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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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57/257

MD2-057「剣閃の先-4」

実験的に3000文字前後を3日に1回ペースにできないか確認しています。

書き貯めた結果なので56、57は同日更新です。

「! あっと、ごめんなさい。急に声を荒げてしまって」


ほぼ顔を突き合わせるぐらいまで自分が近寄っていたことに気が付いたのか、

マリーは慌てて座りなおした。


ほんのり顔が赤いのは恥ずかしさからか先ほどの話の内容のせいか。


「マリー、知ってるの? でもマリーの名字ってウィートだから知り合いってぐらい?」


どうも訳ありだろうけど聞かないわけにはいかないことだ。


「ええ、はい。えっとですね、ウィートは師匠の家名なんです。

 家は捨てたも同然でしたし、下手に名乗って厄介ごとになってもいけないので」


セリス君は僕達の身の上を知らないので混乱した様子だけど

それでも話を座って聞いているあたり、良い子だよね。


まあ、僕はそれどころではないのだけど。


「待って……この流れでそれってことは……もしかして?」


「はい……そのうち言おうとは思っていたんですがまさかこの時になるとは……。

 オルファンは実家です。その、お姉さんと結婚をしようとしてるのは

 恐らく叔父の息子、つまり従兄ってことですね。

 今回の結婚話、間違いなく碌な理由じゃありません。

 そういう人達ですから、ええ」


めらめらと何かの炎が幻視出来そうなほどにマリーは怒りに燃えている。


どうやらその従兄達はあまりいい領主という訳ではないようだ。


「そういうことらしいから。いつ行こうか」


そうと決まれば後はどう動くか、だけである。


僕としてはセリス君の実力を確認するためにも

地下1階ぐらいはいっておきたいところだけど。


「え? あ、ありがとうございます! 実は地下2階までなら

 何度か行った事があるのでよろしければすぐにでも!」


『思ったよりやるのか、敵が予想より柔らかいのか……あるいは両方か。

 どちらにせよ、良い情報だな』


元気いっぱいのセリス君と、ご先祖様の安堵の声に頷きながら

僕はどこかに向けて叫ぼうとしているマリーという珍しい姿を止めるべく

彼女の顔の前で手のひらを振るのだった。










「斬岩剣!」


甲高いセリス君の声が通路に響く。


僕もだけど、まだ声変り前なんだよね。


硬く、太い木へと勢いよく斧で切り込んだような音がした。


セリス君が手持ちのショートソードで騎士の1人へと切りかかった結果である。


下っ端のような姿ではあるけど、それでも全身に金属防具の騎士姿だ。


そんな相手の肩、防具のある場所へと切りかかった結果は

普通なら弾かれるところだ。


であるのに、セリス君の剣はまっすぐ下に抜け、

その右腕を切り落としていた。


「とどめっ!」


中身は髑髏なので感情は読めないけど、きっと動揺してるんだろうなあという

気配を感じながら僕は明星を首のあたりに突き入れ、相手を沈黙させる。


首が取れたら倒したことになるんだよね、この相手。


(いいスキルだね。こういう相手には強い)


