

「その聖女について認識の齟齬があるね」

「齟齬?」


 第一皇太子妃は治癒は聖女の特権だと言っていたし、私やサクも含めた周囲は聖女と治癒はセットだと考えているしそれが常識だ。けど違うらしい。それを語るのは後々でいいだろうとドラゴンが話を変えた。


「馴染みとの約束でもあるしな」

「馴染み?」

「ああ」


 そこは話す気がないようで黙ってしまう。

 約束であれなんであれ、私の存在はドラゴンとフェンリルにとって予定のために守らないといけないものだということ。なんだ、私ってば結構特殊なとこにいるのね。


「やっぱりサクと同じね」

「なに言ってんだよ」

「お互い特別なの。お揃いね」

「……」


 唸って黙ってしまった。

 そのままぽすんとベッドに戻る。

 熱出てるのに話しすぎたかな? いけない安静にしてないと。


「……くそ」

「サク、大丈夫?」

「…………反則だろ」


 枕に顔を押し付けつつも、絞り出した言葉ははっきり聞こえた。サクも私も少し違うかもしれないけど、サクの言う化け物でない。化け物だったとしても、お互い周囲と違う者同士仲良くできるよね。

このあたりはもう一度整理して書き直すかも…まああれです本音は看病話したかったんです(落ち着け)看病話は王道で大好き。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