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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-089「竜の巫女-5」

王子からの直々の依頼の出発日。


預けているホルコーの顔を見に行くと、

なんだかホルコーのいる場所だけ妙に豪華に感じた。


気のせいかな?と思ったけど飼い葉も多いし、

水も並々と……あれ、もしかして?


気になって聞いてみると、やはりどこからかこの馬の持ち主は

重要な役割を担っているのでしっかりと上から話があったらしい。


どれだけ動きが速いのだろう……フェリオ王子……。


良い環境なのはありがたい事なので、

それ自体は感謝というところだけど気になるよね。


「ファルクさん、時間が」


「あ、そうだね」


耳に届くのは教会の鐘の音。


決まった時間に決まった数、鐘を鳴らすのは長年の風習だ。


『むかーし、時計も作ったんだけどな。使わない人が圧倒的に多くて廃れたんだよな』


(そうなんだ……これ、便利なのにね)


ご先祖様の残念そうな声に、僕は虚空に浮かぶ時間の数字を見る。


確かに約束の時間までもう少しと言ったところだ。


あれかな、時間に縛られた生活は嫌だってところかな?


商売の約束とかには互いに持ってるといい気もするけど、

一般の人はきっとそこまで時間を気にしないんだと思う。


始めて歩く王都のため、マリーに先導してもらいながら目的の教会へ。


教会と言えば普段は礼拝に来た人などが行き来するんだろうけど、

今日ばかりはどうも違うようだった。


入り口からして、強そうな兵士さんが2人立っていて、

僕達を呼び止める。


「依頼を受けてきました。マリアベルとファルクです。確認お願いしますね」


「少し待て」


こちらを否定することなく、兵士の1人が中へと駆け出していく。


見た目が子供だからと馬鹿にしないあたり、

ただの兵士というわけではなさそうだった。


それもそうだよね、話の通りなら王族直々なんだもの。


兵士も実は中身は近衛とかに違いない。


しばらくして、中に入っていった兵士の1人が戻ってくる。


「確認が取れました。どうぞ」


「ありがとうございます」


マリーに習って頭を下げつつ中へ。


よく見ると教会の建物も、庭もなんだかこれまでの物とは違う。


豪華という訳じゃないけど、しっかり手入れの行きわたった立派な物だ。


中もまた、その印象は間違っていなかった。


「なんだか、気持ちがいいね」


「そうですね。祈りの場って感じがすごいします」


先頭を行く兵士さんを見失わないようについていきながら、

そんな会話をする僕達。


なんというか、お上りさんみたいだ。


僕は田舎者だからそれでいいんだけどね。


『地下から清浄な気配を感じるな。建物全体を整える魔道具でも埋まっているのかもしれない』


なるほど、感じていた気配はそう言う物が原因なのかもしれないのか。


まだまだ僕の知らないことはたくさんある。


あっさりと両親を見つけられる魔道具とかあったら……それはそれで困るかな。


きっと世の中から家出が無くなっちゃうし。


と、そんなことを考えていると兵士さんがある部屋の前で立ち止まる。


扉をたたき、僕達の来訪を告げると中へどうぞと言い残して去って行った。


「行こうか」


「ええ」


短く言って、扉に手をかける。


若干の軋みの音を立てて開いた扉の向こうはほとんど外だった。


中庭……かな?


