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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
1章 新興国のツンデレショタっ子は魔女に懐かない
12/103

12話 今日からここで寝る

「そうだ、寝る前にお茶飲みたかったら後でおいで?」

「は?」


 綺麗に完食して食器を片付けている時に言ってみたらサクはなぜかぎょっとしていた。


「寝る前、だと?」

「うん。ほら、話してたお茶の話」

「……ああ」


 食器を一緒に厨に持って行って戻るまで真剣な顔をして何かを考えているようだった。そのまま大した相槌も打たないまま自室へ入ってしまい、首を傾げながら部屋に戻る。

 フェンリルとドラゴンに話してみるも、それは仕方ないと二人して首を横に振っていた。二人ともサクのこと分かっていそうだけど話してくれる気はないらしい。


「クラス」


 今日はお茶飲みに来ないかなと思っていた頃に戸を叩く音がして名前を呼ばれる。


「俺だ、開けてくれ」

「うん」


 開けると心底不機嫌で鋭い顔をしたサクが私を睨み上げていた。どうしてその顔になるわけ。


「なんで開けた」

「え、だってサクだって言うから」

「こんな夜更けに俺だって名乗っただけで開けるなよ!」

「ええ……」

「俺じゃなかったらどうするんだ!」


 ああくそやっぱりかと両手で顔を覆って嘆く。私がサクを呼ぶとぎっと再び睨み上げて、危ねえだろと怒ってきた。あれでもこれってもしかしてと思えてくる。


「心配してくれてるの?」

「っ! んなわけないだろっ」

「じゃあなんでそんなに怒るの?」


 ぐぐぐぐと声にならない呻きをあげて、ちょっと待ってろと言って自分の部屋に一旦戻ったサクはすぐに出てきた。片手に枕を持って戻り、むすっとした顔のまま無言で私の脇をすり抜け部屋に入ってくる。

 首を傾げながら戸を閉め鍵をかけて部屋の奥に戻った。テーブル席に座るから約束通り夜にいいお茶を淹れてあげると黙って飲む。ふむ、行動は素直だな。


「サク、どうかしたの?」

「……」

「サクってば」

「今日からここで寝る」

「ん?」


 お茶を飲みほしたサクはベッドへ直行し、そのままばふんと自分の枕を私の枕の隣に置いた。もぞもぞしてベッドにもぐりこむ。


「……」

「……」

「……おい、寝るぞ」

「え、あ、うん」


 言われ明かりを消してベッドに潜った。あ、そっか、そういうことか。


「なんだあ」

「なんだよ」

「サクったら一人で寝るの淋しかった? そう言ってくれればよかったのに」

「ちげえよ」

「またまたあ」


 お前がそんなだからと悪態を吐かれる。虚勢張ってるだけね、可愛いなあもう。


「無防備すぎだろ」

「サクってば可愛いねえ」

「おいっ、触るな!」


 近づいて腕を回してぎゅっとするとサクから非難の声が上がった。


「いいじゃん、一緒に寝るならこのぐらい」

「お前、俺は男だぞ?! 少しは警戒したって」

「はいはい、サクってば可愛いんだから」

「なん、」

「じゃあ私からお願い。一人だと私が淋しいから、今日は私をぎゅっとして一緒に寝て?」


 ぐぐぐぐと再びサクの唸り声が聞こえた。

 

「くそっ」

「……もう。サクって言葉遣い悪いよね」

「なんだよ悪いか」

「まあもう少し柔らかい方がいいかなと思うけど」

「……嫌か」

「ううん。ただ公の場に出ることもあるでしょ、だから」

「それなら心配ない。きちんと相手選んでるさ」


 ならいいんじゃないと応える。すんとサクが鼻を鳴らした。


「……クラスが怖いとか、そういうんならやめる、けど」

「うん? いいよ、話しやすい方で」

「そうか」

「うん」


 なんだか眠くなってきた。人肌の温かさが久しぶりだからだろうか。

 フェンリルやドラゴンがたまに一緒に寝てくれる日もあるけど、基本ベッドは一人で使っていたから新鮮だ。


「眠いか?」

「うん、もう寝る。サクもちゃんと寝るんだよ」

「大丈夫だ。寝るさ」

「ん、じゃあ、また明日、ね」

「ああおやすみ」

「おやすみ」


 完全に意識が沈む前に、サクがぎゅっとしてくれた気がした。ふふふ、そんな可愛いことしたら寝ようとするのに口元緩んじゃうじゃない。

六歳だから許される行為(笑)。ドラゴンとフェンリルが守ってくれてたでしょうが、目の当たりになると心配になりますよねー。

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