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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-080「懐かしの街-3」


大陸の単一国家としては恐らく最大の国、オブリーン。


その歴史は500年を超え、1000年に届こうかとしていると聞く。


自然豊かで、遺跡も多く存在する。


宝石鉱山を中心に多くの資源を抱え、

冒険者の活躍の場も多くある強国。


長い歴史を持つがゆえに、消えた貴族もあれば産まれた貴族もある。


今、僕が向かっているのはそんな貴族の1つ、オルファン家の所有する鉱山街。


中規模ながら毎年の産出量は侮れない物で、

王都に近めということもあり重要な拠点の1つとされている。


僕が到着までに聞いた話はこんなものだ。


オルファン家の屋敷を出て2日。


出来る限り馬を急がせての移動なので道中話す時間はあまりなかった。


それでも休憩の時には自然と言葉が口から出ていく物だ。


ましてや僕は彼ら、オルファン家の兵士にとっては

いきなりやってきて次期領主と親しい間柄、なんて男だ。


そりゃあ人となりをしろうと思われるだろう。


幸いにも、出発前の手合わせでただの15歳ではないということは

わかってもらえたようだけど、それでも若造は若造だと思う。


一緒に馬を走らせる7人の兵士さんたちは

上はかなりのおじさんで、下は僕より少し上と行ったところに見える。


僕の隊列の中での位置が前から3番目ということに

もう気を使われているのだと気が付いたのは出発してすぐだった。


僕としては悔しく思う部分もあったけど、

途中での食事の支度などに魔法で火を起こしたり、

倒木を吹き飛ばしたりすることで多少は見直してもらえたかもしれない。


そうして旅をしていき、見えてきた街並み。


「あそこがそうですか?」


「ああ」


小高い丘の上で馬の足を止め、隊列を整え直す時間に問いかけると

一番歳の近い兵士が答えてくれる。


一緒に目的地の方を見ると煙突がいくつもそびえ、黒煙が上がっている。


まだ村と言った方が正しいかもしれないような規模だ。


住居と言うより倉庫と言ったほうが良い建物が多いのが目立つ。


本来であれば鉱山からの産出物を集積し、選別して輸送する拠点なのだと思うが、

今はその勢いは見当たらない。


その代わり、街の周囲に兵士らしき人間が点在しており、

ここからでも何やら警戒のためにぴりぴりしてるのが見て取れる。


やはり、鉱山にモンスターが出てきたというのは間違いないらしい。


「君に問題が無ければ、着いて報告を受けたら即座に鉱山探索に出る予定だ。

 君はどうする? 一緒についてくるか?」


横合いから声をかけてきたのは年長者の1人。


上半身を覆う金属鎧は使い込まれ、あちこちに刃で削られたような傷が刻まれている。


ただ、どれも仮に通ったとしても致命傷にならない位置にあることから

しっかりと回避した上での傷だということが見てとれる。


手首を隠すような手甲、露出しやすい二の腕等には簡易な鎖鎧。


動くことの多い下半身には革を使い、こちらも戦いの歴史を感じさせる。


他の面々も程度の差はあれど、同じような装備だ。


それらを着込む中身も僕から見ても明らかに強い。


彼らが兵士を辞めていなかったのは、

マリーの両親への義理、そしてマリーが戻ってくるだろうと信じていたからだという。


今となってはランドルさんも嫌いと言う訳じゃないみたいだけどね。


そんな相手からの問いかけに僕はすぐには答えない。


「……状況によりますね。場合によっては先に

 周辺の掃討をしてからのほうがいいかもしれませんし」


僕は、鉱山に出たというモンスターが外に出ている可能性を考え、

場合によっては2手に分かれるか片づけてから向かうべきだと主張することにした。


鉱山がダンジョンと化しているならば、

ご先祖様に聞いた話からしても外にはモンスターはほぼ出てこない。


