反転の使い方
古城跡に転移し、パーティーメンバーを確認する。
私、アルザス、シュウ、ジン、ウォッカ、バレンシア、ベルモット、テキーラ。
これまでのゲームでは6人パーティーが定石だったのだが、『L O』ではパーティーメンバーが10人までとなっている。
経験値は等分されることはなく、1人1人にそのまま入ってくるため、このシステムはかなりプレイヤーから好感度が高い。
地雷職とも言われている「調教士」や、「召喚士」にとっては有難い処置である。
その為、このゲームの世界では地雷職が存在しない。
「嫌じゃぁぁぁ!!!」
私達は再び帝国の旅に舞い戻り、「ゾンビ」狩りをしている。
「ゾンビ」が意外と美味しいのなんの。
経験値がウハウハですな。
バレンシアが叫んでいる理由は、「ゾンビ」が何度も何度もギリギリまで迫ってくることにある。
【神域拡張】が一体「ゾンビ」にどの程度効くのか気になり、早速実験を行っているため、バレンシアの精神は尊い犠牲になった。
間近に迫ってくる恐怖で何度か満月を振ったのは仕方の無いことである。
だってさ、ぁぁぁぁぁぁあとか言って血を吐きながら近づいてくるんだよ?
もう泣きそうだよ。
でも、実験を続けた結果、【神域拡張】の10m範囲内では一秒ごとに「ゾンビ」にダメージを体力の1割分与えていることに気づけた。
だから、私の手の届く範囲に来る頃には一撃で屠れるほど弱くなっていると言う訳だ。
ピロリん。
『Lvが上がりました』
『2ポイント獲得しました。任意のステータスに割り振ってください』
『“ジン”のLvが上がりました』
『“ウォッカ”のLvが上がりました』
『“バレンシア”のLvが上がりました』
『“ベルモット”Lvが上がりました』
『“テキーラ”のLvが上がりました』
お、皆最近調子いいねぇ!
Lvがポンポン上がりますなぁ。
今の私のLvは、16
ジンが15
ウォッカも15
バレンシアは13
ベルモットは12
テキーラは17。
掲示板情報によると、次に進化出来るのはLv20になったら。もう少しだね。
この調子でバンバン上げて行こう。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁ」
集団で一気に「ゾンビ」を根絶やしにしていっているため、リポップする時間もほぼほぼ同じ。
いやぁ、美味しい美味しい。
いつかの「グリーンワーム」を見ているかのようだ。
「るし、まだ実験は終わらぬのか?」
「うん、もう少しかなー」
背後で震えるバレンシアの足元から手が生えてきた。
それに気づかずブレスを吐き続けている。
私はそれに気づいたのだが、あえて言わない。
【神域拡張】で何をする間もなく倒せるだろうと高を括っていたからだ。
だが、私の浅はかな考えはすぐに崩れ、「ゾンビ」が地面を突き破って現れた。
その際に、「ゾンビ」がバレンシアの足を握ったので、きゃっ、と可愛らしい声が聞こえた。
おばさんだけど、容姿のせいもあって可愛い。
てか、同じアンデッドなんだから別に怖がらなくてもいいのではないだろうか。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
バレンシアのブレスが真下にいる「ゾンビ」に向かって放たれた。
地面が熱によって膨れ上がり、今にも爆発しそうな勢いだ。
嫌な予感がし、バレンシアを捕まえて空に逃げる。
直後、地面からマグマが直線上に吹き出し、噴水を描いた。
「うわぁ」
「…すまぬ、お前さん。ゾンビ共が悪いんじゃ。妾の足を掴むからっ!」
足を掴まれた感触を思い出したのか、身震いしている。
そりゃあ、ね。ゾンビに触れられたらゾワッと来るでしょ。仕方ないよ。
休憩時間にマップを見ると、帝国との距離が昨日と比べて半分ほどになっていた。
これなら、明日中に帝国に着けそうだ。
マップを見てうんうんと頷いていると、ジンがひょっこりやって来た。
「るしーあのさー話があるんだー」
「何?」
ジンから話があるなんて珍しい。
まさか、好きな子が出来たとか?…もしや新人のテキーラを好きになったとか。
恋はいつなん時現れるか分かりませんなぁ。
「ヴィネから聞いたんだけどーるしってー反転って持ってるじゃんー?」
全然違いました…。
てか、ヴィネ!君は口が軽すぎるよ?個人情報だからそれ。
しかも勝手に人の持ちスキルを覗くのはエッチです!帰ったら注意を出しておこう。
「でさーそれをさー、右目の魔眼に使ってみたらどうかなってーふと思ってさー」
「…!」
ジン!君は天才かね?
そんなこと思いつかなかったよ!!
流石我らがパーティーの脳だ。
もし【魔眼:蠅】を【反転】することが出来れば片目生活ともお別れだ。
まぁ、眼帯は厨二臭くて好きだったんだけどね。
物は試しに早速【反転】を使おう。
『【反転】が使用出来ます。使用しますか?Yes/No.』
え?マジか。【反転】使えちゃうの?
使っちゃう使っちゃう!
ピロリん。
『【魔眼:蠅】が【聖眼】に変化しました』
【聖眼】…10秒間見つめるだけで、あらゆるものを浄化し、元に戻す。又、その眼は真実を映す。
ふぉぉぉ!聖女スキル来たァ!
