第8話 道端の病人
今回は、1人の病人と出会うお話です。
ここからアクロポリス編が盛り上がっていきます!
楽しんで頂けたら嬉しいです!
さてと、昼の都会の街に繰り出した私なわけだけど、いつ見てもこの光景は凄いと思う。
キラキラ宝石のように光る飾り付け、賑やかな人の森、森、森。
心が弾けちゃいそうだよ~!!
もう弾けちゃってるけど!
あれだね。
血湧き肉躍るとか言うけどあれは違うと私思うね!
血湧き肉踊り心跳ねるだね!
こんなに沢山の人がいるのかと思うと圧巻だった。
田舎者丸出しな反応だけど!
色んな人、沢山の人がいるということは私でも理解出来ていたけれど、一度これ程の人が密集する所にいるという体験は今まで無かった。
だから、なんというか爽快だった。
私は、人混みの中を掻き分けるようにして進んで行った。
「ほへぇ、それにしても凄いよねぇ。これ」
私は街の中をキョロキョロと見渡して溜息を吐く。
街を取り囲む7色の豪華な装飾。
人気なキャラクターなのだろうか。
可愛らしい丸っこい形をしたクマやイヌ、ネコなどがお店のあちこちで置かれている。
子供用なのだろう。
デコレーションも華やかだ。
推しの選手でもいるのだろうか。
中には『必勝〇〇』なんて言う横断幕まで店の前に掲げてあった。
「おおお! やっと出た!」
荒波のような人混みの中を何とか脱出すると、拓けた場所に出ていた。
どうやら、私は広場に出たようだった。
広場も人は多いけど、広いから今通った道に比べたら人口密度はそれほど高くない。
広場は円状に作られており、中心には円柱の形をしたオブジェが建てられていた。
街の雰囲気にとても良く合っている。
オブジェの上半分は、透明で青色のクリスタルのような物で作られていた。
そこから放射線状に映像が映し出されていた。
どうやら、地域ニュースをしているらしい。
スタジオには2人の男女が座っていた。
右側には茶髪のポニーテールの女性。
左側には黒髪のストレートの男性が座っている。
女性が男性に質問を投げ掛けていた。
「明日は遂に『国家試験週間』ですね~」
「ええ。アクロポリスが年内で最も盛り上がる時期です」
「例年通り開会式がありますが、今年も派手にするそうですね?」
「ええ。そうなんですよ。なんと! 今年はあの歌手のエリザベートさんに来てもらえることになっているんです!」
男性がそう言うと、女性は大袈裟な反応をして、
「ええっ!? そうなんですか!? それは楽しみですね!」
ふざけている。
なんて茶番をこの2人は繰り広げているのだろうと溜息を吐く。
「さて、美味しいものでも探しに行くかな」
そう思い、周囲を見渡してみた。
ん?
今、一瞬変な違和感を感じた。
魔力——では無い。
なぜなら、私は魔法を使うことが出来ないからだ。
では、この違和感はなんなのか。
私の持っている魔眼——
【猛禽眼】を使用する。
【猛禽眼】とは、魔眼の1つだ。
これを使用すると、瞳に猫のように瞳を囲むようにして、縦に昼白色の1つの筋が表れるのだ。
千里眼の様に遠くの物を見ることが出来たり、これを発動すると洞察力、動体視力が爆発的に上がる。
どれくらいかと言うと、国家騎士が身体強化の魔術を使って攻撃してきても見切れる自信がある。
寧ろ、私にはスローモーションくらいにしか思えないだろうと思う。
また、人の表情を読む力——
読心術の力を得られるのもこの力の特徴だ。
私の1メートル程先にいる赤髪の男の子。
ボロきれと言っていい程の服を着て、裸足で歩いている。
恐らく、貧困街の子供だろう。
どの国にも貧富の差は激しいなと思う。
特に、表では裕福な印象を受ける国であればあるほど、その貧富を隠したがる。
それは、国の恥だからだ。
だから表出てくる事は無い。
そして、その事実は『陰』となって消えていく。
確かに、国のイメージを良くするために必要なのかもしれない。
だからと言って、それが必要悪だとは私は思えないのだけれど——
話を戻そう。
どうも彼の様子が変だ。
周りの人間は真っ赤なドレスを着たり、翡翠色の素敵なワンピースを着たりと、お金持ちが多い中、1人だけボロきれのような服を着ている訳だから否が応でも目立つ訳だけれど・・・・・・
しかし、問題なのはそこじゃない。
服とかファッションの話ではなく、生理的な問題だ。
明らかに呼吸が荒いし、視線が定まっていない。
とても苦しそうだ。
そんな、危機的な状態であるのに誰も彼に近づこうとしない。
