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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-095「よじれた木々の先で-3」


「本物を見るのは初めてだな……君たちは?」


「私も見たことはないです」


「僕は話には聞いたぐらいですね。でも対処はわかりますよ」


周囲の警戒は続けつつのダグラスさんの問いかけに答え、

僕はアイテムボックスからある物を取り出す。


(ご先祖様に鍛えられた僕に隙は無い!と言えたらカッコいいんだけど)


取り出したるは1本の棒。


ダンジョン攻略には必要だと最初にご先祖様が主張していたただの棒だ。


まずは箱の前に対して、斜めになる場所から箱をつつく。


うん、いきなり爆発はしないね。


「なるほど……」


「うー、もどかしいです」


落ち着いた様子のダグラスさんに比べ、ミルさんは我慢ができないようだ。


箱を無視していく、というのも選べないわけじゃないけどね。


「ダンジョンの中には有力な武具がなぜかああいう箱に入ってるって

 聞いたときには何の冗談かと思いましたけど……実際に箱を見ると否定できませんね」


そういうマリーの言葉が全てだった。


ご先祖様が驚くぐらい、今はあまり見られなくなったそうだけど。


僕も最初は冒険者のお酒の場での盛り上がるための作り話だと思ってたもんね。


「次はっと……これも大丈夫」


横に回り込み、動かす勢いで箱の下に棒を差し入れて揺らすも反応なし。


箱に擬態した魔物ってこともなさそうかな?


実際にこの虚空の地図が擬態した魔物を判断できるかはわからないけどね。


そしてついに後ろへ。


厚手の手袋を念のために両手にはめて、

ゆっくりと箱を持ち上げると、軽い。


なるほど、これは魔物ではないだろう。


「じゃあ開けますので」


「うむ」


箱の向きを壁に向けて、後ろから鍵のかかってなさそうな蓋を開ける。


「「おお!!」」


兵士の皆から声が出る。


皆の視線の先で、開いた箱から魔法の矢らしき光が数本飛び出たせいだね。


『正面から開けると被害を受ける、と』


(そういうことだね。練習しておいてよかった)


毒の霧でも出たらどう逃げようかなってところだけどさ……。


それでも一番被害を受けるのは大体正面だ。


続きがなさそうなので、離れた場所から角度をつけて中身を覗き込むと、

そこには何やら炭のような物が満載。


量の割に軽いのは、乾燥しているからだろうか。


「えー? あれだけやってただの木片とかゴミですかー?」


あからさまに落ち込むミルさん。


僕もまた、わかりやすい物じゃないことに落胆しかける。


が、1つ手に取ったところで驚きが顔に出てしまう。


「いえ、良いものですよ。香木の1種みたいです」


ふわりと、鼻に良い匂いが届いたのだ。


改めて鼻元に持って行って匂いを嗅ぐと、甘くはないけど、

どこか落ち着くいい香りだ。


「手のひらほどの長さの1本で銀剣一振りになるというあれか……」


ダグラスさんは香木の事を知っているようで、

むずかしい顔をしてつぶやく。


兵士は分け前を受け取るわけにはいかない、みたいな決まりでもあるのかな?


この量だとみんなで山分けしても十分だから、

問題なければ分けておきたいよね。


それに、僕の嗅いだ感じが正しければ……。


『うむ。これは魔力を回復することが出来る良い奴だな。確か世界樹の香木という』


やっぱり、そうか。


なんだか気持ちがすっとすっきりした気がしたんだよね。


「とりあえず、せっかく何でみんなで分けて持って帰りましょう。

 僕達だけ冒険者だからってもらうのはちょっと……」


「ふむ……君がそういうのであれば。ありがたくいただこう」


ダグラスさんの言葉に兵士さん達全員が歓声を上げる。


勿論、ミルさんもね。


銀の長剣一振りって一財産だからね、無理もない。


しばらくは節約しないで済むとなれば嬉しいに違いない。


「帰って騒ぐためにも十分気を付けて進みましょう」


「うん、そうだね」


浮ついた気持ちをマリーが整えてくれ、

僕達は再びダンジョンに向き直る。


(一度見つかると味気ないように見えた景色が色がついて見えるから面白いな)


人間の欲とは怖いものだね、まったく。


僕もそうだけど、ミルさんたちの周囲を見る目が変わった気がする。


これで魔物を見つけることも早くなることだろう。


なおも進んだ先は、通路にも枝葉が出てくる少し視界の悪い空間だった。


今のところ、枝の隙間から虫型の魔物が!

