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25話 リアにできる事

「皆さ――ん!水も食料もありまあります。どうか、落ち着いて下さい!」

「病人だ!誰か手伝ってくれ!」

「医師は!医師はいませんか――?」


 夜になり、王城の混乱は酷くなっていた。

 王都の民が、頑丈な石造りの内壁の中を目指し、避難をしてきたからだ。


 東の悪しき竜は、未だ討伐されておらず、都の東の外壁付近で、王国騎士団と交戦中との事。その叫び声たるは恐ろしく、空気を切り裂くほど。姿は見えずとも、地面を揺るがす存在に、人々は心底脅えていた。


 王城の門は開かれ、松明で照らされた内壁の中は、避難民で溢れていた。隣にある学園に集まった生徒達の、中でも戦闘に自信の無い有志達が民を導き、藁の寝床を用意するまでに至ったのは、夜も更けた頃。

 王城を出たリアも、何か出来ることがないかと、皆に混じって炊き出しのお手伝いをしていた。

 

 沢山並んだ大鍋の中身は温かい具だくさんシチュー。明日の朝ごはんだ。

 リアは、船のオールの様なデカい棒で、ぐるぐると鍋の中身を混ぜていた。

 

「あ……あの。リリア様。よければ、こちらの鍋もお願い出来ませんか?」

 学園の生徒たちは皆、とても礼儀正しくて、町娘なリアにも敬語で話しかけてくれる。皆さんめっちゃ腕をさすってるけど。

「うん!次はそっちね!任せて!」

「ありがとうございますっ!!」

 感涙。そんなに嬉しいの?


『かなりの数が集まりつつありますね……ん?皆さん。お気持ちは分かりますが、余計な物を混ぜてはいけませんよ』

 アンスールはリアの頭の上で情報を集めながらも、周囲の監視を怠らない。リアの手に乗っていたウルさんが、ギクリと体を固めた。

『余計ではない!ちょっとスパイスを混ぜるだけだ……な、皆の者!』

『『そうだそうだ――』』

 鍋を覗いていた妖精さんたちの怪しい返事に、アンスールが腕を組んで舞い降りて来た。

 

『意図せず皆が魔法を使えば、混乱が酷くなると思うのですが?』

 それは、危ない!

『しかしなぁ、アンスール。人間は弱いぞ?』

『いいえ、よく見なさい。この者たちはまだ、我々の力を必要としてませんよ』

 

 リアは鍋を混ぜながら、辺りを見渡した。皆、不安がってはいるものの、お互いを助け合い、落ち着いて休めるまでに至っている。これは凄い事だと思う。

『確かにな……了承した』

 妖精さん達の顔には、少し笑みが浮かんでいた。

 

『うーん。でもさ、そろそろ決着がついてもいい頃だと思うんだけどな』

 リアの肩に乗り、東の方を見ていたライゾが心配そうに呟いた。

 

 高台にある王城からは東の空が良く見える。魔法なのか、時折、低く落ちる稲妻の黄色い閃光や、何かが燃えているのか、上がる煙が赤いモヤの様に見えた。

 騎士様や魔道士様、学園の生徒の皆様が無事に休めるのはいつになるのだろうか。

 オセルやティール爺様、一緒に行った皆も、皆、無事だといいのだけど……。


「あら、リリア。ひとりで混ぜてるの?凄いですわ……まったく、食事班の皆さんは不甲斐ないですわね」

 モモリンも忙しそうに駆け回っていて、テキパキと同級生に指示を与えていた。

「モモリ。もう出来てると思うけど、どう?」

「ええ、そろそろ良さそうね。……あ、そこのあなた、火を消してくださる?……あなたは、明日の分の薪を運んでおいて下さる?……あっ、そこ!水は貴重なので捨ててはいけませんわ!」

 リアなんかよりも、ずっと凄いと思う。


「リリア――!ちょっとだけ、いい?」

 こうやって、返事も待たず、いきなりリアを抱きしめるのはジェイド様だ。ずっと避難民の野営地を周っていて、民に励ましの声をかけ続けてるんだけど、時折戻って来ては、こうやってリアをぎゅっと抱きしめるのよね。

 

「子供たちはもう寝たの?」

 さっきは子供たちを宥めながら、藁のベッドに誘導してたっけ?

