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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-093「よじれた木々の先で-1」

(ねえ、大きすぎない?)


『あ、ああ……俺の記憶にあるエルダートレントはこの半分ぐらいだったんだが……』


ホルコーの背の上で、僕はご先祖様に人生で最大級の疑問を投げかけていた。


それに答えるご先祖様も……僕と同じぐらい呆然としているように思う。


同じく僕の背中に抱き付いたままのマリーも

ひょこっと顔を出し、前を見て絶句している。


「下手な街より大きいんじゃない? あれ……」


「この距離でこれですもんね……」


周囲を同じように馬に乗って進む兵士からは

特につっこみや返事はない。


みんなこれのことを知ってるってことかな?


あるいは、任務中だからおしゃべりしないだけなのかもしれないね。






ダグラスさん(部下じゃないのだから隊長はいらないと言われた)

からギルド経由で指名された時、ギルドマスターのおじさんからは、

あまり無理はするなよ、とありがたい言葉を頂いた。


最初は、立て続けの指名依頼に苦言をもらうかと思ったのに、

優しい顔で忠告をもらってしまったのだ。


そのことからも、今回の話もちょっと厄介なんだなと

身構えることができたのは内緒だ。


集合場所に指定された王都東の広間。


そこに集まったのは兵士達50人ほどと僕達以外の冒険者が1組。


馬で行くというのでホルコーは引き取っている。


こうしてみると、ホルコーが立派なのがすごいわかるよね。


そして号令の元、王都から出発して大よそ2刻。


特に事件もなく、大所帯ながら順調に進んでいく。


日も傾き始め、1度目の休憩かなというところでとある変哲の無い森へとたどり着く。


「ここからは転移となる。はぐれないようにな」


ダグラスさんの号令が響き、全員が森の中へと誘導される。


正直、だいぶ狭いのだけどしょうがない。


少し進むと見えてくる切り開かれた場所。


不思議なことに、年月は感じるのに雑草すら広間に生えてきた感じがない。


まるで、中央にある円状に並ぶ石の柱以外存在を許されないかのように。


『懐かしい光景だ。さあ、みんなと同じように進むんだ』


(う、うん)


