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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-059「剣閃の先-6」

3日に1回更新ができないか実験中。

余波をこちらに感じるほどの魔法たちの同時発射。


通路ごとはじけた魔法たちは十分に威力を発揮する。


その……はずだった。


魔法がえぐった周囲の石壁が上げた土煙が晴れると、

そこには無事な姿の放浪騎士がいた。


放浪騎士はこれまでの相手より3割ほどは大きい。


そして、その手にした大盾が焦げている。


それがこちらの先制攻撃を防いだのだと何よりも語っていた。


「ちっ、たたんじまえ!」


焦りの混じったどこかの冒険者の声と共に

剣や斧等の近接武器を構えた冒険者達が飛び込んでいく。


射線を確保した弓手や魔法使いによる援護射撃の中で

僕もまた、セリス君には後ろにいてもらって前に出る。


放浪騎士は若い相手には見えない。


どちらかと言えば老齢のようにも思える。


が、その動きは熟練のソレだった。


どこかの大将軍が元なのだろうか?


太い長剣が振るわれる度に回避のために冒険者が転がり、

誰かしらが斬られそうになる。


僕はあまり目立たないように、あくまで1冒険者として過ごすつもりだった。


でも……心の中に何かが沸き立つ。


そんな姿が自分の望みだったか?と。


僕の旅の目的は行方不明の両親を見つけて一言言ってやることだ。


一旗揚げよう、というわけじゃあないんだ。


だから目立つ必要はない……はず。


でも自分にとっては他人だからと、誰かを囮に使うような真似をして

それは果たして、両親に顔向けできる状況だろうか?


「でやぁああ!!!」


その答えを僕は1つ、出していた。


明星に込められた魔法による魔法剣。


当たった相手を炎上させ、爆風をも産む割に初級分類の火球。


その力が、放浪騎士の巨大な長剣に接触し、それを弾き飛ばすことで己を主張する。


「坊主、無理すんなよ!」


どこか楽しそうに、冒険者の一人が叫んで僕の作った隙に各々の武器を繰り出していく。


多くは相手の装備や、構えなおされた大盾にはじかれるが

いくつかはしっかりと当たっている。


今のところ、効いている様子が無いのが悲しいけれども。


相手の反撃が来そうなとき、あるいはあからさまなスキルの兆候の時。


そう言った際に僕達近接組はとっさに間合いを取り、

魔法使いたちはその隙を埋めるように魔法を繰り出す。


『右っ!』


「! こんのお!」


今の戦況は多対1。


本来なら圧倒的なまでの虐殺に近い結果となるはずだった。


でも、実際には放浪騎士の強さ、反応の速さは

一人とは思えない戦場を作り出していた。


幸いにも死者はまだ出ていないようだけど、

けが人は確実に増えていた。


そんな中、暴風をまとっているかのような横なぎの一撃を

這いつくばるようにして避け、転がることで

回避と間合いを取ることに成功する。


ご先祖様の補助で軽業師のようにきれいに膝立ちながら姿勢が整う。


と、放浪騎士が隙だらけの姿となって長剣を上段に大きく構えた。


僕の目にはその剣がものすごく光ってるように見えた。


つまり、魔法だ。


『やばいぞ!』


「あれは! みんな、避けて!」


生前の物、という設定と言えばいいのか、放浪騎士は少々のスキルと

いくつかの魔法を既に繰り出していた。


目の前のこれはまだ見たことが無い。


そこに丸太でもあったなら、一発で両断されるであろう一撃が振り降ろされる。


運良くみんな回避した後だったので

相手の剣は地面へと突き刺さり……周囲を暴風に巻き込んだ。


攻撃に巻き込まれたとはいえ、ここに潜りに来るだけあって

全員がそれなりの冒険者ではあるらしい。


僕を含め、全員が建て直しを計ってそれぞれに動き出す。


と、放浪騎士は放たれた魔法を

これまでにない動きで大盾で迎撃し始めた。


それはまるで、こちらの魔法使いが使う魔法を読み切っているようだった。


(こっちの動きを学んでいる!?)


