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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-087「竜の巫女-3」



「渡して終わりだと思ったのに……」


「ごめんなさい。まさかここまで通されるとは思っていませんでした……」


(いや、マリーのせいじゃあないんだけどね?)


思わずのつぶやきにこちらも落ち込んだ様子のマリー。


無理もないと言えば無理もない。


今、2人がいるのは明らかに高い調度品も並ぶ立派な部屋。


同じく高そうな椅子の間にあるのは大きな机。


これは恐らく、何かあった時に飛びかかれないような

距離、大きさということじゃないのかなあ。


だって、ここは王城の一角だからね。


落とし物の指輪を届けるべく、王城に向かった僕達は

マリーの先導の元、正門ではなくそのそばにある守衛のいる通用門に顔を出していた。


さすがに正面から堂々と入るにはしっかりとした事前の許可がいるし、

正門から出入りするのってある種の儀式めいた物でもあるからね。


マリーが守衛の兵士の人と話し、慌てて1人が城内に入って行ってしばらく。


お城から出てきたのは身なりの良いおじさん。


王様、ではないだろうからそこそこ偉い人かな?


その人は僕とマリーを見て、疑問を少しばかり顔に浮かべながらこちらにやってくる。


確かに、若い2人がお城に用があるっていうのはなかなかないよね。


「キミがオルファン家の後継者とのことだが……書状は本物のようだね。

 それで、用件はそれだけということかな?」


「いえ、こちらをご覧ください」


そういってマリーがそっと懐から取り出した例の指輪。


マリーのハンカチのに包まれた輝きはやはり、どこか特別な物。


そしてその紋章も相手の目には入ったらしく、

無言で視線だけで理由を問われていることを感じる。


「とある場所で……拾いまして。お届けに上がった次第で」


「しばし待たれよ。ああ、いや。もう中へおいでなさい。そこで話をしよう」


困惑のままの僕達を半ば強引にそのおじさんは城へと連れ込む。


今思えば、あの人って宰相とかそういった立場の人だったのかな?


途中の兵士や侍女の人達も頭を下げてばかりだったからね……。


そうして案内されたのがこの部屋で、

どこからかやってきた侍女の人からのおもてなしを受けること恐らく1刻ほど。


「か、帰っちゃダメかな?」


「たぶん、駄目ですねえ。出直すのも……できればやめた方が」


「そうだな。そのほうが良い」


僕が色々な意味で震え出した時、

開いたままの扉から誰かが入って来た。


慌ててそちらを見ると、まるで彫刻の様な美形の男性がいた。


光沢を感じる白地に金糸の装飾がある衣服をまとい、

流れるような金髪に緑の瞳。


すらりとした背丈の上にあるのはいかにも、な美形の顔。


どう考えても……。


「まさか、フェリオ王子!?」


(だよね、王子様だよね、この人)


マリーの叫びに、微笑みながら男性、

フェリオ王子……でいいのかな?は僕達の前にある椅子に座った。


机をはさみ、反対側と言ったところだ。


「うん。はじめまして、だね。本当なら門のところで出会ったのが話し相手だけど、

 ちょっと変わってもらったんだ」


椅子に座る仕草1つとっても洗練されている。


僕も社交界とかに出てたわけじゃないけど、そう感じたんだよね。


『お、あの子もいるぞ』


(え? あ……)


ご先祖様がそういうと同時に、勝手にくいっと顔が動くとそこにはもう1人の人影。


「あ……」


相手もこちらが見ていることに気が付いたようで、小さく声をあげた。


街で出会った時と大きく違うのはまずは服装。


一着いくらかかるのかな?と思える単純ながら

背格好によく似合うドレスに身を包み、

被り物で隠れていた髪も今は隠さずに背中に流している。


頭などには可愛らしい装飾品を身に着けて……。


ちょっと寂しいなと思うのは右手。


(ああ、そうか)


