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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-074「道具に善悪はあるのか?-4」


僕とマリーの魔法で吹き飛ばされたラークの召喚したゴーレム。


召喚され切ったソレは庭に置物のように今は立っている。


(地面があれだけ沈んでるとなれば重さも相当な物。

 正面から受け止めるのは危ないな)


ラーク自身は先ほどからわめくようにしているだけでほぼこちらを見ていない。


と、ゴーレムが急に動き出した。


その後ろでラークは何かをわめきながら何もない場所にこぶしを振り回している。


ゴーレムもまた、なぜかあちこちにこぶしをたたきつけ始める。


「雷の射線! うそ、はじかれた!?」


マリーの魔法がゴーレムの脇を抜けてラークに迫るも、

透明な何かにはじかれる。


恐らくは殺してしまわないように手加減したはずだけど、

それでも何もないところではじかれるのはおかしい。


何かあるようには見えない。


『魔法障壁、もしくはゴーレムがそういう能力を持っているか、だな』


「ゴーレムを先に何とかするしかないか……。セリス君、君が打撃の中心だ。

 僕とマリーはゴーレムの動きを止めるよ」


「そうですね。すぐに兵の皆も来るでしょうし……」


大筋を決め、僕は駆け出す。


このままだと庭もとんでもない状態になるしね。


……既にそうなのでは?というのは内緒で。


目標のゴーレムの大きさは僕の3倍ほど。


もう見ているだけで全身の硬さというか、

材料の贅沢具合がわかるというものだ。


半年分というのははったりではないらしい。


「ラーク!」


「ふひ? マリアベールゥ……そこにいたのかい」


マリーの叫びに、動きを止めてラークが体ごとこちらに向く。


同時に動きの変わるゴーレム。


僕が思ってるよりラークはゴーレム操作が上手いのかもしれない。


動きの割に細かな指示を出しているようにはとても見えないからだ。


まるで本人とつながってるような……あるのかな?


マリーとラークの間に割り込んだ状態の僕が

まるで見えてないようにゴーレムが右腕を突き出してくる。


速いと言えば速いけど、わかっている攻撃であれば僕もマリーも回避は容易だ。


横に抜け、目の前に現れたゴーレムの右腕へと仕掛ける。


「ブラッディ・クロス!」


少し魔力が抜ける間隔と共に、明星がゴーレムの手首へと吸い込まれ、音を立てた。


同時に僕の視界が揺れ、反対側に回り込むように移動してもう一撃。


結果として僕はゴーレムのお腹の前に出ることになる。


ゴーレムが戦闘用かどうかと言われれば戦闘用なのだろうけど、

動きを覚え込ませる機会が多かったとは思えない。


実際、ゴーレムはわざわざ左腕を自分のお腹に向けて突き出す形で繰り出してくる。


回避してしまえば自分の体に当たるのにね。


「斬岩剣!」


しゃがみこみ、飛び上がるようにゴーレムの近くから飛び出した僕と

すれ違うようにしてセリス君が飛び込み、ゴーレムの右腕、

僕が切り付けた場所に必殺の一撃を叩き込むのがわかる。


そう、硬くて大きいコイツにはセリス君のスキルが一番有効だ。


ごろんと、人の頭より大きいゴーレムのこぶしが

最初から庭にある石だったかのように転がる。


このまま少しずつ削っていってしまおう。


僕がゴーレムに対してそう考えた時だ。


「ギャアアアアアアア!」


突然、ラークが自分の右腕を抑えてうずくまる。


マリーやセリス君も驚き、ひとまず間合いを取って様子をうかがうようだ。


僕もとっさに後退し、ラークを見ると

自分の右腕を必死に触り、何かを確かめるようにしている。


「ある……ある……」


自分の手を何度も何度も撫で、つかみ、何事かをわめいている。


(ひょっとして……本当に?)