逆に、どこからかやってきて住み着いた等の場合には

動きはそいつらの自由だ。


それがわからないうちに決めるのは早計に思えたのだ。


「同感だな。怖気づくでもなく、まっすぐ突っ込むでもない。良く学んでいるようだね」


「おかげさまで……と言うべきか、静かな日々が遠い物で」


僕の言葉に満足したかはわからないけど、

皆は笑みを浮かべ、坂を下りていく。


慌てて僕もホルコーに指示を出してついていく。


進むことしばし、すぐに門にたどり着いた僕達は馬を降り、

街の警戒にあたっていた現地の人の話を聞くことになる。


幸いにも、と言っていいかどうかはわからないけど、

どうやら鉱山内部にしか亜人は出没していないらしく、

それでも可能性が全くないわけではないので警戒はしているとのことだ。


街を見回り、被害の状況を確認した頃には時間は昼過ぎ。


まずはお腹に軽く何か入れ、それから動こうということになった。


馬を預け、僕達はそれぞれに装備を確認してから鉱山に向かうことにした。


外に出てきている形跡が無く、

モンスターが鉱山にしかいないであろうとの推測からだ。


僕の装備は明星に腰帯にぶら下げた5本の投げナイフ。


その他、背負う形にした布袋にはいくつかの道具。


他にもアイテムボックスには数本の長剣と投げナイフの予備、

ポーションやらなんやらを詰めてある。


同行する以上はどこかで見られるだろうし、

隠しながらというのは大変なので

中身の広さは別としてアイテムボックス持ちだということは伝えてある。


防具はいつも通りのミスリル交じりのリングメイルに

出発前にマリーから預かったオルファン家の倉庫にあったという

年季の入った革製の胸当て。


後はゆったり目の布の服だ。


よくよく考えたらこれでよく全身金属鎧の相手とかしてたな、僕は。


『当たらなければ、と誰もが言うがなかなかな』


(まったくだね。でも金属鎧は動きにくいんだよねえ)


頭の中で答え、僕はそのまま周囲に意識を飛ばす。


気配探知のスキルの効果に加え、僕しか見えない虚空の地図には

僕を中心に他に7つの光点。


勿論、同行している兵士の皆だ。


時折、近くを小さな反応が通るけどそれらは鳥であったり、

小動物であったりと今回の目標ではない。


馬車が通れる幅に整備された道を進む間、

妙な気配や襲撃は特になかった。


気疲れしちゃいそうなぐらいかな。


(鉱山に出るモンスター、か。確かこの国最大の鉱山も出るんだったかな?)


『ああ、スピキュール鉱山は昔からの鉱山だ。鉱山としても魅力的だが、

 中に出る魔物も数が多い。専門に潜ってる冒険者もいるはずだろうな』


となると、今回の鉱山も場合によってはモンスターはいなくならないかもしれない。


何かこれだという原因が無い場合、それはもう、そう言う物として定着してしまうのだ。


ただ問題は、最初の精霊戦争、そして第二次精霊戦争前後では

多くのダンジョンが産まれ、あるいは鉱山が復活して来たそうだけど

それ以外の時期、つまりは平和な時期にはダンジョン化した鉱山の話は

ほとんど聞かないということだ。


まあ、全くないわけじゃないのが気になるのだけど、ね。


見えてくるぽっかりと空いた山肌の穴。


周辺には作業員が残していったと思わしき道具や荷台が転がっている。


まるで巨大な顔が口を開いています、と思えそうな場所へと

互いに頷き、松明代わりの魔法の灯りを展開してひとまず様子をうかがう。


魔法の灯りは奥の方までかろうじて照らし……あれは!


『さっそくか。大歓迎ってとこだな』


「来ました」


まだ目でとらえるにはやや遠いであろう距離に

地図に浮かぶ赤い複数の点。


明らかな敵意を持った何者かだ。


僕の声に、疑うことなく7人はそれぞれの武器を構える。


事前情報通りならそう苦労はしないはずだけど……。


僕もまた明星に手をかけ、やってくる相手を迎撃するべく意識を切り替えていった。


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