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21話 ドレス

 翌朝、ベルカナさんのお陰で熱は下がったみたい!

 リア、ちょっとダルいけど、絶好調!

 置かれてあったユルい服に着替えて、早速、みんなにお礼のお菓子を作る事にした。

 

「リリア!もう起きていらっしゃるの?」

 お菓子工房クッキーの扉を開け、驚きの声を上げたのは、ふわふわピンク髪のモモリ。お菓子の材料を確認するリアの元に慌てて駆け寄って来た。後ろには護衛のアンリもいる。

 

「昨日はあんなに熱がおありでしたのに!……まだ寝てないとダメです!!」

 リアの腕を取り、ベッドに引っ張ていく。あ、もしかして!

「この服はモモリが?ありがとう!」

「御礼なんていいのですわ。昨日のリリアの憔悴したご様子……モモリには見えませんでしたが、今でも胸が痛くなりますわ。護衛の隠密騎士が裏切っていたなんて!」

 護衛……誰の?いつか毛布をくれた彼じゃないよね?


 あ!それよりリア。モモリの肩にいつか保護した妖精さんを見つけました!

 手を振る様子はとても元気そう!リアは嬉しくて胸がいっぱいになった。きっとモモリは立派な魔法使いになるに違いない。


「まあ、リリア。わたくしはそんな可愛い笑顔に絆されたりしないのですわ!さあ、大人しく横になってくださいまし!」

 そうは言っても、このまま引き下がる訳にはいかない。だって、昨日は妖精さん達に沢山助けられたし、リアを探してくれた人たちもいたから。モモリンだって、こんなに心配してくれているのよ!


「モモリ。リア、どうしても皆に御礼したいんだよね。簡単なのにするから……ほら、アンリも手伝ってくれるみたいだし?」

「力仕事は任せとけ!リリア、魔法の付与を頼む!」

 欲望に忠実なアンリが、慌てて木のボウルを抱えるから、リアは笑ってしまった。

「お兄様まで……仕方ありませんね。では、わたくしにも、作り方を教えて下さる?リリアのお菓子は美味しいって、騎士様の間で好評なのよ」

 モモリはそう言い、クスリと笑った。


「じゃあ、今日はプリンを作るよ!」

 リアが笑えば、妖精さん達が次々にリアの杖から飛び出して来る。

『ちょうど甘いものが欲しいと思っていたところです』

『イースの出番はある?』

『リア、もちろん今日もオーブン使うよね?』

 リアは頷くと、卵をモモリに渡した。

「リリア!凄いですわ!頷くだけで、オーブンに火が着きますの!?」

 

 まずは、卵液を作ります!

 モモリがボウルに卵を割り入れると、アンリがそれを混ぜる。あまりに力いっぱい混ぜるから、イングとウルさんが面白がって、次々と精霊を投げ込み始めた。

 

『パワーだ!そうだ!もっとパワーだ!!』

『はははっ!もっと混ぜまくれ――!』

『2人共、そこまでにしておけ!……本当に仕方ない奴らだ』

 オセルが止めてくれたから、溢れずにミルクと砂糖を加えられたけど、これは穴だらけのプリンになるに違いない。

 

 出来上がった卵液を、カノと作っておいたカラメル入りのカップに流し込む。これがプリンの元だ。後は、ラーグに鉄板にお湯を張って貰って、プリン液入りのカップを浮かべてからオーブンへ!

「カノ、弱火でじっくりお願い!」

『了解!』

 後は、すが出来ない事を祈るのみ。

 モモリが用意してくれた朝食のサンドイッチを食べながら、リア達は焼き上がりを待つ事にした。

 

「ところでリリア。今日の夜会には行かれますの?」

「夜会?」

「ええ。毎年この時期、私たちに魔法を与えて下さった精霊王様に感謝を込めて、精霊祭りが行われますの。その前夜祭として、王城はじめ、様々な場所で夜会が開かれますのよ」

 前夜祭?クリスマスパーティ的な感じかな?

 

「舞踏会としては後夜祭の方が盛大ですが、前夜祭では、夜会の前に国王様と精霊王様が、聖なるヤドリギの下で交流いたしますの。とても優雅で美しい儀式ですのよ。リリアもぜひ参加すべきですわ」

「国王様と精霊王(フェオ)が!?」

 莉亜の世界ではそれ、カップルイベントだけどね。ヤドリギの下でキスすれば、幸せになれる的な?