『ああ。これは……連動式のゴーレムなんて自爆するような物だ。

 とっくに廃れたと思っていたぞ!?』


僕の想像をご先祖様が肯定し、僕の背筋はぞわっとなる。


このゴーレム、例えば核を壊すとラークも死んでしまうのではないか、と。


魔法生物の1種であるゴーレムは非常に強力だ。


食べ物もとらず、魔力供給以外休憩なども必要ない。


ダンジョンや遺跡でも古代のゴーレムが門番をしているといったことも多い。


中には自然と魔力を吸収し、自分で修復するという奴もいるらしいけど、

今は研究により一部のお金持ちや魔法使いが召喚魔法を併用することで

持ち運びができるような廉価版が作られているらしい。


一般的にはその頑丈さとその割に安い費用のために決まった場所での防衛に使われるそうだ。


お金持ちぐらいしか買えないのに廉価版というのはちょっと気になるけど、

ギルドとかで教えてもらった知識ではそうなっている。


対して、数をそろえて軍人の代わりというのは行われていない。


ゴーレム自身は行軍や細かなことをさせるには向かないのだ。


『魔力を糸とし、自身と連携させて細かな動きを可能にする秘術。

 劇的にゴーレムは動きを変えるが……ゴーレムの被害を自分も感じてしまう問題点があるはず。

 こんなもの、あいつはどこから……』


ご先祖様のつぶやき通り、なぜ、というのも非常に気になるけど今は別だ。


「2人とも、ゴーレムをどうにかすればラークも止まるみたい。

 でも倒しちゃだめだ。足を狙うよ足を!」


明星に雷の射線を魔法剣としてまとわせ、金色の輝きを手に切りかかる。


雷は何かを伝わっていく性質があることを僕はこれまでの戦いで学んでいる。


火の魔法剣も強いのだけど、当たったところだけだからね。


その点、雷の魔法剣は当たればどうやら生き物なら全身影響を受けてくれるらしい。


ゴーレムは普通の生き物ではないけども、きっと効果はある。


まだ呻き、うずくまっているラークと

同じような姿勢を取っているゴーレム。


僕は若干の憐れみを感じながらも無防備なその足元へと攻撃を集中させる。


結果として、片足を失い、ゴーレムもラークもまともに立てなくなる。


(意外とあっさりだね。これまでゴーレムを壊せる相手と戦ってないのかな)


『案外、これが初戦なのかもしれんぞ』


うめき声とゴーレムの動く金属音だけが大きく響く。


僕達はとどめを刺すわけにはいかず、動きを止めていた。


ふと、廊下側に兵士さんが何人もきているのがわかる。


「あの、ゴルダさんたちに伝えてもらえませんか?

 ゴーレムと彼がつながっていて、ゴーレムをこれ以上壊すといけなさそうだって」


「は、はい!」


僕に言われ、慌てて走っていく兵士さん。


多分、このまま放っておいても起き上がっては来ないだろうけど……。


しばらくして、ゴルダさんとランドルさんが護衛付きでやってくる。


2人とも、状況と僕の伝言から大体の事情を察したようだった。


「気絶だけで済めばいいんですけど、万が一があってはいけないかなと」


僕の言葉に、ランドルさんは青ざめた表情で頷く。


そばにいたゴルダさんの指示で、兵士の人達がラークを捕縛するべく、

恐る恐るという様子でゴーレムの脇を通っていく。


確かに、大丈夫と思っても怖いよね。


「叔父様……知っていたはずですよね。鉱山の産出物をごまかすなんて、

 その上でこんな……」


マリーもまた、こわばった声でランドルさんへと問いかける。


本当ならこの追及はもっと準備をしてから行うはずだったのに、

ラークの自白という形でかなり前倒しになってしまったようだ。


さすがに未遂に終わったとはいえ、

他の貴族をこんな目立つ場所で害するようなことを

何も無しで見逃すわけにはいかないだろう。


ランドルさんもまた、それを自覚しているのか

首を振りながら膝をついている。


恐らくは彼も止めようとはしたことがあるんじゃないかなと思う。


僕には経験が無いけど、親はどんな子供でもかばう余りに

行き過ぎてしまうことがあるという。


貴族でも人の親だったということだろうか。


『? おい、終わってなさそうだぞ。下がらせるんだ』


「え? みんな、下がって!」


予想外の警告。


その声にラークの方を向くと、呻いていたはずのラークが立ち膝のままこちらを見ていた。


「負ける? そんなことがあっていいはずがない! ボクは英雄になるんだ!」


どよめきとともに魔力らしきものが吹き荒れる。


僕は慌てて戻ってくる兵士さんらを見ながら、マリーの前に出る。


見ればセリス君もまた、僕と同じように剣を構えてラークの方を向いている。


「まったく、セリス君は跡継ぎの自覚が薄いんじゃないのかな?」


「かもしれません。でも、ここで引かないファルクさんも相当だと思いますよ」


がらりと変わったラークの纏う気配。


その気配を感じながらの軽口にセリス君もまた笑って答える。


僕達の視線の先で立ち上がったラークが靄のように包まれていく。


その靄はそばのゴーレムにも広がり……え?


「ボクハマケナイ!」


そこにはゴーレムはいなくなっていた。


いたのは……ゴーレムの皮をかぶったような人間……だった物だった。




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