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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
1章 新興国のツンデレショタっ子は魔女に懐かない
17/103

17話 分かりました。一騎討ちですね?

「そういえばどうしてこんなに簡単に食材融通してもらえるようになったの?」

「サクが直接父上に申し立てたからだな」

「うわ……」


 シレとヴォックスですら第一皇太子が阻んで実現しなかった食材の件がこんな簡単に叶うか不思議だった。サクの主張はこう。


 城で働く者たちの生活水準をあげる

 ↓

 下働きの者たちが最高の成果を挙げる

 ↓

 仕える貴族や王族が快適に生活できる

 ↓

 貴族や王族の生活が整う

 ↓

 政へのパフォーマンスがあがる

 ↓

 やるべきことだ


 簡単に話すとこんな感じのいかにもな理由をつけて直接皇帝へ申し立てたらしい。それも第一皇太子のいる会議の場だから第一皇太子の顰蹙ひんしゅくを買った。

 仲良くは無理かな? 穏便にいってほしい。


「今日も水路の再活用の話が出たな」

「水路?」

「この地域を治めていた前帝国の使用していた建築物だ。地下にあるから知る人間は少ないかもしれないな」

「もしかして採用?」

「ああ」


 ウニバーシタス帝国の数百年前、ここには別の帝国が存在した。ウニバーシタスの前身ととってもいい。今より南側中心で栄え、海向こうの国も領地にしていた。その国は地下に多くの水路を作り、帝国全土に水を張り巡らせている。それを再活用してウニバーシタス帝国に再び水を引くというのがサクの提案だ。


「この前話してたことかあ」


 再整備に費用はかかるものの、地中の中にある水路は伝染病の観点から見ても安全だし、近辺のものはそこまで劣化していなかった。水路を引けば国民の生活が飛躍的によくなる。やってみる価値はあるわけで。


「ヴォックス兄上」


 この時間に珍しく、執務室の戸が叩かれた。入ってきたのはシレとサクだ。


「件の水路、サインがほしくて」

「ああ、分かった」


 主導がシレとヴォックスになっているらしい。やっぱりサクはまだ部外者扱いなのだろうか。


「こいつらの成果にしといた方が次の皇帝になりやすいだろ」


 当たり前のようにソファの私の隣に座り、私の考えてることを理解しているのか的確な回答がきた。

 次の皇帝って第一皇太子が退位したらってこと? あの二人に子供ができたら子が継ぐだろうし、ヴォックスは皇位を退き爵位をもらう話もある。サクが知らないなんてことないと思うんだけどな。


「いつもここにいるのか?」

「クラスは騎士の治療が主なもので」


 私の代わりにユツィが応える。サクがなぜか考える素振りを見せた。はて、今のユツィの言葉で思い当たるところでも?

 ユツィとサクの会話は続く。


「クラスに部屋を用意したのはシレだな?」

「はい」

「食事も?」

「侍女と同じ水準まで持ってきたのはヴォックスです」

「皇太子妃との接触を減らしたのは?」

「二人ですね」

「ユツィだって動いてくれたじゃない」

「いいえ、私には権限がありません。実質変えたのはヴォックスとシレですので」


 再び考えるサク。

 私が首を傾げてる間にお茶が出てきた。私にはおかわりまであって嬉しい限りだ。


「……むかつく」

「はい?」


 不服そうなサクが私に視線を寄越して逸らす。

 伏し目がちに口を少し尖らして囁いた。


「俺がクラスを助けたかった」

「え?」


 待ってなにそれ。

 ここにきたばかりの頃、三人が色々動いてくれて助けてくれたその役をサクは自分が担いたかったってこと?

 なにそれ、可愛い。すごく優しいことを言ってくれるのね。


「嬉しい!」


 がばっとサクに抱きついた。大きな声だったからか、シレとヴォックスがなんだろうとこちらを向いたけど気にしてられない。それぐらい嬉しい。

 当然サクは私の腕の中で暴れる。けどさして強く拒否しないあたり、やぶさかではないってことだ。


「なにもしてないだろ?!」

「気持ちだけでも嬉しい!」

「は、離れろって」

「それにサクは今色々してくれてるでしょ?」


 ご飯もそうだし水路もだ。サクは色々してくれている。

 サクがちらりとヴォックスの方に視線を流す。眉間に皺を寄せて盛大に舌打ちをした。なんでここでそうなるの。


「ヴォックス」

「どうした」


 サクって存外皆のこと名前呼びだよね。私もだからいいんだけど、私の真似をしてたら教育に良くないかも。今から変えるべき?


「外出ろ」

「はい?」

「どうした」


 いきなりなにを言い出すの。ヴォックスも意外だったのか少し目を丸くしていた。


「分かりました。一騎討ちですね?」


 ユツィが目を輝かせて二人分の稽古用の木刀を持ってくる。準備よすぎでしょ。というか外出ろだけで分かったの?


「成程」


 ヴォックスも分かったとばかりに頷いて立ち上がる。


「え? なんで?」


 そんな話だった? 確かにヴォックスやシレが助けてくれたのは事実だけど、それに対抗意識燃やしても過去が変えられるわけじゃない。

 仮に今戦って勝っても助けた過去をサクに譲れるわけでもないし。


「クラス、いきましょう」

「うん?」

「折角だから見ていこうかな」

「シレ……止めなくていいの?」


 サクが自由なのはいつものことさと軽く笑う。慣れていいものなの?

クラスが御三方に信頼を寄せているのも、自分が一番じゃないみたいで嫌なんですよねえ(笑)。

こういうとこはお子たまですなあ。

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