表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/257

MD2-099「暗闇に踊る-1」


「もう少し頻繁に更新にしてくださいね」


エルダートレントから生還した僕達。


諸々の清算を終えて、解散となったのは夜遅くだった。


さすがに今から宿が探せないということで、

その日はお城の兵士と同じような部屋で休ませてもらった。


来客用の宿泊場所らしく、片づけられてはいたけど殺風景だった。


普段使わないならこんなもんだよね。


翌日、大きな問題は無いということで

僕とマリーにとってはここでようやくいつもの時間となったわけだ。


王都の依頼はどういうものか、色々と試す前に騒動が続いたこともあり、

僕達は日常にやや餓えていた。


そんな中で依頼を受ける前にと冒険者証を受付に渡して確認。


その時に言われたのが冒頭の一言だ。


「ちょっと忙しくて……」


「皆さんそうおっしゃいます。わかりますけどね。

 ……一応、今はまだD評価です。限りなくCに近いですけど。

 詳しくは見れないからいいですけど、相当無茶しましたね?」


じとっとした受付のお兄さんの問いかけに、

僕とマリーも乾いた笑いを返すしかない。


「そ、それより今日の依頼を探したいなって思うんです」


「まあ、いいでしょう。どうせ私たちには動きを制限する権限があるわけじゃないですからね。

 無理しても長生きできませんよ、と言いたかっただけですので」


一見、小言のようにも聞こえるけど大事なお話だ。


確かに勢いと偶然で最近の事件は片づけられたけど、

世の中にはそれが出来ずに消えて行ってしまった冒険者だって多いのだから。


お礼を言って、依頼の並んでいる掲示板へ。


さすが王都というべきなのだろうか。


並んでいる依頼書も田舎のそれとはどこか違う。


のだけど……。


「討伐系があんまりないね?」


「ここは街の真ん中にあるからじゃないですか?」


出てくるのはお使いや物探し等ばかり。


~~を倒して素材を!といった依頼がなかなか見当たらない。


マリーのいうように、ここは街の真ん中近く。


後々を考えたら外に近いギルドの方が早いかな。


そんな中、ふと目に止まった依頼。


それは……猫探し。


たどたどしい字で、きっと子供だろうけど必死さが伝わる。


添え書きで、親であろう人からの言葉として、

受注から3日探して見つからなければ終了と扱いますとのこと。


『試してみるか? 一応、味方と判断していけば知らない相手でも地図の上じゃ青いぞ』


(そうなんだ? じゃあやってみようかな)


探し物はともかく、こういう人や動物探しは相手が動くことが多いので

依頼としては難易度が高くなる。


だからこそ、時間の無い冒険者が受けることは少ないみたいなんだよね。


「必死なんでしょうね……おこずかいからでしょうか」


「だと思うよ」


マリーはこの依頼に不満はないようで既に依頼主の事を心配している。


先ほどのお兄さんの場所が空いていたので依頼書を持って行くと……また何か見つめられた。


「よろしいんですか? E評価推奨ですけど」


「大丈夫です。こういうのもやりたいので」


すんなり受注の処理をしてくれたのは、

この依頼が結構残りそうだったからかな?


ギルドを出てすぐに、マリーが僕の腕をとって寄り添って来た。


「ま、マリー?」


「いいじゃないですか。こういう時ぐらいこうしたいんです」


確かに既に告白済みだし、そういう関係だと嬉しいのもあるけど、

ちょこっと恥ずかしい。


『恥ずかしいのが少しならいいじゃないか。大事だぞ、こういうのは』


ご先祖様にも言われてしまっては仕方がない。


依頼書に記された住所はここからしばらく行った住宅街だ。


僕の住んでいた村と比べるのが間違っている規模の街並みが続く。


「やっぱり王都は大きいですねえ」


「うん。目が回りそうだよ」


マリーにとってもこの街並みが驚きだということに

どこか安心した気持ちを抱きつつ、僕達は進む。


腕組みをしながら街を歩くなんて、村にいた時は想像もしなかったな。


「えーっと、この辺かな?」


依頼書に記された地図はこの辺のはず……あれかな?


