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運極さんが通る  作者: スウ
虫襲来編
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イベントクエスト⑥



 王から避難警告が出されたらしく、大通りには人がいなかった。

 …ということはなく、そこにはいつもの日常が繰り広げられていた。


「…何でっ!?」

「ん〜(おれ)の調べたところによるとねぇ、王の警告を無視してる人が半分程いるらしいんだよねぇ。前回のぉ人外を外に放り出したのに関係しているみたいでさぁ。優しき王と言えども反感は買うものなんだよねぇ。いやぁ、世知辛い世の中だぁねぇ」

「だからって…命が脅かされてるのに何でそんな流暢な事言ってられるの!?今からでも出来るだけ早く助けなきゃ!」


 住人達に声をかけようとするが、セスに止められた。


「るし、大事なものは手を伸ばせば伸ばすだけ零れ落ちていくんだぞ」


 …そうだ。

 昨日もその前もずっとそう自分に言い聞かせてきたじゃないか。

 全ては手の届く範囲を確実に守る為に。

 私の手はセタンタや、デヒテラさん、ユニオンメンバーの皆、愛する家族達でいっぱいいっぱいだ。

 これ以上何かを抱えたら手から零れ落ちてしまう。

 だから他のものは抱えまいと、そう思ってたのに…。



 現状を見てしまったらそんな考えは吹っ飛んでいた。

 セスに言われるまで気が付かなくなるくらいに。

 …どうやら私には何かを助けて何かを斬り捨てることは出来ないみたいだ。

 考え続けるのは苦手だ。

 悩み続けるのも嫌いだ。

 無理だと諦めることが無理だ。


 だから…。


「私、やっぱり手を伸ばしたいな。伸ばして伸ばして出来る限りの事をしたい。…だから、私の腕の中からセスや皆が零れ落ちないように頑張って!!」

「そんな無茶な。だけど…まぁ、いいよ。俺らが頑張ればいいんだろ?お前はお前の思うままに進め。進んで進んで後ろを振り返った時、何も落っこちてないから心配するな」

「セス…ありがとう」

「もっとぉ褒めてぇ♡」

「…株が上がってたのに今のでダダ下がりだよ?」


 セスはニヤリと口元を三日月型に上げ、ボス戦の準備に入るため姿を消した。

 私は傍から見るとあの勇者君と同じことを考えているように見えるのだろう。

 あんまり嬉しくはない。

 寧ろ、嫌だ。

 頭がお花畑なコミュニケーション能力が高いやつと私を一緒にして貰っては困る。



 私にしか出来ないことを考えろ。

 いや、考えるな、感じろ。

 私が今一番すべきことを。


「おーい!!」


 感じろ。


「おーい!!」


 感じ…


「おい!!無視すんなよ。今からこいつらを無理矢理避難させるからアンタも手伝ってくれ!」

「五月蝿い!!人がかんじ…って、あ!門番さん!!」

「やっと気づいたか。時間が惜しいからさっきも言った通りアンタも手伝ってくれ!」

「…?分かりました」


 でも、無理矢理って言ってもどうやって避難させるのだろう。

 王様の命令に背いた人ばかりだというのに。


「あの、避難のさせ方は…?」

「あぁ、こうするんだよ!!ストーンウェーブ!!」


 ダンっと両手を地面についたかと思うと、舗装された道が波打ち、大通りにいた人を巻き込んで街の外に押し流した。

 このスキル…カッコイイ。


「アンタには今ので流されなかった人達を上空から掴んで外に放っぽりだして欲しいんだ」

「り、了解です!!」


 翼を出して、道端で寝転んでいる人を運ぶ。


「離してっ!!何するの!」

「きゃーー!!誘拐よー!」

「いやん♡あら?いい男!」

「触んな!」

「軍服様じゃないか!!」

「どこ触ってんだよ!!この屑が!」



「心に刺さる言葉がありますね」

「おう。そこんとこはの心を広く持て。その、手伝ってくれてありがとな」

「いえいえ、私も助かりました」




 ドガァァァァアアンッッッ!!!


 王城からもの凄い音が聞こえた。

 何事かと空から見ると、王城があった場所にバカでかいモスキーバエトが現れた。

 何処からやって来たんだ!?てか、今ので王城にいた人皆死んじゃったでしょ!?お、王様…南無阿弥陀仏。


「おい!!何があったんだ!?」

「王城が崩れて、その場所にデカイ虫のボスがいるんです!!」

「はぁっ!?」

「私、やつを倒しに行くので門番さんも早く街の外へ避難してください!外にもアドラーが沢山いるので助けてくれるはずです!!」

「いやちょっとま…」


 門番さんの言葉を最後まで聞く前にボスの元へと身体が動いていた。

 早く。

 早く倒さないと。





 彼方此方から悲鳴が聞こえる。

 それを助けるために他のプレイヤー達が動いているのが見える。

 急いでボスを倒さないと…。


「きゃぁぁぁぁあああ!!!」

「エドッッッ!!」


 知っている名前が耳に入った。

 人違いでも何でもいいから助けなくては。

 近くにプレイヤーは見当たらないから私がいかないと!