興奮冷めぬまま、アイテムボックスから手鏡を取り出し自身の右目を映す。
黒く染まっていた部分は元の白目に戻り、金色の爬虫類だった目は、空色へと変わった。
目の中に十字架が見える。
…この場合、水晶体はどうなっているのか非常に気になるところだが、そこは突っ込んでも無駄だろう。
左目を閉じてみてる世界は十字架ではないため、右目の中にある十字架は模様として認識した方が良さげだね。
オッドアイにプラスして十字架が入ってるとか…。
厨二病が悪化した気がする。
だけど、あの狂気スキルからこんなに素晴らしい聖女スキルに変身したから、私はもう何も言うことはありません。
文句のつけ所もありません。
【反転】取って良かったよ。ホントに。
改めて【反転】がどのスキルに効くのか試さなきゃいけないな。
今日はもうこれ以上進まないらしいし、丁度いい。
早速スキル一覧を覗く。
パッシブスキル
【運の底上げ】…on
【神域拡張】…on
【詐欺】…off
【カリスマ】off不可
【聖眼】off不可
【魔眼:蠅】現在使用不可
アクティブスキル
【鑑定】
【剣術】
【大太刀術】
【双剣術】
【大鎌術】
【時空魔法】
【光魔法】
【運盗み】
【飛行】
【暗闇】
【蹴り技】
【登り上手】
【挑発】
【無心】
【反転】
【終焉のラッパ】
【衝撃光】
【確率死】
【鎮魂歌】
【村長】
初期と比べて結構増えましたな。
さて、【反転】が使えるスキルは…と。
パッシブスキル
【運の底上げ】
【神域拡張】
【聖眼】
アクティブスキル
【光魔法】
【暗闇】
激減したな…。まぁ、そんなもんでしょ。ポンポン【反転】出来たらスキル一覧がおかしくなりそうだしね。
さて、【反転】を試してみますか。
まずはパッシブスキルからいってみよう。
【運の底上げ】→【運の底下げ】
【運の底下げ】…自身の運をー10する。
…ないわぁ。運に極振りしている身としてはこのスキルはいらないわぁ。offにしておきましょう。これは永久封印だな。
【神域拡張】→【不浄拡張】
【不浄拡張】…自分の周囲、半径10m以内の領域をランダムな状態異常領域に変化させる。
(Lvに応じて領域が広がる。領域の色は自在に変えるとことが出来る。)
現在の色…透明
はい、アウトー!
1人で戦っているならまだしも、私の近くには仲間がいるためこのスキルは駄目だ。
その時が来るまでは封印だね。
【聖眼】→【魔眼:蠅】
これは知ってる。
さっさと【聖眼】に戻しておきましょう。
これでパッシブスキルは終わりだね。殆どが酷いスキルだったけど、アクティブスキルはそんなに酷くはならないだろう。
【光魔法】→【闇魔法】
お、反対の属性魔法をゲット出来たぜ。魔法は覚えるのに時間がかかりすぎるからこれは有難い。
【火魔法】だったら【水魔法】に【反転】するのかなぁ。
【暗闇】→【閃光】
うん、これは【光魔法】の派生スキルのやつだね。これはもう持ってるや。
おや?ひょっとしてなんだけど、【反転】て呪いにも使えるんじゃ…。
もしそうなら【反転】は最強ですな。
わっしょいわっしょい状態だ。
「るしー眼帯とったのー?おー目が綺麗ー!」
「ジンのお陰だよ。ありがと」
ジン様々ですわ。ありがとうございます。
撫で撫でしていると、ウォッカが物欲しそうにやって来た。
この前まではネコミミフードを触ったら拳を振り上げてきていたけど、今はそんな事がなくなった。
可愛い奴め。ちょいちょいとウォッカを呼んで頭を撫でる。
「ちょっとだけだからな」
「うん、可愛いなぁ」
ツンデレはいいね、好きだわ。可愛い子2人に囲まれるのは幸せだ。
あぁ、幸せだ。
「るし様、私も…駄目でしょうか」
「妾もじゃ!」
テキーラは分かるけどさ、バレンシアは大人でしょ?撫で撫では要らないんじゃ…。
「家族のスキンシップは大事なのじゃよ?」
ですよね。家族の交流は大事だよね。
バレンシアとテキーラの頭を撫でると2人とも嬉しそうに頬を緩めた。
たまにはこういうのもいい。
ただ、「ゾンビ」に囲まれながらはちょっとキツイかな。ほら、「ゾンビ」達も襲いかかっていいか分からない感じでオロオロしてるじゃん。
オロオロしているうちに金色の粉に変わっていくのである意味無害だ。
「るしさーん、俺、先にユニオンに戻ってやすね!」
「うん、分かったよー!」
アルザスがユニオンに行くのを見届けた後、私はおもむろに立ち上がる。
もう少しでLvが上がりそうな気がしたからだ。
ということで、
「さ、追い込み行きますか」
「嫌じゃー!」
「分かりました。行きましょう、バレンシア様!」
叫ぶバレンシアをテキーラがニコニコしながら引きずっていく。うん、バレンシアが駄々をこねる子供に見えてきたよ。お母さんがテキーラかな。
…普通は反対だと思うんだけど。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「嫌じゃぁぁぁぁぁぁ!!!るしぃぃぃ!!!」
バレンシア、頑張。
ピロリん。
『るしのLvが上がりました』
『“ジン”のLvが上がりました』
『“ウォッカ”のLvが上がりました』
『“バレンシア”のLvが上がりました』
『“バレンシア”がスキル【恐怖耐性】を習得しました』
『“テキーラ”のLvが上がりました』
「お前さん…酷いのじゃ」
「ごめんごめん」
バレンシア、ごめんね。
そんなに「ゾンビ」が嫌いだったんだ…。
でも、【恐怖耐性】を習得出来たから良かったじゃないか。うんうん。これも心を鬼にしてバレンシアを「ゾンビ」の元に派遣したかいがあったというものだ。
これで明日もビシバシ行けるね。




