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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-086「竜の巫女-2」

「わっ、ねーちゅーしないの?」


ドラゴンもどき、もとい……女の子かな?は器用に窓から滑るように

部屋に入ってくると、抱き付いたままの僕とマリーを見てくる。


被り物はドラゴンを模したであろうひどく精巧なもので、

同じような柄のマントと服装のせいでドラゴンのように見えたのだとわかる。


下はひらひらしたスカートなので女の子なのは間違いない。


くりっとした目、整った鼻立ち、被り物から垂れる髪の毛は見事な金髪。


肌の白さも相まって、見た目の年齢を差し引いてもすごく可愛らしい。


ただ、今は好奇心でいっぱいといった感じだ。


残念ながら、他の部分は被り物のせいで見えないけどね。


「貴女、お名前は?」


「名前? えっと、シー……あ、言ったらゃだめだったんだ。シーでいいよ!」


シーと名乗った少女の背丈は被り物を考えても僕の胸ぐらい。


田舎で留守番してる妹ぐらいだ。


ということは10歳にもなってないぐらい?


見た目を裏切らない可愛らしい声に、

僕のマリーも抱き合ったまま顔がほころんでしまう。


「そう、シーちゃん。ちゅーが見たいの?」


「うんっ。おとーさんもおかーさんも仲良しの証だって言ってたの!

 おねーちゃんとおにーちゃんは仲良しさんでしょ? だからみたいなーって」


だから、が何故そうつながるのかはよくわからないけど、

この子が悪い子ではないんだろうなと感じた。


問題はなぜこんな格好をしているのかと言ったところだけど……。


くいっと引っ張られる間隔。


そちらを見ると、準備万端ですと体全体で表現しているマリー。


こういう時は沈黙することが多いご先祖様はもちろん無言だ。


(邪魔をする気はないとかいうけどさ、このほうが面白いからでしょ!?)


心の中でとりあえず叫んだ僕だけど、目の前の現実は変わらない。


ここで動かなければきっとがっかりさせることだろう。


覚悟を決めろ、ファルク!


「わ…わ! ちゅーだー!」


すごい喜んだ様子のシーちゃんのいうように、僕は……ん?


キスをしたままという少々アレな状況ではあるけど、

どうも階下が騒がしいような。


「ぷはっ。なんだか騒がしくない?」


「ふぇ? あ……本当ですね」


段々とそのざわめきは近づいている気がする。


いたか?とかそういう声も一緒だ。


「いっけない! 見つかっちゃう。おねーちゃん、おにーちゃん、またね!」


「あっ、シーちゃん!」


恐らくはこの近づいてくる声のせいか、

シーちゃんはひどく慌てた様子で窓枠に足をかけ、

そう言って飛び去って行った。


すごい身体能力だ。


とても真似できないんだけど……?


『魔道具を装備してると見るのが妥当だな』


(もう、今さら出てくるの?)


実際問題、ああいう時に出てこられても困るのは困るのだけど、

少しは助けてほしいなと思う訳で。


そして、騒ぎの元は僕達の部屋の前にもやってくる。


ドンドンと叩かれる扉。


『王都警備隊の物です。主人には許可をもらっているので開けさせていただきますよ』


「はい、どうぞ」


鍵は中からしかかけられないけど、

夜寝ているとき以外は開けたままだ。


そうして入ってきたのはいかにもな騎士風の男性5名ほど。


部屋を見渡し、僕達しかいないのを見ると

代表者であろう騎士が前に出てきて頭を下げた。


「失礼しました。こちらに王j……オホン、不審者が逃げ込んだという通報がありまして」


「変な影なら窓の外に見えましたよ。どこかに飛んで行っちゃいましたけど」


言いかけた内容が気になるけど、僕は嘘も本当も言わずに答え、

それを騎士たちは疑わずにまた出ていった。


後に残るのは奇妙な沈黙と僕達だけ。


「よかったんですか?」


「正直に言うのもどうかなって。シーちゃんは内緒にしてほしそうだったしね」


返事をしながらシーちゃんが飛んでいった窓枠に近づいたときのことだ。


指先に触れる硬い感触。


「あれ……なんだろう、指輪?」


僕には小さい、子供用の……って!?


どう考えてもあの子のだよね?