『俺も見てみたいな』

 ライゾは莉亜の世界の行事を知っているのだろう。ニヤニヤしてる。

『それは人が勝手に始めた事だな。恐らくフェオは初耳だろうが……興味がある。リア、フェオを誘うから、連れて行ってはくれないか?』

 オセルさんのお願いよ!!これは叶えるしかない!

 

「ちょっ、モモリ!勝手に誘うんじゃない!リリアは……」

 焦った声に振り向けば、何故かアンリが顔を青くしていました。

 

「何ですの?お兄様。リリアの周りにいる殿方は皆、これだけの恩恵を受けているのにも関わらず、リリアにドレスのひとつも贈れないのかしら?」

「いや、そういう問題じゃ……」

「そういう問題です!お兄様は、リリアが、年に1度しかない精霊祭りを楽しむことなく、この地下工房で1人寂しくお過ごしになる事になってもいいと仰るの?」

「いや、それは俺がエスコートすればいいんだけど……いや、それはそれで殺されそう……。う、まいったな……本当に……ごめんなさぁぁぁ――い!」

 そう言い残し、アンリは半泣きでクッキーを退場して行きました。


「本当にダメな兄でお恥ずかしい限りですわ。でもこれで、殿方らが重い腰を上げてくれるとよいのですが……」

 モモリは、その殿方らにお相手がいる事を知らないのね。きっとアンリにもイイ人がいるんだよ。

 

「あ、でも……。ドレスを作るのに、時間が足りなかっただけかも知れませんわ!……私ったら、早とちりを」

「え?ドレスって、基本オーダーメイド?」

 一体いくらするものなんだろう。夜会……怖い。

 

「リリアはスタイル良すぎだし……。もしかして美しいリリアを誰にも見せたくなくて、ワザと用意しないとか?……有り得ますわね……」

 モモリン。リアを見る目に、謎のフィルターかかってるから。


「あのね、モモリ。リア、儀式は見たいけど、夜会はちょっと……。街とか見て周る方が好きかな。初めてのお祭りだし?」

「そうなのですね……。学園の皆さんもいらっしゃるし、一緒に行きたかったのですが」

 それ、カレンも来るやつよね。ベルカナさんを保護したばかりだし、今はちょっと様子を見たいかも。。

 

「なるほど。分かりましたわ」

 モモリは、キッと顔を上げた。

「リリア。そう言う事でしたら、わたくしが腕によりをかけて、目立たない服を用意させますわ。ぜひ、精霊祭りを心ゆくまで楽しんで来て下さいまし。護衛も、お兄様がいれば安心ですから」

 何故かお忍び的な発想に至ってますね。可哀想に…アンリは護衛に任命されてるし。

「くれぐれも無理はしないで下さいましね」

「うん!ありがとう。モモリ!」

 有無を言わせない眼力に、リアは大きく頷いた。

 

『リア!そろそろじゃない?』

 あ!そうだ、プリン!

 リアはカノの声に応えて、オーブンからプリンを取りだした。そして、イースに冷却魔法をお願いする。

『イースに不可能はないの。ほらね』

 柔らかさを残したまま凍らせられるとは!さすがイース!これですぐに食べられるよ!

 さあ、お待ちかねのデザートタイムだ!


「リリア!これ、とても美味しいわね!」

『リア、俺様は毎日これでもいいぞ!』

『この食感、堪らないですね』

 ライゾはともかく、アンスールが目を潤ませながら、小さな木のスプーンでプリンを口に運ぶ姿は、何故かいけないものを見ている気分になる。

 プリンの出来はそこそこ。だけども、妖精さんの効果なのか、最高に美味しかった。

 

「リリア、残念ですが、モモリはこれで失礼致しますわ。精霊祭りの儀式に参列の為、準備が必要なのですの。これでも貴族の娘、義務は果たさないといけないのですわ」

 聞けば、今日は学園もお休みだと言う。この国の祭日なんだって!ロザリー婦人の屋敷にいた時は、休みなんてなかったから、知らなかったよ。


 モモリは明日も、東の悪しき竜を封印する儀式に参列予定だとの事。とても多忙なのにも関わらず、リアの様子を見に来てくれるなんて、とても尊い。

「モモリ、本当にありがとう!」

「お礼には及びませんのよ。リリアの元気な姿を見たくて勝手に来ているだけですから」

 

 また様子を見に来てくれるというモモリを見送ると、リアは妖精さん達のプリンを精霊界に送り、残ったプリンはフェオに預けた。

『必要な時は、何時でも手を突っ込んで頂戴ね!』

 なんて便利なの!?