そして全員が集まったところで、誰かしらからか詠唱。


飛び交う無数の精霊達。


「うわぁ……」


マリーの感嘆の声が耳に届くけど、僕も同じように声を出していたに違いない。


様々な色の光が舞い、とても美しいと感じる光景が

少しずつ形を作っていく。


それは大きな魔法陣。


感じたことのある浮遊感を覚えながら、

僕は腰に回されたマリーの手と、ホルコーの手綱を離さないようにぎゅっと握った。


………


……



「すごい……真っ白だ」


「本当ですね。古そうなのに汚れがほとんどないです」


転移の結果、たどり着いたのはオブリーン王都とは別の意味の白の都。


あちこちが崩れ、誰も住んでいないように見えるけど、

今廃墟になりました、と言われても信じられそうなほどに美しい。


ところが、そんな光景をある種、ぶち壊しにするやつがいる。


それが、街より下手すると太そうな巨木だ。


間違いなく、あれがエルダートレント。


太いなんてもんじゃない。


『かつては大きな建物ぐらいの奴がちょいちょい世界を歩いていたんだ。

 そして彼らは出会う度に絡み合い、1つのトレントなってさらに歩く。

 いつしか約束の地で眠るために……ここがそうか』


エルダートレントが動いていたというのは500年ぐらい前らしいので、

彼らの目標自体は早めに達成できたと思うべきなのか、悩むところだね。


でも、今見える巨木には足があるようには見えない。


トレントのように根っこが出てくるかと思えば、

足元部分は全部土の下だ。


約束の地にたどり着いたというのはもしかしなくても本当かもね。


「今日はこの廃墟ではあるが建物群の中で一晩過ごし、明日からアレに乗り込む」


「突入は分担制ですからねー。冒険者の二組はどの時期に参加しても大丈夫ですよ。

 色々と自分でなんとかしてもらいますけど……」


ダグラスさんの簡易な一言を、部下であろう青年が補足し、各自が食事などの準備を始めた。


どうも馬は一か所で管理するらしいのでホルコーを預けに行く。


本当はホルコーも中にいけたらいんだけどね。


いや、あの大きさならホルコーも走れるかもしれないけどさ……。


僕達以外の冒険者はこちらにはあまり興味がないらしく、

作業を順調に進める僕達をちらりと見たきり、干渉してこない。


『下手に組めば分け前が減ると思っているのか、

 子供2人は足手まといと思っているか……ま、両方か』


(否定できないのが辛いね。ははっ)


おかずは普通に旅の時に食べるような物だけど、

パンだけはアイテムボックスに仕舞ったままの

出来立ての物をこっそりと取り出してマリーに……あ。


「ほほう……」


見回りなのか、いつの間にかダグラスさんとミルさんが立っていた。


僕達自身と彼らが壁になって、他の人にはパンは見えていないはず……。


「た、食べますか?」


冷や汗のような物をたらしながらマリーが問いかけるけど、

2人は首を横に振って辞退した。


自分達だけ楽をしてもな、ということらしい。


採取の時には頼りにするかもしれんな、とだけささやかれ、

僕達はパンを手にしながら2人を見送るしかなかった。


当然、パンは冷めちゃったよ……うう。


特につっこまれなかったのは不幸中の幸いというべきなのかもしれないけど、

僕のアイテムボックスがちょっと普通じゃないことは

わかってしまったと思って行動した方がよさそうだ。


「ごめんね、マリー」


「いえ、私の方こそ……うっかりしてました」


これまでの調査の結果、アイテムボックスの中で時間が過ぎるのは普通で、

遅くなるもの、早くなるもの、あるいは止まるもの、とかあるけど

やはりその分高いらしいことがわかった。


『そのアイテムボックスをよこせ、とは言わないだろうからな……』


本当に、そこは救いと言える……かな?


ちょっとというか、かなりドキドキの夜を過ごし、翌日。


まだ廃墟を朝靄が包む中、兵士の割り振りが始まっていた。


僕達は3陣目に合わせようと思う。


丁度ダグラスさんらと一緒だ。


そのまま徒歩でエルダートレントに近づいて行った時だ。


何か、声を聴いた気がした。


(ん?……なんだろう)


「マリー、聞こえる?」


「あ、よかった。私だけじゃなかったんですね」


きょろきょろとあたりを見回しながら、

僕とマリーは声の主を探し……前を向く。


何度聞いても、このエルダートレントっぽいんだよね。


「何かあったのか?」


「いえ、まだちょっと……もう少し進んだらにします」


ダグラスさんの問いかけにあいまいに答えつつ、

声が大きくなるかな?と思いながら前に。


『エルフの里でのことを思い出すんだ』


(あっ……そうか)


あの時、飲み込めた物はエルフと同じように木々と接することが

できるようになっていくという不思議な物だった。


意識を魔法を使うかのように整え、声に集中する。


すると……言葉にはならないけど、誘われた。


トレントの幹(と言っても木で出来た壁同様だけど)の一角に何かを感じたのだ。


「こっちに何か感じます。行ってみますか?」


「通常の道は先の2組が探すだろうな。よし、行こう」


ダグラスさんを含め、10名ほどの兵士が僕とマリーのあとに続く。


あっさりと着いてきてくれてるけど、いいんだろうか?


そんな疑問は、その場所で幹に手を振れた途端、

人が一人通れるほどの穴が開いていくことで霧散した。


「やはり君を誘って正解だったな。警戒しながら進もう。

 各員、戦闘準備!」


ダグラスさんの号令の元、僕達はエルダートレントに乗り込んだ。

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