「ええ、眠りについたわ。まるでキャンプよ。遊び疲れたのでしょう」

 子供たちが怯えていないのは、大人たちが頑張ってる証拠。

 

「お家に戻る時は、がっかりするかもね!」

「ええ、そうね。そうなるといいわね」

 ぎゅぅぅ――。

 リア、何か癒し成分、出てる?

 

「……ジェイド様。少し宜しいですか?」

 そんなジェイド様も、騎士様に呼ばれてすぐに行ってしまった。

 リアは赤く燃える東の森を見る。

 

 リアにできる事は何だろう……。

 そう思った時、にわかに辺りが騒がしくなった。


「カレン・デルオニールよ……運ばれたみたい。どうしたのかしら」

 モモリが手を止め、背伸びをした。そうしなければ見えないほど、人が集まって来ていたのだ。

 

 中央の階段を少し降りた先にある礼拝堂に向かって、数人の騎士様が駆け込んで行くのが見えた。その最後の1人が抱えるのが、派手な色のドレスを着たカレンだった。


「戦場に行くのに、わざわざ深紅のドレスに着替えるのは、彼女くらいでしょうね。行ってみましょう」

 そう言うモモリンは、儀式の時に見たドレスのままだ。腕はたくし上げ、裾は泥だらけで、無惨な姿になってるけどね。


 礼拝堂を覗くと、まるでお葬式の様な光景が広がっていた。礼拝堂の正面、フェオ像の前のテーブルの上にカレンが乗せられ、その周りを皆が囲んでいるのだ。辺りにはロウソクが立てられ、そこだけが静寂な空気に覆われている様に見えた。人垣の後ろから覗くと、ジェイド様が、人垣を割ってテーブルに駆け寄ってた。

 

「何事ですの?」

「ジェイド様。カレン・デルオニール嬢がお倒れになったのです!今、医師を呼ぼうかと……」

 人の良さそうな騎士様が振り向いたところで、皆が道を開け、リア達も避けた。

 

「呼ばなくても来ているようですね。王宮医師のトランセッタ様が……」

 見るからに貴族って格好をした、青年が慌ててカレンの方に駆け寄てきた。かなりの美青年だ。

「カレン、大丈夫か!?……今、見てあげよう」

 その、白髪ロン毛メガネの美青年はそう言うと、カレンの胸に手を置いた。カレンがピクリと動く。ちょっと眉も寄ったような?

 それをジェイド様が見逃すわけもない。

 

「極めて健康そうよ。大方、怖くて気絶のフリでもしたのでしょう」

 ジェイドお嬢様、辛辣。

「いえ、力を使い果たしたのでしょう。ここは寒い。そこの騎士、我が屋敷へ!」

「……え?はい!」

 医師の超適当な診察に、人の良さそうな騎士様も戸惑い気味。

 しかし、ジェイド様はカレンの方に手を伸ばす騎士様を片手で止めた。

 

「その辺で休ませておきなさい。他にも病人はいるわ。起きたら診て貰えますし、彼女が本当に聖女ならば、その方がお喜びになるでしょう」

 ここにいる病人は主に、避難中に気分の悪くなった人達だ。精神的なものはヒールでは治せない。ベルカナさんはとても申し訳なさそうにしていたのよね。

 

「あ……私なら大丈夫……ですわ」

 その時、カレンがタイムリーに目を開けた。ちょっと焦っている様子。

「おお!カレン!」

 医師が手を貸し、カレンは体を起こした。そしてそのまま医師に抱きつき、カレンは泣き始めた。

「お兄様ぁ。竜が……酷く怒っていたのよ。カレン、宥めようとしたのだけれど、力が足りなくて……ごめんなさい!」

 