街の一角にある家、この辺で唯一の赤い屋根だ。


丁寧にと意識して呼び出しのために玄関を叩く。


「はーい」


「猫探しを受けた冒険者です」


中から聞こえた声、多分母親へとそういうと、

声の主以外の場所から走る音が聞こえる。


おや?と思うと玄関の扉が勢いよく開いた。


そこにいたのは、マリーより頭1つ分は小さい女の子だ。


「あ、こんにちは! お兄さんたちがポメちゃん探してくれるの!?」


どうやら猫はポメちゃんというらしい。


女の子に答える前に、バタバタと足音がして奥からお母さんがやってくる。


「こら、急にそんなこと言っても困ってしまうでしょう?

 ああ、お二人も。わざわざありがとうございます」


「いえいえ、お仕事ですから。それより、ポメちゃんの毛の色とか、教えてくれますか?」


しゃがみこみ、女の子を撫でながらマリーが猫の特徴を聞いている。


その間に僕は周囲を見渡し、猫が入っていきそうな場所を確認しておく。


話によると、庭で遊んでいるときに

ちょっと家に戻ったらいなくなってたらしい。


さらわれた、ということはなさそうでどこかにいってしまったのだろうとのこと。


「ポメちゃんね、この毛布じゃないとおねんねできないからかわいそう」


「そっか。頑張って探すからね」


一応毛布を確認するけど、ごく普通の……あ、毛だ。


回収だけしておこうかな。


毛布を女の子に返し、マリーと頷きあって立ち上がる。


「ではさっそく行ってきますね」


「お願いします!」


元気な声を背中に聞きながら、再びの住宅街。


それはそれとして闇雲に探すのは難しいだろう。


『魔力の消耗はあるが、猫なら猫ぐらいの大きさの生き物、と絞ることは出来るぞ』


(早速やってみよう!)


導かれるまま、空中に浮かぶ地図を操作すると、

大きさがまず変わり、次に光点に変化。


なるほど、これがそういうことか。


魔力の消耗が結構大きいけど、便利そうだね。


全部青いからどれがどうだかわかりにくいけど、

さて……ここからどうするか。


ちらりと手の中に持ったままのポメちゃんの毛。


ダメもとでそれを握り、さらに絞れないか試すと地図にさらに変化。


光点が、消えていった。


「どうですか、ファルクさん」


僕の力の一部を知っているマリー。


秘密の地図で周囲を伺っていたことを感じ取り、じっと待っていたようだ。


「試しにこの毛の持ち主をって感じで探したら見つからなかったんだよね」


「そうですか……そうなると地下、ですね。こちらへ」


うつむき気味に何事かを考えていたマリーが僕を引っ張る。


そのまま連れていかれたのは、住宅街の一角にある穴。


「主要な区画だけですけど、この街には下水道があります。

 と言っても、雨水を逃がす先ですけどね。

 この大きさなら子供ぐらいなら入れますから……ね」


大人が通るには辛そうな穴。


逆を言えばそれ未満の存在には自由ということ。


そう、猫ぐらいなら。


穴にかぶさっている網は人間の子供用なのだろう。


猫なら通れるような穴がいくつも空いている。


僕達はその網を横にどかし、狭い穴に身を躍らせた。





感想やポイントはいつでも歓迎です。

頂いた1つのブックマーク、1Pの評価が明日の糧です。


誤字脱字や矛盾点なんかはこーっそりとお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつもご覧いただきありがとうございます。その1アクセス、あるいは評価やブックマーク1つ1つが糧になります。
ぽちっとされると「ああ、楽しんでもらえたんだな」とわかり小躍りします。
今後ともよろしくお願いします。

小説家になろう 勝手にランキング

○他にも同時に連載中です。よかったらどうぞ
兄馬鹿勇者は妹魔王と静かに暮らしたい~シスコンは治す薬がありません~:http://book1.adouzi.eu.org/n8526dn/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