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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-085「竜の巫女-1」


オブリーン王都は白の王城とも呼ばれる。


専用の場所から切り出された純白の様な石材を使い、

主要な建物を建築しているからであり、

それらをしっかり清掃することは担当する者の義務であり、

そして喜びでもあるという。


自らが白の王城の歴史を1つ1つ積み上げるのだ、と。


王都に戻るという審問官2名の護衛兼同行者として、

僕とマリーは一緒の日に出発することにした。


なお、マリーが旅に出ることは問題にはなったのだけど、

かなりの勢いでマリーが押し通し、精霊契約による宣誓もあるのだから、

ランドルさんもちゃんと働くはず、と最後には説得しきった。


(だからって礼服まで持たなくても……)


僕はアイテムボックスに仕舞い込んだ荷物の1つを思い浮かべて静かに息を吐いた。


あのゴーレム戦での怪我自体はすぐ治ったのだけど、

皆に止められて2週間、オルファン家に滞在していた。


その間にいつのまにか採寸され、

使う機会があるかもということで礼服を渡されたんだよね。


マリーがオルファン家の継承者として認められたのだから

その相方としてそういう場所に出る可能性があると聞かされ、

僕の顔が引きつったのは間違いない。


当然、いらないなんて言えるわけもなく、

マリーに恥をかかせるわけにもいかないので受け取ったわけだけど、

もう、なんていうか使われてる生地を考えるだけで怖くなる。


僕、村の出身だから何もできないんだけど……マリーにその時は教わろっと。


そしてホルコーの背に揺られ半日。


僕達は最初の野営場所で夜を迎えていた。


「ここからどのぐらいかかるのですか?」


ぱちぱちと音を立てるたき火でお湯を沸かす間、

僕は審問官の1人に声をかけていた。


「何、そんなにはかかりませんよ。いい方法があるので」


白髪の混じったその審問官はそういって明日のお楽しみです、と詳細を教えてはくれなかった。


ご先祖様に聞いても、明日にはわかる、と意地悪な答え。


ならばマリーに、と思えば彼女は静かに微笑むだけだった。


少しもやもやしながらも、旅の疲れは僕を眠りへと誘い、

いつの間にか翌日となっている。



翌朝、前の日と同じように黙々と進んだ先に建物が見えてくる。


「あれは……」


僕が見つめる先には、単純ながらしっかりした石造りの建物。


周囲には兵士らしい人が何人もいる。


そこに迷わず進む審問官に僕も慌ててついていくと、

何事かを話した後、兵士たちがどいてくれ、扉が開く。


「さあ、行きましょう。転送門の使用時間は限られていますからね」


『やっぱり、転送門か』


戸惑いのまま、言われるとおりにその門らしきものをくぐると、

明らかに先ほどとは違う場所にいた。


虚空に浮かぶ地図もまた、真っ黒な状態だからだ。


「あれは転送門と言ってですね、特別な遺物なんですよ」


呆けたままの僕にマリーの優しい声が届く。


マリーの説明によれば古い古い昔に、英雄たちや神様は世界を旅するのに不便だと

乗り物とは違う物を用意したのだそう。


それは触れる、あるいはくぐるだけで異なる場所に飛ぶ魔法の力。


すごい物になると一瞬で大陸の端から端へと移動できるらしい。


その後、第二次精霊戦争後に各国が厳重に管理し、

国内の緊急事態等に例外的に利用できるようにしたそうだ。


(大陸の端から端……どんだけすごい魔力の持ち主なんだろう)