ということはないけれど、気を抜くこともできない。


そうしてそのまま進んでいくと、通路が倍ほどに広くなる。


「む、止まれ。あれはなんだ」


「木の中に木? うう、わけわかんなくなってくる」


ダグラスさんの鋭い視線の先にいたのは、再びの木人。


だと思うんだけど……大きいね。


でもトレントの小さい版と考えるとそれほどでもないかな?


妙に体格の良い人、ぐらいの感覚かな。


それが手足のような太い枝と根っこを器用に使い、

こちらに歩いてくる光景は不気味ではある。


と、枝だと思っていた物が伸びたと思うと切り離された。


「飛んできます!」


「ぬう!」


言うなれば手槍を投擲してきたような攻撃が何本もこちらに襲い掛かる。


とはいえ、こちらも素人ではない。


何人かが盾を構え、残りはその後ろに隠れたりと回避だ。


僕の生み出した土壁の後ろに、マリーも隠れる。


突き破ってきた時のために少し離れて、だけどね。


なんというか、このダンジョンはこういう相手ばかりなんだろうか?


彼らの向こうにはまだ通路が続いている。


(となれば、これだ!)


「レッドシャワー!!」


火球や炎の矢とかと違い、燃え広がることの無い不思議な火属性魔法。


ただ、幅はともかく奥行きが絞れないので下手に後ろが壁の時に使うとそちらも崩れる。


なので、今回のように通路の中で使うのなら良いと判断した。


結果としてそれは正解で、

あちこちを焼かれるように炭化させた木人が姿勢を崩す。


「切り捨てろ!」


そうなればダグラスさんらの敵ではない。


薪割りでもするかのようにばっさりと倒されていく。


「あら、この辺杖になりそうじゃないですか?」


木人だった物を手にしたマリーの声に

僕以外の人間も足元に転がる残りの木に向き直る。


確かに、トレント自身が素材になるのだから……ありかな。


効力は不明だけど、持ち帰る価値はありそうだ。


「邪魔になりますし、ひとまず持てるだけ持って帰って、

 後で精算しましょうか」


「苦労をかけるな。申し訳ない」


僕としてはただ仕舞うだけだからそんな苦労はしていないけど、

任せきりになることは兵士としてはそのまま許容は出来ないのだろう。


ダグラスさんだけでなく、みんながお礼を言ってくる。


「ふふーん。これで臨時給金がいっぱいかな。ついてきてよかった!」


やや不真面目なミルさんの叫びが真実かもしれないけど、ね。


ついでに、足元のふかふかした、山の中にありそうな土も

畑に使ったらよさそうなので袋にして5袋分ぐらいを持ち帰ることにする。


アイテムボックスの容量が増えててよかったと思う光景になってきた。


一応、中の調査の証拠に必要な物という考え方もあるから大丈夫なはず。


どのぐらい時間が経ったのかわかりにくいけど、

それなりの時間歩いているはずだ。


「他の人達に出会いませんね」


「うむ……もしかしたら我々は行方不明扱いになってるかもしれん」


先行した部隊にも、後発の部隊にも出会わない状況。


探索という点では不安が残るけど、

新しい場所にいるのは間違いない。


適当なところで戻るか、奥まで行くかだけど……うーん。


「声が近くなってるのでもうすぐかもです」


「そうか。思ったより浅い……浅いのか?」


歩いてきた距離を考え、疑問を口にするダグラスさん。


ダンジョンとしては浅いとは思うんだけど、

未知の場所という点では距離以上に深く感じるよね。


「あ、階段です」


「木の中に階段とか一番わけわかんないよ……」


マリーの見つけた妙に丈夫そうな木製のらせん階段。


上まで伸びているから結構上まで行けそうだね。


そこが正解かは別として……。


「行くしかあるまい」


「上からの攻撃に気を付けていきましょう」


僕が言うまでもないことだと思うけど、

それだけを言って僕達はらせん階段を1歩1歩、登っていく。




戻るまでが冒険です。


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