そうとしか思えない行動だったのだ。


考えることが出来るのは人間だけだと決められたわけじゃない。


モンスターやよくわからないけどこの放浪騎士だってそうかもしれないのだ。


放浪騎士を睨む僕の視界に嫌な相手が入ってくる。


通常の騎士風のモンスターたちだ。


なら、長期戦は不利!


「マリー、セリス君。援護宜しく!」


「あれは……了解です!」


「ファルクさんもお気をつけて!」


僕が2人にやってもらいたいのは放浪騎士へのけん制、ではない。


すぐ後ろにやってきた騎士風のモンスターに向けての攻撃、であった。


見れば他の場所でも同じような相手がやってきているのだ。


無視することはできず、かといって人手を割けばそれだけきつい。


現に前線に戻った冒険者達は押されている。


今はよくてもこのままでは死者も出てしまうだろう。


そう思った時、僕は自然と言葉を口にしていた。


「精霊よ、我と共に在れ。ウェイクアップ!」


世の中には魔道具自体はそれなりに流通している。


目撃者は何人もいるけど、これもそうだと押し通そう。


そう決めた僕はご先祖様の補助を最大に発揮させる。


踏み込む。わずかにずれた足がぴたりと修正された。


こうなると次の行動のしやすさが全く別物なのだ。


無言ながら、ご先祖様の気持ちが伝わってくる。


やってやれ、と。


「当たれぇ!」


僕は一陣の風となった。


放浪騎士の攻撃をかいくぐるようにして剣の間合いへ。


暴風のような一撃を受け流し、壁が迫ってくるかのような大盾を迂回気味に回避。


そうして出来た道に明星を突き出す。


浅い、でも確かな手ごたえが手に残った。


「ファイアボール!」


省略詠唱により火の魔法を剣先に生み出す。


魔法はどちらかというと想像力が物を言う場面がある。


その1つがこうした省略された詠唱による魔法の結果だった。


爆音。


そして至近距離でその魔法が発動してしまったので

僕は前髪がちりちりと焼ける音と匂いと感じることになった。


他の冒険者とは反対側に発動したので僕以外は大したことは無いはずだ。


目の前で放浪騎士の鎧がはじける。


そう、刺さった隙間から魔法を放ち、内側から攻撃したのだ。


どう見てもアンデッドだけどそうじゃないというくすんだ茶色の肌が見える。


「でかした!」


誰かの声と金属のきらめき。


横合いからの投げナイフが吸い込まれ、いくつも突き刺さるのが見えた。


『グヌウウウ!』


この戦いで初めて声を上げる放浪騎士。


その姿には焦りが出ているのがわかった。


そして周囲の僕達を振り払うかのような攻撃も

今の怪我が効いているのか、やや粗削りであった。


僕が回避しやすい程度には、ね。


当てては避け、当てては避ける。


放浪騎士が膝をつき、消えていくのはそれから半刻ほど後だった。


「終わった……?」


「ああ……坊主もあっちの2人も、やるじゃねえか。

 ここに来るだけはある、か。最初はまさかと思って自分の目を疑ったさ」


声をかけてきた冒険者に握手で返事を返す。


確かに僕達は見た目子供だからね。


驚くのも無理はないと思う。


それに、どうやら僕は他人から見ても強そうに見える動きが出来たようだった。


これは自分のみではなく補助を受けているわけだけど、嬉しい物は嬉しい。


「お、良い落とし物だ。いくつかあるぜ」


言われ、放浪騎士のいた場所を確認すると

消えずに残っていた物がある。


剣と盾とマント、ブーツ他……か。


僕は他を放棄する代わりにマントを譲ってもらった。


名前通りに長い旅に出ていた騎士が元なのか、

マントは簡易ながら防御能力がついていて、魔道具の1つであった。


他にも有用そうな感じだけど詳しい話は後だ。


今日は戻るかもう少し進むか。


悩んだ僕は2人に相談し、結果を出す。


結論から言えば、戻る。


そうしてさらに3日後。


僕達は目的地の扉の前に立っていた。



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