表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/257

MD2-094「よじれた木々の先で-2」


──エルダートレント


それは何千年も前から世界を旅する歩く老木。


最初はその辺にある木がトレントとなり、

いつしかそれは止まり木となることを覚える。


休む場所がなく、困っている動物をその枝葉に抱えて新天地へ。


優しい気持ちのトレントが出会うと一緒になることで大きくなる。


それはいつしか、見上げるほどの大きさとなっていくという。


そうして各地の動物たちを慰めながら、トレントは歩き続ける。


約束の地で眠るために。


動かず、訪れた相手に対して救いを与える静のユグドラシルに対して、

自ら与えに行く、動のトレントと呼ばれる存在だ。


そして、彼らは時に体内に迷宮を作り出すという。


「なんだかふわふわして落ち着きませんね」


「大量の落ち葉が付き重なり、深い森の中のようになってると思うべきだな」


先頭を4人の兵士さんが、後ろを3人が警戒している。


僕たちはその間だ。


別に僕達は別枠の冒険者なのだからこうやって守ってもらわなくても、

と最初にいったのだけど、この陣形の理由はそうではなかった。


彼らは魔法が使えない集団なので、その代わりにこちらが支援しやすいように

真ん中にいてくれた方がありがたいとのことだった。


求められる役割がそうだというのなら、

こちらからはダメとは言いにくかった。


秋の終わり際の森に分け入るかのように、

壁の様な木そのものの様な場所をゆっくりと歩く。


通路の様な空間はあまり変化がなく、気を付けていないと

どこを歩いているのか全く分からなくなりそうだった。


色自体は様々なのでど、組み合わさる色が決まってるせいで区別がつかない。


「ファルクさん」


「うん。呼びかけは続いてるね」


時々、頭に響くように何かの呼びかけが続いている。


ダグラスさん達はそんな僕達を邪魔しないように周囲の警戒をしてくれているようだ。


と、僕の虚空の地図に反応があった。


10近い、赤点。


つまりは僕達に敵対する物。


「何か来ます」


「む、あれは……」


ひょこっと顔を出したのは、外より大きめのサボタン。


全身は緑というより枯れ葉色で、この場所に相応しいともいえる。


その体が何かを吸い込むように膨らんで……。


「ブロッカー!」


足元が、ふかふかだが土と化していることは最初からわかっていたので

詠唱省略による土壁が文字通り下から湧き立つ。


ガガガと、鈍い音を立てて土壁に突き刺さる細い物体。


お久しぶりの、サボタンの針である。


即座に土壁を解除し、視界を確保する。


「むううん! せいや!」


隙だらけのサボタンへと、念のためにか片手の手甲で目元といった急所をかばいつつ、

ダグラスさん達前衛がサボタンに飛びかかり、その体をあっさりと両断する。


地面、というのは疑問の残る床部分へ

サボタンの体液が全て流れ出し、そこを湿らせる。


(なるほど。自然にこうなる時もあれば葉っぱの処理も外より早いかな)


何か普段と違うことがないかを確認しながら、通路のように伸びる空間を見る。


当然、看板もあるわけじゃないのでどっちに進んだ物か……。


頼りになるのは、この呼びかけだけかな。


「こっちへ。呼びかけが強いです」


「この広さでは何かに従って進む方がよさそうだ。よろしく頼むよ」


困難は砕いてこそ、と言ってダグラスさんは僕の先を促す。


マリーと同じく明星を手に、

いつでも魔法を放てるようにしながら進む。


途中、何回かサボタンの襲撃というか発見はあったけど、

動物という点では何にも出会わない。


ご先祖様に聞いたエルダートレントの性質から言って、

鳥や小動物ぐらいはいそうなものだけど……。


最初ははらりはらりと落ちてくる葉っぱたちに驚いたけど、

そのうちに気にならなくなった。


『やはり、ダンジョン化してるな。中と外じゃ広さが全く違うぞ』


(そういうことなのか……これは怖いね)