それもそのはず、彼女の右手にはまるはずの指輪を僕達は拾ったのだから。


「ほら、こっちに来なさい。すまないね。

 城内だとすごく人見知りなのさ」


「いえ、お目にかかれただけでも光栄なのにそれ以上は」


無難にそう答えながら、僕は内心で──よかった、と思っていた。


最初はなんてことをしてくれたんだとばかりに

怒られるかと思ったけど、優しい人の様だ。


手招きされ、扉に隠れていた少女、シーちゃんがとてとてと

フェリオ王子の横へと駆け寄ると、ちょこんと椅子に座った。


まるで大きい人形のように可愛らしい。


「改めて名乗ろう。私はフェリオ、そしてこっちが末の妹シータだ。ああ、座ったままで構わないよ。それに何かの会談という訳でもない、細かい礼などは不要だ」


「そうは申しましても……いえ、ありがとうございます。自分がマリアベル・オルファン、

 そしてこちらが冒険者のファルクさんです」


言葉を交わす間にも、どこからか護衛であろう兵士さんたちが5人ほど集まり、

無言かつ全く動かずに配置についている。


完璧な近衛だよね、これは……。


「オルファン家のごたごたは聞いてるよ。でも解決に向かったと。

 おめでとう、でいいのかな。

 さて、今日の話はそれではなく、持ってきてくれた指輪に関してなんだ」


来た、とこちらが身構えると王子は横にいたシータ王女の腰を掴んだかと思うと、

ひょいと持ち上げて自分の前に彼女を持ってきた。


「兄様、やっ」


突然のことにシータ王女が顔を赤くして動き出すがびくともしない。


意外と鍛えてるね、王子。


「ほら、シータがこれを無くしたからみんな慌てただろう?

 悪いことをしたらごめんなさい、だ」


「は、はい……。えっと、ごめんなさい」


王子に抱えられたまま、とどこかおかしな姿ではあるけど、

シータ王女はこちらを見てしっかりと頭を下げた。


「王族に頭を下げていただくほどの事はしていません。

 私たちはたまたま、そうたまたまに見つけた物を届けにあがっただけです。

 そうですよね、ファルクさん」


「ええ、その通りです。迷惑だなんて僕は思ってませんよ。

 それよりも普通なら出会えない人と出会えて幸運なぐらいです」


田舎者の僕でも、偉い人が頭を下げるのがどういった意味を持つのか、大体わかる。


シータちゃんは末っ子ということで王様になることはまずないだろうけど、

それでも本当なら縁の無い立場の人だ。


「あははは! 思った通り、いや、それ以上に面白い子達だ。

 シータが気に入るわけだ。城に戻ってきてから君たちの話ばかりするんだ。

 おねーちゃんとおにーちゃんが仲の良いちゅーをしてた、ってね」


シータ王女を椅子に戻し、そのまま笑うフェリオ王子。


というか王子に知られる僕達のキスってもう、喜劇と言ったほうが良いの?


「それはその……なんといったらいいか……」


マリーもさすがにそう困惑を口にするのが精一杯の様だった。


当然だよね、さすがに。


その後も雑談めいた話が続くけど、平和な物だ。


『何かあるのかと少し踏み込むべきかもしれんな』


「お話の途中ですが、わざわざ王子様がこちらにということは……僕達に何かご用ですか?」


「ふむ……あると言えばあるのだけど……。中身は当日まで出来れば言いたくはない。

 それでも良ければギルドを介して君たちに指名依頼を出すよ。どうだい」


僅かな沈黙。


その間に王子の言葉を理解すべく整理する。


王族が指名依頼を出す、これ自体は全くないわけじゃないはずだ。


相手には受ける義務はないけどね。


ただ、知り合いでもないのに指名されることは無いので、

大体は受けているそうだけど……。


「自分たちでよければ。さすがにどこかの国につっこんでこいとか

 そういったお話ではないですよね?」


「あはは、そうだね。そういうことじゃないよ。

 じゃあ、後で楽しみにしてて。さて、送らせよう。また後日」


そういって王子は来た時と同じようにあっさりと帰っていった。


僕とマリーはそのまま侍女さんと兵士に連れられて出口へ。


こうして、王都での騒動は僕を逃がさず包み込んでいくのだった。


おかしい。シータ王女は予定ではJKぐらいだったのに。

なんでJSに……全部他2本のせいや!(待ちなさい


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