再使用には時間がかかるのか、別の相手と切り合っているセリス君を

援護すべく動きながらそう考える。


斬岩剣、ご先祖様情報によると

とある系統のスキルで、上位には斬鉄という物があるらしい。


半分ほどの防御を無視するとか。


個人的には鉄より岩の方が切りにくそうだけど、

この場合の斬鉄、は不可能の代名詞とのことで

斬鉄はほぼすべての相手に有効打を与える最高のスキルの1つだそうだ。


下位とはいえ斬岩剣はこうして防御を固めた相手に

直接打撃が通るという非常に有効な攻撃となるのだ。


これがあるから2階まではこれた、というのも納得だ。


2階までは同時には3体までしか出ないらしいし。


「っと、ホークウィンド!」


そうこうしているうちに彼に迫る増援に風魔法。


大人の片腕ほどの幅、厚みは太い木の枝ほど。


詠唱省略からなのでその半分ほどの幅で

不可視の風が飛び立つ。


ホークウィンドはずばり、切断を伴う風魔法だ。


かまいたちってやつだね。


マリーは僕がこれを覚えた時、自分も使いたい様子だったけど

彼女はまだ突風ぐらいが限界だ。


そんなマリーの魔法適正だけど、出発前にギルドで

色々の確認をしてもらった時に良い事が判明した。


ちゃんと火と雷以外に適性が生えていたのだ。


いや、生えていたというのもちょっとおかしいけども、

僕はやっぱりという気分だったのは確かだ。


元々適性があるとされる以外の属性は

有効に覚えることができないのが普通のはず。


でもマリーがなんだかんだと頑張ったから実戦で使える、

というのはどうもおかしいと思っていたんだよね。


僕ほどではないけど、他の属性も適性を得ていたのだ。


前はそうでもなかったらしいから、成長して新しく得たということになる。


適性が増えるのは珍しいことのようで、

受付の人は一緒に喜んでくれた。


これがマリーの実力なのか、僕やご先祖様といっしょだからなのかは

しっかりとわからないけどうれしいことだ。


そのうちマリーももっと魔法を覚えてくれるんじゃないかな。


ともあれ、目の前の敵だ。


僕の魔法は相手の足にぶつかり、

ちょうど防具の隙間付近から切断することに成功する。


いくら強力な攻撃を繰り出せる騎士とはいえ、

こうなればただの的だ。


油断なく繰り出されたセリス君の剣と、僕の魔法とでその相手もすぐに倒された。


「追加はありませんね。休憩しましょう」


さらなる援軍への備えとして待機していたマリーの声に頷き、

僕達は地下3階の小部屋で一度休憩をとる。


ここは安全地帯ではないので通路から敵が来るかもしれないけど

足音ですぐにわかるから一息つくには十分だ。


「今のところ順調ですね。と言うよりお二人とも複数属性の魔法を使えるし、

ファルクさんは剣もちゃんと使えるし……すごいです」


自分、剣だけなんですよね、と落ち込むセリス君。


自信なさげだ。


「いやいや、君のあれ、スキルでしょ? あれだけでも十分やっていけると思うよ」


僕は本心からそういって慰める。


もうすぐ11歳らしいけど、頭でも撫でたいぐらいだ。


マリーもまた、うんうんと頷いている。


「そうでしょうか……」


「そうだよ。誇ってもいい。自分は斬岩剣の使い手だ!ってね」


まだ弱弱しくつぶやくセリス君の肩を叩きながら僕はそう断言した。


そこまで強く言うのにはわけがある。


なんと、あのスキルは硬い相手に使うだけじゃないのだ。


ご先祖様曰く、スピリットは物理攻撃が無効、じゃない。


呆れるほどに防御が非常に高いんだとのこと。


銀武器を除けば、その障壁ともいえるような物を突破するような攻撃は

大体がなんらかの属性を持った攻撃だったりするので

まずわからないだろうけど、だそうである。


つまり、そういうことだ。


彼は銀武器じゃなくても幽霊とかが切れるという非常に珍しい存在なのだ。


控えめに言って、すごいよね。


今目の前にスピリットはいないので実践できず、

僕は彼にそれを言うことはできないけれど。


恐らくはユニークスキルという奴だ。


勇者や英雄、聖女とか呼ばれてる人たちは

結構な割合でこういうスキルをもってたらしいんだよね。


(やっぱり血筋かなあ?)


僕は休憩がてらそんなことを考えていた。


『習得自体は条件さえ満たせば血統は関係ないぞ』


またご先祖様はそんな危ない話をさらっというんだから、もう。





ちょっとばたばたしたけど、それ以外は順調に僕達は進んだ。


何故なら、相手は魔法を使わないから。


初手、あるいは時々魔法を撃てば後は大体総崩れだ。


「今は大丈夫ですけど、下に行くほど魔法防御が上がって

 いろんな魔法が効き難くなるそうです」


「そっか。じゃあ魔法だけじゃない戦い方もちゃんとしないといけないね」


目的へ向けてしっかりと調べていたらしいセリス君に頷き、なおも進む。


そして妙に落ち着く空気の大部屋に出た。


「ここが休憩所みたいです。ほら、あの小部屋に入ると地上に出るらしいですよ」


「なるほど……不思議だ」


前の冒険者が炊いた後であろうたき火跡や

ごみの積みあがった隅っこを見る。


生活感があるダンジョンってなんか面白いな。


「一度戻りましょうか、依頼も一部終わらせられそうですし」


「そうだね。セリス君もそれでいい?」


マリーの提案に男2人である僕とセリス君は頷き、今日は戻ることとした。








「そういえば、結婚の話はいつまでに返事なの?

 さすがに今日明日ってことはないよね?」


素材の引き取りなどを終え、食事の最中に僕は聞いていないことを問いかけた。


自分が言ったように、時間が全くないってことは無いだろうと思っていたので

余り気にしてなかったんだよね。


「はい。新年の儀の時に宣言するのが一番めでたいのではないか、

 って提案されているみたいです」


「そっか……マリー、抑えて抑えて」


まだ2か月以上あることに安心しながら、

僕はマリーをなだめにかかる。


また謎の炎が巻き上がりそうだったからである。


「失礼しました。記憶にある叔父や従兄はその、良い人ではないもので

 つい悪い方に捉えてしまって……。

 難癖をつけて話を早めるかもしれませんからね。

 油断なく行きましょう。具体的には攻略は早い方がいいかと」


「そう……だね。あせらず、慌てず、それでいて素早く行こう」


そんな会話を締めに、その日は終了。


せっかくなのでセリス君の宿も僕達と同じところに切り替えて翌日に備えるのだった。




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