『いや、これは大地や空にいる精霊の力を借りるからな。

 実は利用者の消耗が無いのが特徴なんだ』


ご先祖様の説明に改めて驚きながら、通ってきた転送門をまじまじと見つめる。


この古さ、なんだか圧倒されるね。


「では参りましょうか。本当なら緊急時以外は不用意に使えませんが、

 今回は審問官の呼び出しとその報告がありますからね。

 ここからなら王都はあと1日といったところです」


審問官の言葉に頷き、一緒に転送されたホルコーに再びまたがる。


こういう時、ホルコーとか動物の方が落ち着いてる気がするんだよね。


ホルコーは……なんというかすごいけどさ。


街道は予想より整備されており、

途中から行き交う馬車も頻繁に見えてくるようになった。


向かう先が王都なのだろうと否応にも感じさせる。


そうして、見えてくる白。


「マリー、あれが?」


「ええ、あれがそうです。ここからでも綺麗ですねえ」


心なしか、ホルコーの足も少し速足になっている気がする。


陽光に反射している白さはすごく、心を打つ。


気が付けば道を行き交う人数も増え、そろそろ馬を降りる場所となる。


「ファルクさん、はぐれないように注意してくださいね」


「う、うん」


マリーの言うように、油断するとすぐ迷子になりそうなほどの人、人。


ホルコーの手綱を引っ張りながら、必死についていく。


「このまま我々は戻りますが、お二人は宿を取られるのがいいでしょう。

 短い間でしたが、ご同行ありがとうございました」


「いえ、こちらこそ」


分かれ道で、王城の方へと向かう審問官2人と別れ、

僕達が宿を探そうとしたが、急に周囲がざわざわと騒がしくなる。


けが人でも出たのかな、と周囲を見ていた時だ。


「ドラゴンソウルだ!」


誰かの叫び声が届く。


(ド、ドラゴン!?)


一体何のことか、と改めて周囲に視線を向けると、空を飛ぶ小さな影。


というか屋根を飛ぶ、みたいな?


(あれは……人? いや、でもなんかかぶってる)


まるで絵で見たことのあるリザードマンを

二つにして足をはやした、といった感じの人影?が飛び回っている。


「というかこっちに来る!?」


羽根がはえているかのように屋根を飛び回るその人影は

僕達の方へ飛んできたかと思うと真上を通り過ぎていった。


(あれ?)


たまたま、本当にたまたま上を向いていた僕はある物を見てしまった。


呆然と、立ち尽くしてしまう僕。


「ふー、なんだったんでしょうね。人でしょうか」


「うん、人だよ。しかも女の子」


マリーのつぶやきに、思わず僕はそう答えてしまった。


案の定、マリーはこちらにえ?という顔を向ける。


「どうしてわかるんですか? お知合いですか?」


「残念だけど知り合いじゃないかな……えーっと、マリー怒らない?」


僕は返事をためらい、マリーを見るが彼女はこういう時に意外と引かないのだ。


「聞かなきゃわかりませんよ、そりゃ」


「そうだよね……えっとね、あの子の下着が見えちゃったんだよね」


音が、消えた気がした。


じわじわと、怒った顔になるマリー。


「ほら、だから怒るよねって言ったじゃないか」


「もう、ファルクさんったら!」


ぷんぷんと怒りながらも前に進むマリー。


そのままぐいぐいと手を引っ張られて宿へ。


ホルコーは私しーらないって顔してるのがちょっと憎らしかった。


『やれやれだな』


ようやく響くご先祖様の声は呆れ声。


もう、こういう時だけは静かなんだからさ。


宿にホルコーを預け、部屋に行ってからも、マリーは無言だった。


でも、時々こちらをちらりと見る顔は

困ったような顔なので怒ったままということではないみたいだ。


「ごめん」


荷物を置いてすぐ、僕は謝った。


偶然とはいえ、自分の大切な人に対していうことじゃなかったからね。


「ファルクさんも男の子ですからね。仕方ないですよ」


「ええ? そっち!?」


慌てて叫んだ僕の胸に、マリーが飛び込んでくる。


だから僕はそこで動きを止めてしまうのだ。


「でも、不安なんですよ?」


(うん、そうだろうね)


僕だって、マリーが違う男の人の事を褒めたりしたらきっと苦しくなる。


「気を付けるよ」


「ちゃんと態度で示していただかないと、ね」


背中に手を回し、体を押し付けてくるマリー。


僕はそんな彼女の顔に自分も近づけていき……固まった。


窓の外に、いたのだ。


「ファルクさん?」


その時、ガラっとその人影によって窓が開かれる。


「お姉ちゃんたち、ちゅーするの?」


「え?」


振り返ったマリーが見た物は、

僕が外で見た小さなドラゴンというべきかリザードマンというべきか悩む姿。


「きゃあああああ!?」


窓というか屋根にぶら下がったまま、僕達は謎の人影と相対することになった。


王都でぐらい、ゆっくりしてたかったんだけどなあ……。

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