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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-068「不穏の足音-6」

お話自体はのんびりじわじわ。

若干説明会。

エルファーダ家の屋敷がある街は活気に満ちている。


街の名前はそのままずばり、エルファーダ。


まあ、この場所以外も家の名前を付ける場所が多いそうだけど。


秋の収穫も終わり、冬支度ももう盛り上がりを

過ぎたところだというのに行き交う人は多い。


冒険者という物の需要はどこにでもあるのか、

人々の中には明らかに冒険者、という人間も結構いる。


(あれ、あの人エルフだ。サフィリアさん、元気かな)


ちらっと見えた中にいた見知らぬエルフの人を見、

森での出会いを思い出す。


そういえばあの時の地竜の素材は仕舞ったままだ。


適当なところで防具に使ったりして有効活用しないといけないね。


今はポーションというか薬師さん探しだけど。


「まずはどこへ? 薬師さんを探すんですよね?」


「うん。まずはギルド、そこの売店かな」


え?と疑問を顔に浮かべるマリーににこにことしたまま頷き、

良いからいいからと背中を押して僕はギルドの建物に向かう。


ギルド自体は目立つところにあるのですぐにわかる。


併設されている獲物を持ち込んだりする解体所を横目に、

僕は扉をくぐると受付の横のあたりに大体ある物を探す。


『ほほう、意外と品ぞろえがいいじゃないか』


(そうだね。買われやすい消耗品は手前にあるしね)


