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元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女  作者:
1章 新興国のツンデレショタっ子は魔女に懐かない
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11話 クラスと食事したい

 隣でシレがお願いお願いと連呼している。

 どうやら皇帝との晩餐を断ったらしい。私との約束を律義に守ろうしているのね。そんなの反故にして皇帝と食事すればいいのに。

 と、私の視線に気づいたのか、サクの視線がこちらに向いた。

 騎士の治癒と処方する私が目に入ったのか、眉間に皺を寄せ目を細めてこちらを凝視し、シレの言うことを無視してずんずんこちらにやってきた。

 騒ぎを聞いていた騎士たちも気づいていて、サクが来ると道を開けて私の前に来やすくしてくれる。


「クラス」

「お疲れ様、サク」


 軟膏を塗り終わって、騎士から手を放す。その手元をサクはじっと見つめていた。


「何してんだ」

「治癒」

「……」

「魔女様、ありがとうございました。我々はこちらで」

「はい、お大事にして下さい」


 ぞろぞろ複数の騎士が去っていくのと同時にヴォックスがやってきて、シレも追いかけてこちらに合流し、昨日と同じメンツが勢揃いになる。


「サク、夕飯なら私構わないから皇帝陛下との晩餐を優先して?」

「……嫌だ」

「ちょっと! サクがクラスと食事したい気持ちは分かるけどさあ」


 シレが相当必至だ。朝も私と食べていたのだから、シレの動揺は当然と言えば当然ね。本来サクの朝御飯は皇族エリアで皇族と一緒に食べているはずだもの。


「葬式みたいな空気の中で飯が食えるか」

「誰か亡くなったの?」

「例えだ!」


 俺は絶対行かねえからなと再度シレに言い聞かせ、最後には根負けして報告をあげに行ってしまった。


「サク、あんまりシレを困らせるのは良くないよ」

「あいつの肩持つのかよ」

「違うってば。後見人として間を取り持ってくれてるわけだし、仲良くして欲しいなって」


 特に彼は働きすぎて肝を患ってしまったから、二度と同じ病気にかかってほしくない。前の時は本当に危なかった。そう伝えるとサクは視線を下げる。


「……気を付ける」

「うん、ありがとサク」

「でも今日はクラスと食べるからな」

「分かった」


 サクは聡明だから分かった上で今後は考えてくれるだろう。本来は晩餐会の方に出席した方がいいだろうし。


「魔女様」

「はい」

「すみません、負傷者が」

「今行きます」


 再び騎士に呼ばれユツィと一緒に怪我人の元へ行く。

 その間サクは何度もこちらを見つつも、ヴォックスから剣を渡されていた。練習用の木で出来た剣を構えて振るう。ヴォックスと並ぶと師匠と弟子みたいな感じになって微笑ましい。

 治癒を終えて戻ると適度に運動をしたのかすっきりしたサクと目が合う。これから帰るのかと言われた気がした。


「じゃあ今日の夕飯作るから早速お手伝いをお願いしようかな?」

「……分かった」


 そうして一緒に行った厨で入ってきてる食材が全然違って衝撃を受ける。

 今日は充実した料理メニューでいけた。


「今日の夕飯は豪華だよ!」

「……」


 これで? とでも言いそうな顔をしていた。

 お肉だって結構な量入ったし、野菜も豊富だ。メルなんてすごく喜んでいたし、筆頭シェフのドゥルケも食材の良さと多さに驚いていた。


「サク、いっぱい食べてね」

「その台詞はそっくりそのまま返す」

「私はいいよ、大丈夫」

「ふざけんな」


 がっと手首を掴まれそのままもう片方の手でローブを捲られる。


「こんなほっそい腕で大丈夫なわけないだろ!」

「ええと……」


 睨み上げるサクにたじろぐと、すぐにはっとして掴んでいた手元を見た後離してくれた。


「わ、悪かった……怖がらせた」

「ううん、全然平気だよ?」


 言い返せる言葉がなかっただけで怖くはなかった。仕方ないことで、サクがしょんぼりする必要はない。


「気を取り直して! ご飯食べよ?」

「……」

「ご飯は美味しく食べたいから、今の全部なしね?」

「……分かった」


 日中も葬式みたいな雰囲気でご飯食べたくないって言っていたのを思い出したのかは分からない。けどきまずさや不機嫌さを出さずに食事に入れた。

 せっかくなので今日どんなことを話したのか聞いてみるけど、難しい話されたり誤魔化されたりして内容が分からずじまい。たまに出てくる難しい話に頭から煙出して固まっているとサクが呆れたように見てくる。

 笑ってくれるようになったら嬉しいなとふと思った。

ご飯は美味しく食べたいですよね~ほっそいクラスがきちんと食べて肉つけないかなという監視の意味もあって一緒に食べてるとこもありますが、そういったサクの心配は全くクラスに伝わらない(笑)。

心配性な六歳ツンデレ。

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