 後は、精霊祭りの始まる夕暮れ時まで、モモリに言われた通りに、ベッドで丸くなる。

 時間を気にする家族もいないし、ドレスも届かないから気楽でいい。



 ――そう、期待しなければいいの。そうすれば、がっかりする事もないから。


 リリアの声が頭に響く。


 何を期待するの?

 今が最高に幸せなのに。


 ――それでいい。過去の記憶なんてじゃまなだけよ。失ったモノは戻らないから。


 ふと、可愛いドレスを着て街を歩く、幼いリリアの記憶が頭をよぎった。両の手を引くのは両親の大きな手。前を行くのは、お兄様だ。

 皆、笑顔で……。


「置いて行かないで……」

 リアは夢の中で、必死に手を伸ばしていた。


 

 ちょっと寝ただけで気分はスッキリ!

 リアはベッドサイドに置かれてた、町娘的な、控えめながらも、可愛いらしいワンピに着替えた。足元には……おお!ブーツも用意されてある!どれもめっちゃ可愛いんですけど!!

 きっとこれはモモリが用意してくれたに違いない。素敵!!

 リアはモモリンに感謝の祈りを捧げると、ブーツを履いて、ワクワクしながらクッキーの扉に手を掛けた。

 

「お!リリア。出かけるのか?」

 扉の向こうにはアンリが立っていて、リアを見るなり、声を掛けて来た。アンリは今日は仕事なのか、騎士様の服を着ていて、何だか別人みたいにかっこいい。


「うん!リア、精霊祭りを見に行こうと思うの!」

「お、それなら、街がいいぞ!ちょっと体制を整えるから待ってくれ。案内するよ!」

「いや、アンリは仕事でしょ?リアなら1人で大丈夫!先に儀式を見に行きたいし」

「儀式……。なあ、街に行かないか?」

「……」

 なんかこう、やたらと街を推すよね……。

 

「アンリ、そういえばプリン、渡してなかったね。いつも、リアを気にかけてくれてありがとう!」

 リアは精霊界ポケットからプリンをひとつ、取り出し、アンリに差し出した。アンリは速攻受け取ってテーブルにつく。

「まじ?ありがとう!……でも、儀式には行かせないぞ」

 スプーンで指差された!……正直者め。儀式に何があるの?気になるじゃん!

 

 リアはアンリの隣に座って、しゅんと俯いてみせた。

「そっか、残念。楽しみにしてたのに……。でも、リアには、煌びやかな儀式なんて、見る権利もないのよね……」

 リアが目を伏せると、アンリが悶え始めた。プリンを食べる手も止まっている。


「ああ、クソっ!わかったよ、一緒に行こう!」

 勝った!

「ありがとう!アンリ!」

 ころりと表情を変えたリアに、アンリはため息をついた。


「はぁ……リリア、意外に逞しいんだな。安心したけどな」

 アンリは吹っ切れた様に笑顔でプリンを食べてから、リアに手を伸ばした。

「じゃ、行くか?……でもリリア。誤解はするなよ。ルーカス殿下もイーヴ様も仕事なんだから」

「うん?」

 何故ここで2人の名前が?

 


 前夜祭の儀式会場は、王城の入り口付近にある礼拝堂で行われていた。とても荘厳な石造りの建物で、王宮関係者や王城に隣接する学園の関係者にも広く開かれているという。

 でも、本日、中に入れるのは貴族様だけ。リアの様な、ちょっとコネのあるだけの庶民は、外からの観覧だ。

 

「凄い人だかりだな。俺、いつも中だったから知らなかったよ……リリア!何処に?」

 こんな時は小さい体が役に立つ。リアはあっという間に人だかりの間を縫って、最前列へ!

 礼拝堂の正面を、無事ゲットしました!


 礼拝堂の大きな扉はフルオープンされていて、1番奥にある精緻なステンドグラスまで、しっかりと見えた。夕暮れ時な事もあって、礼拝堂の中を夕日が華やかに輝やかせ、とても美しい。

 ステンドグラスの前には、大きくてちょっとゴツイ女神像が置かれてて、手にはヤドリギが掛けられていた。

 

 厳かな空気の漂う中、司教様っぽい格好をした、ちょっと線の細い紳士がよろりと立ちあがった。美しい女性の手を借り、女神像の前に進んで行く。そして、女神像の前に膝まづき、像の足にキスをした。

 え?キスするとこ、そこ?

