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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
1章 新興国のツンデレショタっ子は魔女に懐かない
25/103

25話 クラスのお誕生日

 お菓子は概ね好評だった。今回初めて配った騎士たちの口にもあったらしい。

 なぜか元気が出てくると張り切る騎士や寝起きがスッキリしたという妙な報告を受けたけど妙なものはいれていない。

 またと希望してくれる声もあったから、材料さえあればまたやりたいなと思う。二週間しか経ってないからもう少ししてからかな。


「クラス」

「メル」

「はい」

「え、いいの?」


 小さな箱がメルの手に握られ目の前に現れたから思わず両手を出してしまった。私の手の上に置かれる小さな箱。


「なんだ?」

「あれ、サク知らないの?」


 メルの言葉に眉間に皺を寄せるサクは、とことん仲間外れが嫌いだ。メルと私だけが知っててサクが知らないとなると途端不機嫌になる。


「今日はクラスの誕生日だよ~」

「?」


 まん丸な目を私に向けた。誕生日だよと告げると、なんだとと低い声が響く。

 メルが一番最初に祝っちゃってごめんね~と高らかに笑った。妙に一番を強調している。隣のサクが歯噛みした。もう、サクは結構負けず嫌いなんだから無駄に煽らないでよ。


「メル、あんまりからかわないで」

「嫉妬に燃える美形とか最高だし」

「メルってば」


 余計サクがより不機嫌になった。むすっと具合に拍車がかかる。


「じゃ私勝ち逃げするわ」

「このっ」

「ほほほほ~残念だったわねサク~楽しかったわ~」


 最近メルのサクいじりがひどい。その後のご機嫌取りするの私なんだけど?


「サク、ユツィたちのとこ行こ?」

「……それはなんだ」

「え?」


 今すぐ開けろと言われた。機嫌を損ねるのに中身を見るの?


「早く開けろって」

「んー?」


 仕方なく開けると中にはクッキーが詰まっていた。帝都の有名店のお菓子だ。よく手に入ったわね。


「……菓子か」

「うん」

「行くぞ」


 なにに納得したのか歩き出した。サクのこういうところはいつまでたっても謎ね。


* * *


「クラス、おめでとうございます」

「私とユツィからだ」

「あ、ありがとう、ございます」

「……」


 再び洗礼を浴びる。

 ユツィが大きな花束を用意していた。ユツィったらそのへんの人気の貴族様よりイケメンじゃない。嬉しい。顔緩む。けど隣の不機嫌がより増すから困った。

 隣のヴォックスは花瓶を持ってる。シンプルなものだけど、かなり上等なものね。透明ガラスの加工、特殊な模様は帝都の中でも扱える職人に限りがある。


「嬉しい」

「今年は割と邪魔が入らなかったので買いやすかったのです」

「邪魔者?」

「兄上だよ」


 弟たちの買い物にまで制限かけてくるんだ。本当子供みたいなことするのね。


「第一皇太子はアチェンディーテ公爵の相手で精一杯でこちらに手が回りません」


 サクが来てだいぶ変わった。前よりもヴォックスやユツィ、シレと関わるようになったし、下働きエリアはかなり活気づき、騎士の成績も上がる快挙だ。皇帝は大喜びだけど、第一皇太子や一部の貴族は嫌な思いをしているだろうな。


「アチェンディーテ公爵には感謝しても足りませんね」

「……」


 でも不機嫌のままだった。次は花束かとぶつぶつ言ってる。


「あ、やっぱりここにいたね~」

「シレ」


 隣にシレ付きの侍女を連れている。


「クラスの誕生日だからね。荷物溢れてると思って」


 だから侍女がワゴンを引いているらしい。これに乗せて持っていくといいと笑う。


「あ、で、これがプレゼントね」


 ワゴンにのったものを指す。ガラスの試験管やフラスコ、乳鉢もある。


「薬作りに使えるでしょ」

「はいっ!」


 これはありがたい。最近の変化の中に薬を求める患者の増加があった。器具が揃えば対応の幅も広がる。


「いつも薬もらってる身だからね」


 苦笑するシレの顔色はだいぶ良くなった。睡眠や食事は側付きの侍女侍従が協力的できちんととるようにしてくれたらしい。ありがたい限りだ。


「……ちょっと出る」

「ん? サク?」

「街に出る」

「え、今から?」


 不機嫌なまま行くと断言するサクに、シレがさらっとこれから会合だよと伝えると、出ないと言い出した。当然シレは顔を青くして悲鳴を上げる。サクのむすっと具合は変わらない。


「ねえサク」

「出ないからな」


 私が最後まで言い切る前に被せてきた。

 急にまたなんで、街に出るなんて言い出すの? ここから会合に出るって気持ちになるようご機嫌とるの相当難しい気がしてきた。

昨日の不穏さから一変、いつものツンデレが帰ってきました(笑)。完全におちょくられているツンデレ。

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