 女の子がモスキーバエトに頑丈な腕と足で組み敷かれ、口を入れられそうになっていたところで、横から奴の腹を思いっきり蹴る。


「スティール・ラック!!」

「kjpgtgmpgn!?」


 モスキーバエトは遠くの方に飛ばされて星になった。


「大丈夫ですか!?」


 女の子は赤い頭巾を被っていた。

 赤い目から大粒の涙がホロホロと落ちる。


「…っ!!ひぐっ…あぅ…あ、るしさん…です?あ、あ、ありがとです!!怖かったです…うわぁぁぁぁん!!」

「るし様!エドを…エドを助けていただきありがとうございます!!…うぐっ…」


 近くで倒れていたフラン様はどうやら足を折られているようだった。

 足が明後日の方向を向いている。


「ベルモット、一応エドとフラン様にエリアヒールをお願い」

「きゅっ」


 黒い光が放たれ、2人を包んだ。

 それは一瞬の出来事で、フラン様の足は元通りになっていた。


「ありがとうございます、るし様。貴方様に助けられてばかりで、一体何を返せばいいか…」

「あ、それなら早くこの街の外に出て頂ければ私にとっての恩返しになるのでそれでお願いします。この街の中にいる限り安全はないですからね。じゃあ、急いでいるので私はこれで!」

「「るしさん(様)ありがとうございました!!」」


 2人に見送られ、ボスの元に駆ける。

 そう言えば、モスキーバエトの形態が違ったような…気のせいか。






 王城があった場所にはポッカリと穴が空いており、その上にボスが浮いていた。

 手と足、大きさ以外はモスキーバエトだ。

 手と足は人のもの。

 大きさは6m程の巨体。

 頭には王冠。

 そしてそれを守るようにに同じ形をした3m程のモスキーバエト(?)がズラリと並んでいた。

【鑑定】をしよう。

 モスキーバエトの進化系とかだろうか。

 まずは子分から。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 種族 モスキーバエト:人 ☆4

 役職 近衛兵

 Lv 8

 パッシブスキル

 ・群れる

 アクティブスキル

 ・増殖

 ・筋力上(ステアアップ)

 ・槍術


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ☆4とか…。

 しかもそんな奴らがボスの周りにうじゃうじゃおり、穴から今も尚這い出してきている。

 これは【終焉のラッパ】で一掃するしかないようだ。


 続いてボスはどうだ?


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 種族 (ベルゼブブ)の王 ☆7

 役職 王

 名前 フィリップ

 Lv 16

 パッシブスキル

 ・従属(配下を思うがままに従わせる)

 ・王の威圧

 アクティブスキル

 ・増殖

 ・暴風(荒々しい風を起こし、相手に攻撃する)

 ・穴掘り(何処にでも穴を掘ることが出来る。Lvが上がることに掘るスピードは増す)

 ・毒牙

 ・幻覚(自身よりMNDが低いものに幻影を見せる)


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 蝿の王…。

 蚊の要素は何処にいったんですか!!

 …。

 スキルと種族レア度、Lvを見た限り、かなりやばい。

 ボス半端ないっす。

 とりあえず下に降りてジンとウォッカ、セタンタの様子を見に行こう。

 実は3人にはペアになって避難誘導をしてもらっていたのだ。





「るしー!」

「師匠ー!」

「ここだぜー!」


 二人の声が聞こえた方向を見ると、絶賛モスキーバエト:人7体と戦闘中だった。

 住民を守るように戦っているため、若干だか不利だ。


「7対3は卑怯だぞー!」


 空中から7に向かって【残月】を放つ。

 それを上手く避けたのが一体いたが、ウォッカの【雷魔法】によってその命を散らせた。


「ナイスウォッカ!」

「おう、ありがとな!」

「師匠ー!!」

「るしー助かったよー」


 住人達も口々に感謝の言葉を並べていた。


「3人共はまだ避難誘導を続ける感じだね?」

「うんーまだまだいっぱいいるからねー」

「僕は…はい!!」

「るしのお願いだからな。見える範囲は助けてみせるぜ」

「ありがと。絶対に死なないでね?もし死んだら私泣くよ?」

「それはーダメー」

「し、死なねぇよっ!!任せとけっ!」





「AAAAAAAAAAAAAAAAAAGiaGiaGiaGiaaaaaaaa!!!!」




 ボスから放たれたであろう咆哮が地面を揺るがす。


「「「ヒィィィッッ!!!」」」

「…っ!3人共!街の住民の避難誘導は任せたよっ!!私はボスを殴ってくる!」

「「「任せろ!」」」


 蝿の王を見据え、翼を広げた。

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