表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/25

22.冷たくしたから、ホットココア


 風呂から上がり、ほかほかの体で脱衣所に出ると、そこにはうら寂しい光景が広がっていた。

 脱衣所の隅で、バスタオル一枚のジークフリートが体育座りをしていたのだ。

 唇が少し青い。


「……何してんのよ」


「リリーが出てくるのを待っていた……」


 ジークフリートは捨てられた子犬のような目で見上げてきた。


「バカなの? 死ぬわよ?」


「リリーに拒絶されたショックで、寒さなど感じない……」


「ガタガタ震えてるじゃない」


 リリアナは呆れて溜息をついた。

 過去の所業とはいえ、この真冬の空の下、裸同然で放置したのは少しやりすぎたかもしれない。

 ほんの少し、罪悪感がチクリと胸を刺した。


(ほんの少しね、ほんの少し)


「ほら、お湯はまだ温かいから。さっさと入ってきなさい」


「……いいのか?」


「許可するわよ。温まってきなさい」


「リリー!」


 ジークフリートはパァッと顔を輝かせ、浴室へと飛び込んでいった。


     ◇


 リリアナはリビングへ戻ると、キッチンに立った。

 冷蔵庫(魔道具)から牛乳を取り出し、棚からカカオ豆(取り寄せた)を取り出す。


「ちょっと悪いことしたしね。埋め合わせくらいは」


 リリアナは指先で空中に文字を描く。


『粉砕』


 カカオ豆が一瞬で微細なパウダー状になる。

 それを鍋に入れた牛乳に混ぜ、再び文字を描く。


『加熱』


『混合』


『甘味』


 ふわりと甘く濃厚な香りが立ち上った。

 特製ホットココアの完成だ。


 マグカップに注ぎ終えた、ちょうどその時。


 バーン!!


 リビングの扉が開き、ジークフリートが戻ってきた。

 湯気が立っているが、あまりにも早すぎる。


「ただいま!」


「……早っ!?」


 リリアナは目を丸くした。

 入ってから一分も経っていない気がする。


「烏の行水かよ。ちゃんと洗ったの?」


「洗った! だが、リリーがいない広い風呂は、ただ寂しいだけだった……! だから速攻で上がってきた!」


「……あっそ」


 どこまでもめんどくさい男だ。

 リリアナは呆れつつも、手に持ったマグカップを差し出した。


「はい」


「ん? なんだこれは」


「ココア」


 ジークフリートは不思議そうに茶色の液体を受け取った。

 温かい湯気が、彼の冷えた顔を撫でる。


「……なぜ?」


「あんたが外で冷えてたから。温まると思って」


 リリアナはプイと顔を背け、ボソッと言い足した。


「あと、私がちょっと『冷たく』しすぎたから。……そのお詫び」


「え?」


「だから! 体が『冷たい』からココア! 私が『冷たくした』からココア! ……って、なんかダジャレみたいになったけど! 違うし! 深い意味はないし!」


 リリアナは一人で顔を赤くして早口でまくし立てた。

 ジークフリートは数秒ぽかんとした後、愛おしそうに目を細めた。


「……ありがとう、リリー」


 彼はマグカップに口をつけ、ゆっくりとココアを飲んだ。


「うん……甘い。すごく温かいよ」


「ならよかったわね」


 リリアナはコタツに戻り、ごろんと横になった。

 ジークフリートもその隣に座り、幸せそうにココアを啜っている。


「ワフン(やれやれ)」


 その様子を見ていたポチが、呆れたように一つ鳴き、コタツの中に潜り込んだ。

 外は寒いが、離れの中は甘い香りと温もりに満ちていた。

【お知らせ】

※2/5(木)


好評につき、連載版、投稿しました!



『【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない』


https://book1.adouzi.eu.org/n8005ls/


広告下↓のリンクから飛べます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
良かったね( *´艸`)やっと甘味が投入されましたw♡ ところで!!! ツンデレのリリーたんがめちゃくちゃ(//∀//可愛ぇえ♡)
旦那様もったいない。 此処は、リリィの残り香が……!!とスーハーするところだぞ! (やめたれ)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