そこには10名ほどの装備のしっかりした兵士さんたちと、

侍女らしい数名の女性、そして見覚えのある2人がいた。


「おや、思ったより早かったね」


「(ペコン)」


にこやかに笑うフェリオ王子と、恥ずかしそうに頭を下げるシータ王女だ。


王子は前のような格好だけど、シータ王女は少し違う。


高そうだけど、まだ動きやすそうな形だ。


それでもまあ、一着いくらだろうな?と思う様な気配を感じるけど。


「たまたまですよ。えっと、冒険者は僕達だけですか?」


「そうさ。見たのは君たちだけだからね。他の人は見ていない。

 だからこそ、迷う必要がないのさ」


気になって問いかけると、今日の献立はもう決まってるよ、

と言わんばかりに王子はそう答えてきた。


この前言っていた予知?ではそういうことらしい。


ちらりと兵士さんらの表情を伺うけど特に部外者が入ってくることへの不満は見えない。


とはいえ、それが顔に出るような人なら近衛のような良い立場にはなれないのかもね。


あまり失礼のないように、しっかりと過ごすしかないかな。


「質問はそれぐらいかな? じゃ、シータや皆と一緒にあれで向かってくれるかな」


「あれは、転送門ですか」


王子が指さす先にあるのは、派手ではないけど

雰囲気がばっちりな装飾が施された変哲の無い枠のような物。


でも1度転送を味わったからこそわかる。


あれが転送門であると。


なんだか独特の気配があるんだよね。


「うん。行った先にはちょっとびっくりするかもしれないけど大丈夫でしょ」


不安は残るけど、王子がこう言って、王女が行くのだから危険ということは無いと思う。


手招きされ、兵士さんらに囲まれながら転送門をくぐり……僕達は移動した。


………


……



「竜の眠る場所へようこそ……はちょっと違うかな。みんなも、おにーちゃんもおねーちゃんも

 悲しい顔はだめだよ? ここは、ドラゴンさんが静かに、それでも笑って眠る場所なの」


中庭とは違う陽光が僕達を照らす。


目に飛び込んできたのは、白、白、白。


でも、それは王都の白さではなく、骨の白さだった。


驚く僕達に、シータ王女は出会った時のように子供らしい声でそう呼びかけてきた。


「こんなに……すごい」


マリーが呆然と呟くけど、僕も驚いて周りを見ることしかできない。


見渡す限り、人の手は全くと言ってもいいほど入っていない景色が広がっている。


そこは竜のお墓だった。


巨木の下に、何体もの竜と思わしき骨が転がっている。


それぞれが最後の姿勢のままなのか、折り重なったような姿勢だ。


それ以外にもこんもりと土が盛られている場所は、埋葬された物だろうか。


「儀式の度に、我々が1頭ずつ、出来る限りですが人のそれのように埋葬しております」


真面目な声で兵士さんの一人がそう教えてくれ、さっそくとばかりに10人が動き出す。


どれを埋葬するのかは決まってるようで、てきぱきとしたものだ。


その間シータ王女は何をするのかと思っていると、

侍女さんを引き連れたままの王女は僕達を手招きし、歩き出した。


「最初は私も泣いていたんだけど、そしたら竜さんが泣かないで、

 竜も人もいつか死んでしまう。だからこそ笑顔で送り出してほしいんだって。

 だから、ここでお祈りするの。みんな気持ちよく過ごせますようにって」


歩くことしばし、たどり着いたのはここだけ人工物と思える祭壇のような場所だった。


そこで力尽きたのか、あるいは仲間の竜が運んだのか。


「あれは……まるで生きているみたい」


「うん……」


祭壇の向こう側には目を閉じ横たわる竜が3頭。


地竜ではなく、飛竜の類だろうか。


「ううん。みんな死んじゃってる。聞こえるの。声が……」


じゃ、始めるよ。


そう一言呟いてシータ王女はどこからか取り出した懐剣を手にして片膝をつく。


風が吹くようにシータ王女から柔らかな魔力が噴き出して周囲に広がり、

淡い、優しい光の魔法陣が展開する。


咄嗟に、それが儀式のための物だと感じた。


こうして祈り、魂を慰め、そして眠らせるのだろうと。


「え? 何? そんな!」


突然、その予想を覆すような焦った声がシータ王女から漏れた。


「マリー!」


「はいっ!」


侍女さんたちはマリーに任せ、僕は明星を抜き放ってシータ王女の前に出た。


視線の先では、力尽き、倒れ伏していたはずの飛竜の躯。


それが少しずつだけど、動こうとしているのが見えた。


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