『きゃぁぁぁ!素敵な紳士だこと!フェオ、男冥利に尽きるわぁ!』

 フェオが出て来て、悶えております!

 ……これが儀式。なんか複雑な気分よ!

 

「……これより、常日頃我々を見守って下さる精霊王に感謝の気持ちを込め、フェル王国国王、アルベルク・フェルが精霊祭りの開催を宣言する!皆に精霊王に祝福のあらん事を!」

 どうやら、この紳士がこの国の王様だったらしい。フェオったら、罪な男ね!


 開催が宣言されると、礼拝堂の中の椅子に座っていた貴族様達が、次々に立ち上がった。男性が女性を優雅にエスコートし、フェオの像の前に行くと、膝まづき挨拶をするの。あ、オデール伯爵もロザリー婦人と出席してる!

 

「フェオって慕われてるのね」

『その昔ね、戦いで穢れてしまったこの地を元の状態に戻す為に、精霊界にしかいなかった精霊達を、この世界に放とうって皆で決めたの。たまたまアタシがそこにいただけで、こんな像が建っちゃってね……』

 恥ずかしそうに話すフェオ。やっぱ、インパクト……象徴って必要よね!……ん?

 

 リア、次々に前に出る貴族様の中に、モモリを見つけました!王様と同じくらいお年を召した紳士にエスコートされています。ピンクのふわふわのドレスがめっちゃ似合ってて可愛すぎる!!

 

 なるほど。優雅で美しい光景ね。

 美しく着飾った貴族たちが、一堂に会する機会なんて、滅多に見られないのだろう。……と、周囲の観客がどよめき始めた。


 あれ?今、立ち上がったのって、ルーカス殿下じゃない?その腕には、超ド派手な赤いドレスを着た赤い髪のオレーリアが!

「ルーカス殿下も、ようやくお相手を決められたのね」

「オデール伯爵令嬢とは!オデール伯爵家は第1王子派ではなかったのか?」

 ルーカス殿下は第2王子。勢力争いの匂いがします。


 それでもルーカス殿下は、やっぱりカレンじゃなくて、リアであるオレーリアを選んだのね。

 っとと……。リアは、慌ててフェオをポケットに押し込んだ。

 そう、その後ろにカレンの姿が見えたからだ。

 

 ウエディングドレスを思わせる、白を基調にした繊細かつ豪華なドレスを着たカレン。その手を引くのは、なんと!イーヴさんだ!!

 うわぁ……儀式用の騎士服姿のイーヴさん。かっこよすぐる!でも、まだちょっと顔が青い、体調は大丈夫かしら。


「聞きました?北の悪しき竜が、カレン様の手によって消滅したのですって!魔物に脅かされていた北部の住民が喜んでおりましたわ!」

「カレン様は、回復魔法だけではなく、浄化魔法もお使いになるのですって!昨夜は私たちの為に、おひとりで北の森に向かわれたと聞きましたわ!本当に聖女の様なお方ですわね」

「オデール伯爵令嬢が魔法が使えないって噂、お聞きになりました?あの神々しいお姿……やっぱりカレン様こそが、聖女に違いありませんわ!」

 皆、ルーカス殿下やイーヴさんよりも、カレンの噂でもちきりよ!

 

『全部カレンの手柄になってるな。アホらしい』

 ライゾがリアの髪の中で、ケッて吠えてます。確かにそうだ。イーヴさんや騎士様たちだって頑張ったのに。何より、妖精さんたちが頑張った成果なのよ!!


『あの状況では仕方ないでしょう。しかし、ハガルが、リアの力に気付いてはないか、心配ですね』

 アンスールの声がリアのポケットから聞こえます。続いてカラカラと音がする。

『それはないので安心するがいい!ハガルは人間の事を、魔法もろくに使えない虫ケラ以下の生き物だと思っているからな』

 ダエグさんだ。

『その通りよ。ハガルは、私が浄化魔法を使ってると勘違いしてるの。人間が魔法を……しかも、今まで誰も使う事が出来なかった浄化魔法を使うなんて、夢にも思ってないでしょうね』

 ベルカナさんが顔を出し、リアは慌てて身をかがめた。カレンに見つかったら大変だ!

 

『ふふふっ。心配は無用よ。ハガルにとって、私はもう処分済み。リアも羽をもがれた妖精の末路を知ってるでしよ?羽のない妖精の命なんて、もって数週間。普通ならね』

「う……」

 言葉が詰まる。胸が痛い。


『しかし、カレンはよくベルカナを手放したな』

『あら、オセルは知らないの?妖精の羽は、持っているだけでその効力があるのよ。私が死なない限り、カレンは今まで通り、回復魔法が使えるでしょうね』

 マジか!!