「……そうなの?」

「ええ。カレン様は遠くから竜に向かって両手をかざしておいででした。その直後、倒れられまして」

「手を?効果は?」

「…………残念ながら」

 ジェイド様と騎士様は、何か言いたそう。


 でも、ごめんなさい!と連呼するカレンの周りでは、慰め合戦が始まっていた。

「謝ることはない。カレン、お前は頑張ったんだ。さあ、もう屋敷に戻って休んだ方がいい」

「私たちの為に、わざわざ危険な前線にまで足を運ん出くださっただけでも、ありがたいのですわ」

「聖女様……どうか、お気を落とさずに!」

 周りの人々が口々にカレンを宥めるの。

 

 そう、カレンの磨き抜かれた泣きの演技を見れば、誰もが胸を打たれて、慰めずにはいられない。

「カレン……」

 騙されて殺されたこの私でさえ、何とかしてあげたいって思っちゃうくらいね。

『アホか……お前まで騙されてどうする』

 ライゾ、危なかったです!リアはゾクリと背筋が粟立つのを感じた。

 

「……ところで、オレーリア様は今、何処にいるの?彼女も最近、回復魔法が使える様になったって聞いたのだけど……」

 慰めの言葉も尽きた頃、ひとしきり泣いたカレンは、目を擦りながら顔を上げた。

 

「オレーリア?そういえば。見てませんね」

 ジェイド様が人の良さそうな騎士様を見る。

「東門でも見ませんでしたね」

 カレンは口元を隠した。

「そんな!自分だけ屋敷に逃げ隠れてるとか?王国の危機だと言うのに、ありえないわ!!」

 王国の危機!?

 人々がざわめいた。

 

「カレン、この混乱の中よ。誰がどうしているかよりも、今、集まった者達で、出来る事をすべきよ」

 ジェイド様が鬱陶しそうに眉をひそめた。でも、広がり始めた動揺は収まらない。

 

「でも、回復魔法の使い手はとても希少なのよ?皆が必要としているのに、手を差し伸べないなんて、酷くない?竜はすぐそこにまで迫っているのに!!」

 竜が!?

 もう近くにいるの?

 

 人々が恐怖に息を飲んだその時、騎士の1人が、人を割って、礼拝堂に入ってきた。ジェイド様を見つけては、駆け込んで来る。

「ジェイド様!東門より、怪我人が移送されて来ました!どちらに運び込めば……?」

 怪我人が!?

 人々の押し殺した悲鳴に、駆け込んで来た騎士様がたじろぎながら、ジェイド様に顔を寄せた。

 

「こちらに聖女様がおられるとお聞きしたので……すいません」

「タイミングが悪かっただけよ。ご苦労さま、こちらへ」

 ジェイド様はため息を着くと、声をはりあげた。

 

「今すぐ怪我人を玉座の間に!動ける者は手伝ってちょうだい!!……カレン、治療をお願いしてもいいかしら?」

「ええ。勿論ですわ!」

 ニヤリ。隠しもせず、満面の笑み。

 でも、急に慌ただしくなった現場で、それを見た者はいなかった。

 

 それからはリアも大忙し。一応妖精さん達を隠してから、怪我人が運ばれた玉座のあるホールと王宮を行き来しては、治療に使えそうな物を運んでいた。

「リア、雑用をさせてごめんなさいね。無闇に人を王宮に入れる訳にはいけなくて」

 ジェイド様?リアはいいの?

 

 そんな中、清潔な布を抱え駆け回るリアの腕を、唐突に誰かが引いた。

「キャッ!」

 リアはガクンと体勢を崩して、手を着くまもなく、石畳の上に盛大に転がった。抱えていた清潔な布が散らばる。

 

 折しもそこはホールの中央。そこらにいる人々の目が集まっていた。

 しかし、人々が駆け寄ったのは、転がったリアではなく、美しく横座りをキメた深紅のドレスの彼女、カレンの方だった。ちなみに、悲鳴をあげたのも、引っ張ったカレンの方だ。

 

「聖女様!大丈夫ですか!?」

「あなた!危ないじゃない!!」

 さっきまでリアに、お手伝いありがとうって御礼を言ってた人達が、カレンに駆け寄るのを、リアは痛む腕をさすりながらポカンと見ていた。

 え?リアが悪いの?

