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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
1章 新興国のツンデレショタっ子は魔女に懐かない
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18話 大人になってもその気だったら迎えに来て?

「きっと男の沽券に関わる事なんでしょ。サク、プライド高いし君に関しては見境ないからねえ」

「沽券……」


 訓練場は騎士たちもいなくて、広々静かだった。そこに木刀を持つ二人。どう考えたって剣を扱ったことのないサクに勝ち目はない。この前初めて手に取りました風だったのに、なにを考えているのだろう。


「サク、やめよ?」

「嫌だ」


 もう、結構頑固だからなあ。


「ふむ。私に一撃いれられればよしとするか」

「分かった」


 なんで話がスムーズなのかな?きちんと説明してほしい。

 サクと仲良くなったと思ってたのに、皆の方が仲良さそう。なんだか疎外感だ。私も分かりあいたい。


「いつでもいいぞ」


 サクの眉間の皺がさらに寄る。舌打ちの後サクが駆けた。


* * *


 結果。


「……」

「サク、機嫌直しなよ」

「……」


 圧倒的な強さで当然ながらヴォックスが勝った。しかも容赦なくて、殺気も半端ない。子供相手にやることかと首を傾げたけど、ユツィは相手に敬意を払う為だと言うし、シレもあれでいいと言うから正解なのだろう。

 やっぱり私だけ置いてけぼりじゃないの。


「サク怪我してる」

「ああ、すまない。力みすぎたか」


 ヴォックスってば本気だしたの?

 呆れて溜息が出るわ。むすっとしているサクの怪我している手の甲に手を添えた。治癒の魔法をかけると、少しだけ目を見張る。


「これが治癒……」

「サクにもできるんじゃない?」


 なにもステラモリスの王族だけが使える魔法ではない。魔法が使える人間ならできると思う。


「クラス、簡単に言うものじゃないよ」

「そう?」

「治癒は魔法の中でも繊細で難しいんだ。だから扱える人間がいるステラモリス公国が栄えたんだよ」


 魔法が使えるシレでも治癒は難しいらしい。

 サクを再び見ると、ぶつぶつ言いながら何かを考えていた。不機嫌が治ったからよしとしよう。


「訓練するか?」

「……」


 考え続けるサクにヴォックスが何を思ったか提案を持ちかけた。


「ヴォックス、サクは騎士になるために来たわけじゃないでしょ?」

「鍛えておくにこしたことはない」

「護衛つけるからいいじゃない」


 するとサクが不服な様子でヴォックスを見上げた。瞳の強さでなんて応えるか分かる。


「する」

「なら毎日この時間にどうだ? 執務さえ終えていれば訓練可能だ」

「分かった」


 すんなり決まってるんだけど、これでいいの? 


「あ、こっちが立て込んだら時間ずらしてよ~」

「当然だ」


 和気あいあいとしている。無事丸くおさまりました感だすのはいいけど、この微妙な仲間外れな私の気持ちを汲んでほしい。


「クラス」

「サク、ねえ外出ろあたりから説明して? 三人がサクのこと理解してるのなんで?」

「……戻るぞ」


 用事は終わったとばかりにすたすた進んでいく。三人がいいよいいよと言うから、サクと一緒に行くことにした。二人で回廊を進む中でサクが溜め息まじりに吐露する。


「……早く大人になりたい」

「急にどうしたの?」

「クラスを助けられただろ」


 さっきも言ってた。自然と顔が緩む。可愛いこと言ってくれるなあ。


「だから訓練するの?」


 訓練したからといって大人になれるわけじゃないけど。


「…………強くなれば守ってやれるだろ」


 ああもう可愛いなあ!


「じゃあ、めいっぱい強くなって?」

「……おう」


 騎士ばりに鍛えた凛々しいサクかあ。元々顔立ちも中性的で綺麗だから美貌の貴族様ができあがるんじゃない? デビュタントでそんなサクが来たら、周囲の御令嬢も沸き立つだろう。


「デビュタントで目立つだろうなあ」

「……クラスがいないデビュタントに出ても意味ねえじゃねえか」

「男女関係なくデビュタントは大事なイベントだよ?」


 婚約も可能になるしね。即結婚な子もいるだろうけど、デビュタントはこの帝国及び付近の国々には、成人として認められる重要な節目でもある。


「クラスのデビュタントはどうだった?」

「私、デビュタント出てないんだよねー」


 だからサクがそういうの出てくれれば話も聞けて楽しめるんだけど、と加えるとサクが立ち止まり有り得ないという顔をして私を見上げていた。


「デビュタントに出ていない?」

「状況がねえ?」


 皇太子妃が汚らわしい魔女がいるなんてと理由づけたのが一番だろうか。許可が下りなかった、というよりも、デビュタントというイベント自体が行われなかったはずだ。私も出る気はあまりなかったし、ドレスもなかったから仕方ないことだと思っていたけど、他に多くの御令嬢御令息が楽しみにしていたと思うと中止は心苦しい。


「なら婚約者も、いない?」


 デビュタントを越えれば婚約者を持つものは多い。特に女性側はそういう風習なのか、貴族の女性の間では婚約者がいることはほとんどだった。


「いないよ。そういう世界にいないしね」


 公国の公女という肩書きはもうないし、公女であったとしても両親は割とのんびりしてるから、小さい頃からの許嫁なんていうのもなかった。


「結婚したいか?」

「んーどうだろ。考えたことないけど」

「結婚してくれそうな奴は?」

「それこそいないよ」


 サクが探るように見つめてきた。瞳が大きいから可愛い反面じっと視られてる感が半端ない。

 部屋について中でお茶をいれながらお互い座る。少し躊躇いながらサクは口を開いた。


「その」

「うん?」

「相手がいないなら、俺が、結婚してやらなくもない」

「ん?」

「……なんだよ」


 私の反応の薄さに不機嫌を呈しながら見つめてくるサクは少し顔を赤くしていた。デビュタントを迎えられなかった私に気を遣ってくれているのね。婚約者の一人もいないなんてと私の代わりに嘆いてくれたのだろうか。


「ふふふ」

「だからなんだよ」

「ううん、嬉しいなあって」

「俺との結婚が?」

「うん」


 そ、そうかとどもりながら視線を逸らしてお茶を飲む。照れ隠しね。優しいし可愛い。


「まあサクもいつかはいいとこのお嬢様と結婚するだろうけど」

「……俺が約束破るように見えるのか?」

「そういうことじゃなくてね?」


 婚約するかと追撃してくる。結婚ごっこみたいな感じね?

 サクがデビュタントを迎えての正式な物じゃないし、口約束だし法的効力はない。ここは全力でサクの気遣いに乗るべき所ね。


「分かった。サクが大人になってもその気だったら迎えに来て?」

「……おう」

人、それをフラグという(笑)。迂闊に約束なんてするもんじゃないですよ。タイトル通りになる未来が待っていますのでね!ね!色んな意味で二章が震える。

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