『知る由もない。羽を取るという発想がなかったのだから。ベルカナの羽を2枚だけ残しておいたのはそういう訳か。生き地獄……なんと外道な!』

 オセルさんがプチ切れてます。

『ハガルの目的は破壊よ。その為には、悪しき竜達の復活が必須。それをこれ以上、私に邪魔されては困ると思ったのでしょう』

 そうか。王都の周りには他にも竜が封印されてるのだったね。確か4竜?……あ、ダエグさんが解放されたから、あと3竜。まだ3竜もいるのだ!

 

「あら、リリア。昨晩行方不明になってたって聞いたけど、お帰りになってたのね。良かった!」

「あ……カレン」

 リア、考えに夢中になってて、近づいて来るカレンに気が付きませんでした。横にはイーヴさんがいる。……何故か驚いてるけど。


「でもその格好、町の誰かに恵んでもらったの?可哀想に……仮にも子爵令嬢なのに、ね。私だったら耐えられませんわ。でも、そのままうろつくなんて……貴方、プライドはないの?」

 半笑い。

 

 リアは子爵令嬢(仮)プライドなんてありません。

 だけど、そんな格好なんて言われたくありません!

 

 そうか、カレンはリアが歩いて街に戻って来たって思ってるんだ……なんかズルしたみたいで居心地が悪い。

 そういえば、昨日はカレンのおかげで門の外に出られたんだよね。お陰で、ダエグさんを解放出来たし、御礼言った方がいいのかも!

 

「昨日はわざわざ、門の外まで送って頂いて、ありがとうございました」

 リアはカレンに丁寧なお辞儀をした。するとカレンは、ニヤニヤ笑いを顔に貼り付けたまま、めっちゃリアを睨みつけた。

「へぇ――。門の外にね……」

 イーヴさんも、真顔で怖いんですけど。

 

 でもカレンは、すぐに眉を下げると、リアの手を掴んできた。

「……リリアの意志を尊重したまでよ。あの時間から遊びに行きたいだなんて言うから、カレン、心配したのよ?」

 あれ?そうだったっけ?

 確かあの時は騙されて……。そう!黙っとけば親友にしてあげる的な感じで脅されたんだった!

 げ。ヤバい!敵認定されちゃったよ。ってか、腕痛いんですけど!


「……ところでリリア嬢、どうしてここに?アンリはどこだい?」

 イーヴさんは真顔のまま、カレンの手を取った。解放されたリアは、ホッと周りを見回した。そういえば、アンリがいない!

「撒いちゃったみたい……」

 リアが小さすぎて見失ったのだろうと思われます。

「彼にはお仕置が必要な様ですね」

 物騒なセリフもイケボ。脳には優しいです。


「イーヴ!どうした……ああ……」

 ここでルーカス殿下が合流。本当に2人は仲良し。会った瞬間から顔を寄せあっている。青い髪の騎士と金髪の騎士。麗しいツーショットだ!!

 その横では、オレーリアが首を傾げていた。

 

「あら?誰かと思えば、リリアじゃない。その服……ものすごく似合ってるわね」

 こっちは本気で褒めてくれているみたい。オレーリアはわかる人ね!モモリンの、この完璧なコーデを!

「ありがとう!」

 リアがホクホクと御礼を言うと、カレンが吹き出した。

 

「あら、リリアはオレーリア様のお知り合いなの?」

「ええ……うちの家の庭師ですわ。ルーカス様がわたくしに立派なメイドをつけてくださったから、不要になって捨てたのだけど……慈悲を頂いて、面倒を見て貰ってるみたいですわね。ルーカス様はお優しいから」

 ルーカス殿下の腕に擦り寄る。

「ああ、大切なメイドだろ?」

 ルーカス殿下は目を逸らす。そこは見つめ合わないと!……ってか、リア、捨てられたの!?ヤバっ!もう、あの家には帰れないの?

 

「あら、そうだったの?リリアは没落した貴族だって聞いてたけど、ただの庭師だったとは知らなかったわ。アンリ様がこの子はご親戚だって言われてたし、カレン、この子ともお友達にならなきゃって、頑張ってたのに」

「まあ!カレン様とリリアがお友達ですって?勿体ないですわ!」

 オレーリアは汚いものでも見るかのように、顔をゆがめてリアを見た。


「……リリア、いつまでここにいるの?図々しいにも程がありますわ!さっさと消えなさい!」

 シッシッとオレーリアに追い払われ、リアは渋々と後ろに下がった。

 どうしよう。再雇用してくれないかな。


 するとイーヴさんが突然、カレンの手を振り払い、リアの腕を掴んで引き寄せた。う……はちみつ色の瞳が目の前に!