ご先祖様と一緒に頭の中でそう評価しながら僕はそこに向かう。


「こんにちは。ポーション見せてもらえます?」


「あいよ。お? なんだ、その年でD評価とはなかなかやるね。

 だったら……この辺かな。エリクシアなんてさすがに使わないだろ?」


恰幅の良いおばちゃんが笑いながら指さすのはカウンターの奥にある棚。


そこに置かれている透明な瓶には青とも緑ともつかない薬液が入っている。


かつての精霊戦争期に開発されたという四肢欠損を治すポーション。


それ自体は痛みも伴うような効果も限定されたものらしいけど、

エリクシアはその後、いつの間にか開発された最上級ポーションの1つだ。


こんな、というと失礼だけど、いきなり出会えることはまずない逸品である。


おばちゃんがその後に指さすのは色違いのポーションが並ぶ桶。


こちらはだいぶ買いやすい値段だし、

陳列もやや雑。


周囲を見れば他にも幾つ物冒険に必要そうな物資が並んでいる。


そう、ここはギルドに大体ある物資販売の売店だ。


武具なんかはちゃんとお店があるとして、

冒険者向けの雑貨屋がなかったりするような村や町には

よくこうやってギルドでの販売箇所がある。


逆に、専門店があるような大きさの街だと

ざっくりと揃えられるようにこうしてある程度ギルドでまとめて売っていたりもするのだ。


まとめて買えるのであちこちいかなくていいのは便利である。


その分、若干だけどお店に行くより高いけどね。


「エリクシアがあるんだ? すごいな……見るだけ見てもいい?」


「四肢欠損も治る金貨2枚のとっておきだからね。この辺から見るだけだよ」


最初よりは近づけたけど、手は届かないエリクシア専用の入れ物。


僕の目的としてはこの距離からでも十分だからこれでいいけどね。


「ほら、マリーも。良く、見てみなよ」


「え?……あっ」


僕はマリーにそう声をかけ、わかりやすいように精霊感知のスキルを発動させる。


ほんのわずかに魔法を使う時のように魔力を動かしながら、ね。


この視点で見ると、エリクシアはマジックアイテムそのものと言っていいほどの光を放っている。


もし、精霊の声が聞こえるならこうであろう。


──癒すぞ癒すぞー、何でも癒すぞー。


笑ってしまうかもしれないけど、ポーションの効能というのは

この精霊たちが結構重要なのだ。


薬草自身の良し悪しというのはもちろんあるのだけど、

これも薬草に宿る精霊の元気の良さというか、そう言ったものが直結している。


そう考えると、究極的には精霊が目一杯宿った水は

それだけで究極の回復薬の素材になるという話になる。


いつだったか父さんがそういって笑っていた。


店をやるからには扱う物の話は何でも覚えておくといいぞ、とか言ってたっけ。


これから僕が見るのはそんな感じで覚えた知識の1つだ。


「ありがと。さすがに高い雰囲気だね。身の丈にあったほうを買うよ」


「そりゃ残念。ま、いい男になったらぜひ買っておくれ。

 で、どれを買っていく?」


そうして僕は1ついくらと販売されているポーションから

5本程を選び、購入する。


そのまま室内のテーブルの1つに2人で向かい、

ポーションを並べて睨む。


他から見れば依頼の事をあれこれ考えている若者に見えてくれる……はずだ。


「ファルクさん、このポーションどうするんですか?」


「使うよ? けが人に、ではないけどね」


マリーにいって僕はさりげなく1本のポーションを

外套の裏から取り出したようにして出す。


アイテムボックスにしまっておいた1本だ。


「これ、セリス君からイオリアのダンジョン攻略中にもらったんだよね。

 なんでも家の倉庫に眠っていた備蓄の1本らしいよ」


「備蓄の……つまり、探す薬師さんの手による物ってことですか?」


若い方か引退したほうかはわからないけどね、と答えて

僕はポーションを見比べる。


『どれも新しいな……』


(うん……でも、見えた)


購入した5本はどれもここ最近作られたものだということがわかる。


ご先祖様の目(あるのかは知らないけど)からは日にちまでわかるらしいけど、

僕からは最近、一月前、三月前、半年前、一年、もっと前、ぐらいかな。


ともあれ、5本はどれも最近、とわかる。


それ以外にわかるのは精霊たちの動き。


ポーションに限らないんだけど、魔道具マジックアイテム

属性武器はその造り手の癖のような物が出るんだよね。


一点物だとなかなかわからないけど、

ポーションのように数を作ることが多いような物だと

大体同じような物になるのだ。


「あった。これとこれ、同じ人が作ってる。これで聞いても怪しまれないね」


5本のうち、2本がセリス君からもらったやつとほぼ同じ反応が確認できた。


つまり、これらは同じ製作者ということだ。


若い薬師の人は残念ながら亡くなったそうだから、

これは引退した人の作品ということになる。


「確か辞めた薬師さんはその、髪の毛がまったくないおじいちゃんでしたっけ」


「らしいね。さっそく聞いてこよう」


勿論、いきなり薬師に会いたい、と話を振るわけじゃあない。


薬草採取をするが、出来れば直接作ってほしいので

薬師を紹介してほしい、という感じで行くのだ。


受付で相談した結果、紹介できそうな相手は3名。


そのうち2人はまだ若いようなので条件からは外れる。


最後の一人は……当たりだ。


「腰が痛えっていう割には自分で納品に来るんだよな、あのじいさん。

 元々お屋敷に勤めてたっていうから腕は確かだぜ。

 直接作るような依頼を受けることは少ないらしいがな……まあ、ここに住んでたはずだ」


薬師の居場所を聞いた僕達はすぐさまそこに向かう。


そこは町はずれと言えるような一角。


『いざという時の被害が少ない場所を選べるのは良い薬師、というがさて』


薬師の薬作りは一歩間違えると思っても見ない毒薬を産み出すことにもなる。


だから、腕を磨くつもりのある薬師ほど、近くに他の家が無い場所などを好むらしい。


確かに、家がいっぱいある中で毒の煙が出て行ったりしたら大惨事だもんね。


「すいませーん! いらっしゃいますかー!」


マリーがいつもよりやや高い声で呼びかける。


「なんじゃ、若いもんが老いぼれに御用かの?」


思ったより短い時間で返事が帰って来た。


その声の主はマリーが叩いていた扉ではなく、

家の裏手から出てきた。


手桶から水が垂れているから、どうやら井戸からの水汲み中だったらしい。


「はじめまして。ファルクと言います。こちらはマリー。

 エルファーダ家のセリス君とちょっとお付き合いがありまして」


他に言いようがないので、事実だけどちょっと怪しい気もする説明を口にすると、

薬師のおじいちゃんは目を見開き、歩み寄ってくる。


この反応からすると、現状はもしかしたら街には正確に伝わってはいないのかもしれない。


「おお、それはそれは。と言ってもワシはもう引退した身じゃからのう。

 それで? 世間話に来た、というわけじゃなさそうじゃのう?」


頭はつるつるとしてしまい、陽光を反射しているが

長く伸びた白髭を撫でながら言う声はしっかりしている。


(納品もしてるし、限界を感じて引退、とかじゃあなさそうだね)


僕はその姿に安堵し、深呼吸1つ。


「ええ、ジキタの根を煎じた物を一般人に飲ませるような薬師の話をしに来ました」


「……中で聞こう。出かける支度もせねばならんかもしれんからの」


そういって薬師さんは家の扉を開ける。


僕の店の薬草が並ぶ場所や、秘密の洞窟の中のような

独特のにおいが家からは漂ってくるのだった。




理論上は精霊を閉じ込めるようにすると野菜も新鮮さを無理やりですが保てる、

という設定となっております。



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