 でも、疑問に思っても仕方がないのだ。聖女様が正義だから。

 

「この子が急にぶつかってきて……でも大丈夫ですわ。ちょっと足を捻っただけですから」

 カレンが涙を零した。

 ……このままじゃいけない!!リアは思い切りその場に土下座した。

 

「ごめんなさい!!」

 こういう時は、速攻、謝るに限る!リアのせいじゃなくてもね!

 これは前世の経験から学んだ事。人の関心は長くは続かない。謝ればその分、早く解放されるはず!


 リア、今世では絶対にカレンに楯突く様な真似はしません!だって、リアが今守るべきなのは、自分のプライドじゃなくて、リリアと妖精さんたちだから。

 それにね……。

 リアは辺りを見渡した。どの人も疲れた顔をしているのよ?これ以上、負担をかける訳にはいかないじゃない。

 

 でもカレンは、そんな人たちの手を借りて立ち上がると、イッキイキとした目でリアを見下ろした。

「皆の邪魔をして……怪我人を増やす様な真似だけはしないでちょうだいね」

 優しい口調に、侮蔑の眼差し。さすがカレン。異世界に来ても、ブレない!


 リアはペコペコしながら膝まづいて急いで布を拾った。

 コケた時に下にした右側全般が痛いけど……まあ、こんなの死ぬのに比べたら全然オッケー!公開処刑されなくって良かった!……って思ってたんだけど?

 カレンは、それだけでリアを解放してはくれなかった。

 

「あ、そうだ!あなた、オデール伯爵家の庭師だったわよね?今すぐ走ってオレーリア・オデールを呼んで来て下さらない?」

 今すぐ?……走って行ける距離だったっけ?街の方だから、馬車でもちょっとかかったよね。

 このムチャぶり、もしかしてリアを追い出したいんですか?

 リア、久しぶりにロザリー婦人を思い出しました。

 

「お待ち下さい!オデール伯爵家のタウンハウスは、東門の方向。現在、魔物も溢れて出しております。この小さき娘が向かわれるには、少々危険かと!」

 果敢にも止めてくれたのは、カレンを抱えて来た、人の良さそうな騎士様だ。カレンは彼を気に入っていたのだろう。悲しそうな顔をした。

 

「騎士様が行っちゃうの?いつここにも、魔物が襲って来るかもしれないのに……私たちを守っては下さらないの?」

 カレンは騎士様の腕にすがりついく。

「これ以上怪我人が増えたら……カレン、また力を使い果たして倒れてしまうわ。まだこんなにも、苦しんでいる人がいるのに……」

 涙をうかべ、観客に訴えた。観客……。いよいよ芝居じみてて、草。

「しかし……」

「邪魔しか出来ないこの子でも、今なら役に立って貰えるわ……そうでしょ?」

 

 するとどうでしょう。人の良さそうな騎士様は、納得した表情でリアを見たのです。周りを見ても同じ顔。

 なるほど、ここにいる人たちは、リアがどうなろうと、構わないらしい。

 

 ――私の事を大切にしてくれる人なんて、もう何処にもいないのよ。


 いやいやリリア。このくらいの事で、絶望感、醸し出してどうするの!

 

 今は回復魔法が使える人が必要だから、誰かが行かなければならないのよ。

 リアは、近くにいたおばちゃんに布を渡した。

「これ、お願い出来ませんか?行って来るよ」

「あ……あんた、大丈夫なのかい?」

 優しいおばちゃんね!リア、頑張るよ!

「うん、足は速い方なの!大丈夫!」

 魔物さえいなければね。

 

 リアは速攻踵を返した。これ以上、カレンに関わると、暗い感情が溢れだしそうだし。

 正面の階段を駆け下り、ホールを出ると、門を目指した。


 東の空には戦闘の光が瞬き、避難してきた人達は石畳の通路の端の暗がりに、配られた毛布に身を丸めて目を閉じていた。皆が眠れない夜を過ごしてる今、少しでも手伝いができるのなら、それでいいじゃん?