「リリア嬢、アンリを探すのをお手伝いしましょうか?」

 リアは慌ててブンブンと首を振った。イーヴさんの肩越しに、人をも殺せそうな顔をしたカレンが見えてますから!

「イーヴ様?夜会が始まってしまうわよ?」

 地を這う声っていうの?めっちゃ怖いです!

 でもイーヴさんは離れようとするリアをグイッと引き寄せて、カレンに優しい笑みを送った。


「僕は仕事柄、困っている人を放ってはいけないんだよ。きっと優しい君なら分かってくれるよね?……すまないがルーカス、後を頼めるかい?」

 顔を引き攣らせるカレンはそのままに、イーヴさんはルーカス殿下にウィングをした。


 ルーカス殿下は頷くと、カレンに手を伸ばした。反対側の腕にはオレーリアがくっ付いているのに!

「ああ、任せてくれ。カレン、俺たちと一緒に行こうか」

 

「……嘘でしょ?エスコートを途中で……そんな……」

 カレンが目を剥き、オレーリアは絶句した。

「ルーカス殿下は私をエスコートするんじゃないの!?」


 しかしルーカス殿下は、恐ろしい形相の女性2人に朗らかな笑みを返した。

「嫌なら1人で行ってくれても構わないが?」

 キラキラ。王子様スマイルだ。


 これ以上見ていたら、こっちにとばっちりが来る!!

 リアは後ずさり、そそくさと逃げ出した。後ろには、めっちゃ笑顔のイーヴさんが追って来てるけどね!!

 嫌ァァァ――!!


 

「リリア!っと見つけた!……うわぁ。何かありました?」

 少し走った所で、リア、ようやく迷子のアンリを見つけました!でも、速攻イーヴさんに胸ぐらを掴まれてる!?

「アンリ、お前!!リリアがあの2人に何を言われたのか分かってるのか!!」

 怖いです。

 でもリアは、何故か笑いが込み上げてきて……。


「フフッ……」

 きっとあの場から離れられて、ほっとしたからだろう。止まらないし、涙まで出てきてた。

「アハハ……あの3人、仲良く出来るといいね!」

 ルーカス殿下は両手に花だ。ド派手なね!

 リアの笑い声に、イーヴさんはアンリを離した。アンリは助かったとばかりに息を吐く。


「良かったじゃないですか。リリア、気にしてないみたいで」

「それが問題なんだけどね。リリア、君はこんな扱いを受けるべきではないのに……胸が痛いよ」

 イーヴさんはリアの頭を撫でた。


 リア、何となく分かってきました。きっとそれは、リリアの事を思ってだからなのよね。リリアは子爵令嬢だから……。子爵ってどの位のレベルかは知らないけど。


「もしかして、リアもドレスを着て、儀式に参列すべきだった?」

 リアが小首を傾げると、イーヴさんは益々眉をひそめた。

 

「今はどうかな……こんな時は、君の記憶がなくて良かったと思うよ。この埋め合わせはいつか……そうだ!今からってのはどうだい?」

 イーヴさんがイタズラを思い付いた子供のような顔で、リアに笑いかけた。リア、その顔に、ちょっとワクワクしてきました!

「お、いいね!じゃ、街に行こうぜ!」

 アンリは、待望の街歩きですね!


『街ですか。久しぶりです』

『ヤッター!リア、行こうぜ!』

 妖精さん達も乗り気だ。なら、楽しむしかないじゃない?

「うん!連れて行ってくれる?その……イーヴさんの体調が良ければだけど」

 いつの間にか、顔色は戻ってる。でも、無理はダメなのよね?モモリン。

「君は優しいね。だから、君の周りには精霊が沢山いるのだろうね」

 リアは甘いそうですから!

「お陰で僕の体調も良くなったよ。さあ、僕にぜひエスコートさせてくれないかい?」

 伸ばされた手を、リアは喜んで取った。



 ねえ、リリア。

 失ったのなら、また集めればいいと思うの。

 それはきっと、未来のリリアに必要なモノだから。

 ドレスなんかよりもずっと、ずっと、素敵な……。


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