見た目が汚く如何にも貧困街の人間だからか。
それとも、この症状に気付いているからなのか。
それはそうだ。
私は心の中で溜息を吐く。
誰も自分に危害を加えられたくない。
みんな自分が可愛いのだ。
この自己愛主義者たちめ。
しょうがない。
私は彼に近づいて声を掛けてみる。
「貴方、どうしたの? 様子が変よ」
「な、なんでもないですよ。誰なんですか貴方は」
私と目が合わない。
それに、よく見ると彼の前歯は欠けていた。
溶けていると言った表現の方が正しいかもしれない。
歯が溶ける現象。
これは、魔術的な要因で起こることは無い(私もおねぇと一緒に勉強していたから、ある程度の医療魔術の知識はある。専門職ほどではないにしても)。
例外はあるかもしれないけど、私の知る限り無い。
生理的、薬術的、生物学的な要因でなら幾つか思いつく。
1.麻薬中毒の可能性。
これは、プッシュやスパイクなど麻薬には幻覚や幻聴などの作用を持つ薬が多い。今回の場合は、目線が合わないこととも合致するけど幻覚作用が見られないのが気になる。
初期症状の可能性が少なからずある。
2.麻薬と同等の効果をもたらすパラサイト生物の可能性。
別の言い方をすれば、寄生虫だ。これは非常に厄介で蟲使いなどに操られているとしたら、非常に不味いことになる。
パラサイト生物(昆虫)には、人の脳を食らったり、脳神経を支配し、体を乗っ取り、人を操ったり、魔力を吸い取って死なせたり、細胞を融合させて体を乗っ取ったりと、例を挙げたら切りがない程多くの種類の症状が存在している。
1.の麻薬中毒よりかは可能性が高い。今回の症状と一致する効果をもたらすパラサイト生物(虫)は確かに存在する。
3.特殊な効果のある変な薬物を飲まされた可能性。
薬術の知識があれば、作ろうと思えば幾らでも作れる。
これは、可能性が無限にあるので頭の端に置いておこう。
4.毒のある虫や植物、動物を食べた可能性。
ぱっと思いつく限りでも10はある。
対処法はどれも1つだけ。
解毒剤を飲んで安静にする事だ。
この4つが今ある私が考えうる限りの可能性だ。
可能性の高いもの順に並べたらこうなる。
2=4>1>3
無論、私の希望も入っているけど今の状況や彼の症状を考えてもこれが最も合理的な答えだ。
さて、次に私が取るべき行動は——
「病院。この近くに病院はありませんか」
そう。
病院を探す事。
私は道行く人に病院のある所を尋ねまくった。
何人かは汚いものを見る目で無視したが、1人の老人が私の質問に答えてくれた。
「それならこの近くにある」
「本当ですか!?」
この時の喜びようと言ったら、暗闇の中で光を見るかのような気分だった。
「あるにはあるんじゃがのう」
老人は、自慢の仙人のような立派なあごひげを撫でる。
次の言葉で私の希望は儚く消えた。
「しかしな、お嬢さん。そんなことしても病院は受け付けんよ。病院は高額な金がいる。お金のない貧困街の人間は病気を治す権利さえ無い。そのまま朽ちて死んでいくだけだ」
「そんな・・・・・・!!」
「残念だかね、お嬢さん。その反応からするに、アンタは外の人だと見えた。アクロポリスは夢のような場所だと思って来たのならそれはとんでもない勘違いだ。金を持つものが生き残り、無いものは死んでいく。ここはそういう場所なんだ。残念だが、その人を助けたいのなら他を当たった方がいい」
「くっ・・・・・・」
金の猛者め。
「くはっ・・・!!」
赤髪の少年がいきなり唸り声を上げて、仰向けに倒れた。
苦しそうにお腹を両手で抱えている。
このままではいけない。
ゾクリ、と背筋に冷たい感覚が走る。
このまま放っておいたらこの人の命が危険かもしれない。
こうなったら私とおねぇの部屋に運ぶしかない。
彼の右腕を私の肩に乗せる。
「あなた、歩ける?」
「あ、ああ。ありがとう」
おや?
意外と素直。
それとも、反論する気力もないのか。
どちらにしろ、安静にさせないといけない。
「今から私の部屋に案内するわ。いいわね」
彼はコクリ、と縦に1回頷いただけだった。
顔色も先程と比べて若干悪くなっている。
私と彼は人混みの中、目的地へと一歩一歩歩いて行った。
お願い。
間に合って頂戴。
急げ。
でも、慌てるな。
読んで頂きありがとうございます!
魔眼のお話も出せましたし、やっと薬術師ぽいお話が出来て少し安心してますw
次回のお話は姉のカミリアの視点でお話が続いていきます。
お楽しみに!