外から見た時も、下手な町や村より広いんじゃないかと思えるほどの太さだった。


それが中がダンジョン化しているとなると、

どのぐらいの広さがあるのか、全く予想が付かない。


動物たちの楽園であるエルダートレントとここは、

同じ様で違う物なのだと実感できた。


ひとまずは報告しないわけにはいかないだろう。


「どうやらここはもうダンジョンの中の様です」


「ホントですかー?って言いたいところだけど、間違いないかー」


立ち止まり、口にした僕の言葉にミルさんが

皆を代表してか反応し、周囲を見渡した。


僕の目にも、普通の森には思えない不思議な空間。


1本の木ではこうはならないだろうと思う。


「トレントは仲間と一緒に約束の地で眠る……。

 本当だったんですね。入り口が出来たから、

 死んじゃってるってことは無いと思いますよ」


僕もそんなマリーの意見に頷き、歩き出す。


段々と、声は大きくなっている気がする。


これは誰だろうか……?


エルダートレントの物? それとも……。


と、視界にこれまでと違う物。


「人形?」


それは誰の言葉か。


あるいは何人もが呟いたのかもしれない。


視線の先で、明らかに木でできたような棒人形が壁に張り付いていた。


ただし、大きさは1本1本が僕の腕ぐらいあるけどね。


「ここにいる以上、ただの飾りということはあるまい」


ダグラスさんの言うように、僕達が近づいた途端、

それらは壁から自分を引き抜くかのようにうごめき、床へと降り立った。


「生意気に武器まで持っちゃって!」


ミルさんの叫び通り、棒人形たちは自分より半分ぐらいの太さの棒切れを

まるで剣を構えるかのように持ち、瞬きの間に襲い掛かって来た。


「急所に気を付けろ! こいつら、意外と鋭い動きだ!」


操り人形による劇を見ているかのような不思議な戦いが始まり、

時折鎧の隙間に棒が刺さるという怪我はないけど痛いという状況が続く。


とはいえ、下手なところに当たればこれでも刺さってしまう。


そんな時、奥の方で動いていなかった棒人形の1体が

こちらに手にした棒を向けてくるのが見えた。


「マリー! 風を!」


「はいっ! ウィンドプレッシャー!」


僕達が出会った時の魔法は、マリーの得意な魔法の1つ。


慣れたその魔法だからこそ、狙い通りに相手へと進み、

その棒から生み出された魔力の結果を押し返す。


大きな音を立て、棒人形の棒から生み出された冷気の塊は

放った当人(?)を凍り付かせるという結果となる。


「魔法まで使うか……2人とも、よろしく頼むぞ」


「はい。任せて……んん?」


ダグラスさんに答えたところで、僕は思わずそんな声を出していた。


だって……ねえ?


『珍しいな。今もまだ、この機能は生きている(・・・・・)のか』


僕の視線の先へみんなも顔を向け、固まる。


ご先祖様の声はそんな時だからこそ、妙に響いた。


「箱……ですか?」


困惑のマリーの声。


そりゃそうだよね、さっきまで棒人形しかいなかった場所に、

彼らが入ってしまいそうな箱があるんだもの。


しかも、明らかに金属製。


さて、どうしようか?


たからのはこだ! どうしますか?


感想やポイントはいつでも歓迎です。

頂いた1つのブックマーク、1Pの評価が明日の糧です。


誤字脱字や矛盾点なんかはこーっそりとお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつもご覧いただきありがとうございます。その1アクセス、あるいは評価やブックマーク1つ1つが糧になります。
ぽちっとされると「ああ、楽しんでもらえたんだな」とわかり小躍りします。
今後ともよろしくお願いします。

小説家になろう 勝手にランキング

○他にも同時に連載中です。よかったらどうぞ
兄馬鹿勇者は妹魔王と静かに暮らしたい~シスコンは治す薬がありません~:http://book1.adouzi.eu.org/n8526dn/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