 そう思えば、痛かった足も腕も気にならなくなった。

 

「リリア様ぁ――!どちらに行かれるのですか――?」

「我々を見捨てないでぇぇ――!」

 途中、食事班の生徒たちだけが、リアを惜しんでくれていた。ん?……他にもいたね!!

 

『人間は弱い癖に、何故、弱者の気持ちが分からんのだろうな!アホじゃないのか?』

『あれが聖女だと?笑わせるな。どいつもこいつも口車に乗せられてやがって……誰一人として疑問を持たぬとは、バカばっかだな!』

 ライゾとイングが嘲笑っております。でも、リアが何も出来ないってのは、本当の事だから。

 

「ねえ……妖精さん達も、リアよりもっと強い人間に付いた方が良かったんじゃない?そしたらもっと、自由に動けたでしょうに」

 イーヴさんやルーカス殿下。カレンはちょっとヤバいけど、オレーリアとかにくっ付いていたら、じゃんじゃん力をふるえたかもしれない。そう思うと、申し訳なくなってきた。

「ベルカナさんだって、皆を治療したかったかだろうに……ごめんね」

 リア、追い出されちゃった!

 

 でも、意外にもベルカナさんから返ってきた言葉は、笑いを含んでいた。

『リア、ご期待に添えず申し訳ないのだけど、私ね、そんなに良い妖精じゃないの。カレンの姿を見た途端、震えが止まらなくて隠れたくらいよ。だから大丈夫、リアから離れたりしないわ』

「いや、それ、全然大丈夫じゃないから!ベルカナさん、体の不調はちゃんと言わなきゃダメよ?」

 思わずツッコんだら、もっと笑われた。

『ふふっ、リアは優しい子ね』


『リア、我々が何故リアと一緒にいるのか、忘れてはいませんか?』

 突然アンスールに聞かれ、リアは首を傾げた。

「ん?妖精が見えるからでしょ?」

『それもありますが……リア、貴方は私たちを心から信じ、慈しんで下さいます。それが私たちの力となる事をお忘れですか?』

「信じるって。そんなの、当然の事じゃない」

 すると、ベルカナさんが笑う。

『ふふ、リアにとっては当然の事なのね。だからかしら、リアの傍にいると、なんでも出来る気がするのよ。きっとみんなもそうよね?』


 すると途端に、リアのポッケから妖精さん達が溢れ出した。リアは慌てて近くにある礼拝堂に駆け込んだ。

「みんな、どうしたの?」

 

『リア、なに凹んでるのよ!私たちがいるじゃない!』

『私はリアじゃなきゃ嫌よ!』

『イースはリアが助けたい者に手を貸してるだけ。それを忘れないで』

 みんなが慰めてくれてる。嬉しい!

「みんな、ありがとう!」

 お礼を言うと、ギューフさんがリアの頭を撫でてくれた。

 

『ふふっ。僕はそんな優しい君だから、ギフトを授けたいんだ。さあ、暗い顔はやめて。君なら、この避難所も、優しさの集う場所にできるよ』

「ギューフさん、それいいね!リア、神様にお願いしてみるよ!」


 リアは人気のない礼拝堂を進むと、フェオ像の前で両手組み、頭を下げた。

「神様。どうか、お願い!ここにいるみんなが、穏やかな眠りにつけますように!精霊の加護を下さい!」

 ギューフさんのギフトは神様の声。


 ――苦しい状況をものともしない。これも立派な変革の力と言えよう。


 もう驚かないよ!ほら、早速神様の声に応え、精霊達がリアに集まって来た!って……変革?

 そうか、今の状況を変える力。ダエグさんの力ね!

 リアはいつもの様に思い切り精霊を吸うと、外に出て願いを夜空に放った。

 


「ママ……。お星様が降ってきたよ」

「精霊かしら……素敵ね」

「ん?急に体の痛みが……フェオ様の加護か?」

「急に暖かくなった?とても心が休まるわ」

 人々の不安は不思議と消え去り、優しい光に包まれた様な静かな眠りが、王城を包んだ。

 

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