『素材は精霊銀が主、何やら紋章があるな』


指摘に慌ててその紋章部分を見ると僕でさえわかる紋章が。


太陽と宝石を題材にしたオブリーンの王家紋章。


どう考えても落ちてちゃまずい物だと思う。


「マリー、これ」


「え? ああっ、なんてこと……今すぐだと問題が逆に起きるかもしれません。

 ひとまず街で用事を済ませてからにしましょう。

 そうしておけば途中で拾った、ってまだ言えるはずです」


先ほどの騎士たちを考えると、

確かに今すぐ名乗り出ると問題が起きそうだ。


幸いにもまだ日は高く、一部は用事を済ませることも出来そうだ。


僕達の王都での目的は、情報収集、そして武具の更新だ。


明星以外の武器も手に入れておきたいし、

マリーの防具も手に入れないといけない。


そして、ずっと仕舞ったままのオーガの角の加工も。


賑わいの続く街に出ると、僕達はまず武具店、あるいは鍛冶場を探した。


それらしい通りに出ると、いくつものお店が軒を連ねる場所に出た。


人気店は冒険者らしい人であふれかえっている。


さすがにこの混雑の中で頼むのは、と気が引けてしまうのだけど、

マリーも一緒の手前、あまりおどおどするわけにもいかない。


ひとまずと店の前を冷やかしながら進むことしばし。


僕はある路地の前に立っていた。


「どうしました、ファルクさん」


「あれ、扉だよね?」


不思議そうに僕を見上げるマリーに僕はとある場所を指さす。


扉の上に看板で金床にたたきつけているハンマーの図があるから

多分武具店なんだけど……なんでこんな場所に?


「不人気店でしょうか」


「だとしても最近できたか、ずっとある意外と生き残ってるお店かだよね。

 気になるからいってみよっか」


ちょっと怖いけど、中を見ないと始まらない。


ゆっくりと路地に入り、その扉を手前に引く。


思ったよりも簡単に開いた扉をくぐり、

中に入るとそこは職人の場所だった。


様々な素材、持ち手となるような木材もいくつもある。


と、奥の方に火の光。


「なんでえ、今度の客は随分小さいな」


そこからぬっとあらわれたのは一瞬、人間かを疑いそうなほどの体躯。


ドワーフ……ではないみたいだ。


「は、はい! 外の扉を見て気になったので」


マリーの驚きながらもしっかりした返答に、

相手は満足したようで笑顔を浮かべてくれた。


人間……だよねえ?


「よく言われるがドワーフじゃあねえ。師事はしたがな。

 で、外の扉にゃ魔法がかかってる。魔法使いじゃないと見つからないようにな。

 ということで、どんな魔道具が必要だい?」


どかっと椅子に座り、注文票らしい物を手にする男性。


僕はマリーと視線を絡ませ、頷いてからオーガの角を取り出した。


「これを使って、小手あたりをお願いしたいです。

 出来れば魔法の発動補助のためになるようなものを」


「ふうむ? 良い鮮度だ。昨日今日に狩ったみてえな……ああ、お前さん魔法の袋持ちか」


さすが専門というべきだろうか?


オーガの角の目利きの段階で指摘されたことに内心驚きながら、

もう隠せるものでもないので頷く。


「なるほどな。じゃあこれをふたつに割って、二人用の小手でどうだ。

 オーガの角は内側に配置して作ってやろう。で、素材だが……表には鱗系統が無難だが、

 何かいいのあるか? なければリザードマンの奴で行くぞ」


「これ使えますかね」


そういって職人に差し出すのは若い地竜の鱗1枚。


職人は驚愕の表情を顔に張り付け、

僕の手から鱗をひったくるようにしてみる。


「地竜……しかも若竜だな。これはこれで使いやすい。柔軟性が産まれるからな。

 もしあと7枚ぐらいあるならタダでいいぜ」


「いいんですか? でもそちらの儲けが……」


心配した僕に、職人が三度破顔して笑う。


豪快な笑い声で、もし大通りなら皆が振り向きそうなほどだ。


「研磨の時の粉でも十分利益が出る。心配すんな」


僕の心配が杞憂だと知り、改めて残り7枚を取り出す。


「おいおい、本当に持ってるのか。

 まあいい、あるもんはうまく使ってやる。

 三日だ、そうしたらできてる」


「ありがとうございます! さ、マリーいこっか」


2人して頭を下げ、再び喧騒の中へ。


では……これからが本番だ。


「マリー、よろしく」


「ええ、と言っても私も一度行ったかどうかぐらいですけどね」


ここからでも見える王城へ、マリーの先導に従って向かう僕。


まさかという出会いがいくつも待っていると知らずに……。





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