表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/257

MD2-056「剣閃の先-3」

実験的に3000文字前後を3日に1回ペースにできないか確認しています。

書き貯めた結果なので56、57は同日更新です。57は22時ごろ予定。


オブリーンの王都そばにあるダンジョンを抱える街、イオリア。


正確には最初は王都への関所としての場所であり、

それがいつの日か発生したダンジョンを目当てに

どんどんと発展し、街となってしまったということだった。


イオリアはその時に呼び名としてつけられた名前だそうだ。


ダンジョンが出来たからとすぐに関所を動かすということも出来ず、

かといって近すぎることと、一般人が不用意に出入りしないようにと

周囲を石壁で囲まれたダンジョン。


その見た目はお墓。


ただ大きさは普段の10倍ほどだ。


ふたとなる石板をどかすと、本来なら亡くなった人が

収められているはずの場所にあるのは謎の階段。


そしてその中には石造りの明らかな人工的な空間が広がっているのだという。


中はまだまだ探索中で、現在判明している階層は46。


5階ごとになぜか休憩できるような箇所があり、

さらに不思議なことにそこから地上に戻れるのだそうだ。


そして、出てくる相手は騎士風の恐らくはモンスター。


下っ端然とした相手から、立派な装備風の相手まで様々。


武装も長剣から短剣、手槍など多岐にわたる。


何より一番の特徴は、相手が浄化の効かない不死者だということ。


正確には倒せるので不死者ではないのだけど、

兜から覗く顔は髑髏で、目には魔法のような赤い光が灯るというから間違いない。


幸いなことに、中のダンジョンからは一切出てこないそうだ。


発見からこれまで、一度も出てきていないというからそれは安心してもよさそうだった。


何故浄化が効かないのか?


それはよくわかっていない。


そういう特殊能力を持っているのだという単純な話から、

実は不死者ではない別物ではないかという話まである。


いずれにせよ、彼らはこちらを見つけるとまるで生前にそうであったかのように

隊列を組んで襲い掛かってくる。


奇妙なことにそれは模擬戦を挑むかのように堂々としたものだという……。


かといってこちらは力にも物資にも限りがある生者。


対して相手は倒してもどこからか湧いてくる不死者。


一筋縄ではいかないのは言うまでもない。


人型ということで対人の訓練に適しており、

倒すと拾える物たちは壊れてはいるけど武具であったり、

鎧の一部であったりすることで鋳直すことで材料となる。


そんなわけで冒険者もそれなりに通う奇妙なダンジョン。


「そんなダンジョンに潜って地下10階まで行くのが目的ってこと?」


「……はい」


僕のやや呆れの混じった声に、テーブル向こうの男の子がうつむき気味に答える。


僕よりも年下、きっと村に置いてきた弟より少し上、ぐらいの子。


なので年下扱いするには微妙なところだけどね。


流れるような銀髪が肩を超えて伸びており、

後ろで紐で縛っている。


鍛えていそうだけど染みの無い肌。


腰に下げたショートソードからして戦わないわけじゃないだろうけど、

着る物さえ間違えなければ女の子と間違えそうな顔立ちだ。


ギルドで依頼を見繕っていた僕達に、そんな彼は話しかけてきたのだ。


お仕事を頼めませんか、と。


彼の先導でやってきた、軽食を提供するおしゃれな感じのお店。


そのやや表通りから遠いテーブル。


そこで語られたお仕事の中身は、ダンジョン10階への付き添いと助力。


それだけなら単純なのだけど……。


「セリスさん、私たちに依頼した理由は何なんでしょう?

 他にも力のある冒険者はいると思いますが」


マリーがそう口にする通り、僕達以外にも冒険者はいっぱいいた。


彼女の指摘に口をつぐんでしまうセリス君。


『ファルク』


(うん。大体わかってるよ)


頭に響く声に答えながら、僕はセリス君の方を向く。


「第一に僕達がこの街になじみのある人間じゃないということ、そして実力がはっきりしてるような

 実力のある冒険者だと邪魔が入るから、ってとこかな?」


僕の指摘に、セリス君はびくっとなって手元のナイフをお皿の上に落としてしまう。


「! 失礼しました」


セリス君は慌てながらもすごく丁寧な流れでそれを拾い、

一度横に置いてこちらに問いかけるような目を向けてくる。


「そう、そういうところもだね。僕は田舎者だけどさ、

 君の動きは冒険者にしては丁寧過ぎるんだよね。

 恐らくは育ちが良い、と直感できるほどに。

 1つ1つの仕草でそれがわかってしまう」


マリーは黙って僕の言葉を聞いてくれている。


もしかしたら彼女も気が付いていたかもしれない。


なんだかんだと、マリーもあれこれがその方面、

いわゆる貴族的な仕草だからね。


「目的は間違いないと思うけど、大っぴらにその助力を求めるには

 自分の名前は売れすぎている。その上で、達成されたらまずいと思っているような

 相手が別にいて、下手に有力な冒険者に依頼すると妨害を受けそうな立場。

 まあ、そんなとこかな、と」


身分を隠してる相手から受ける依頼なんて

どこをどう切り取っても普通じゃない。


そんなことぐらいは僕でもわかるよ、うん。


お仕事としての難易度の方は行ったことの無いダンジョンだから今は何とも言えないね。


「……お声をかけて正解でした。わかりました。実は……」


そこで話し始めるのもどうかと思う、と突っ込んでみるべきか

非常に悩むところだったけど、依頼を受けないという考えは無かったのでそのまま聞くことにする。


中身はある意味よくあるお家騒動だった。


彼の家系、正確にはこの国の貴族は長子継承が主だ。


それは性別自体は関係が無いが、夫婦となった場合には

王家を除き、夫が立場上は主となるそうだ。


建前は長子継承とするけどやっぱり男性がって話だよね。


そして、彼には年の離れた姉がいる。


そんな中、両親が不慮の事故に合い、命は助かったが

領地運営はほぼ不可能ということで引退の危機。


家の運営はセリス君の姉に託されるわけだけど、

そこに沸いてくる結婚話。


しかも相手は末端とはいえ王家に連なる相手。


無下に断るわけにもいかず、かといってまだ親が存命なので

権威は親にある、という状況。


でもこのままでは領内を安定させるため、などと押し切られそう。


であれば、と思い立ったのがセリス君だ。


「騎士証があれば国を守る実力あり、として認められる、と。

 そうなれば戦えない長子の代わりに継承者として認められ、

 後はお姉さんがそれを了承したら完了、と。

 なかなか複雑だね」


長子が病弱だった場合などの例外としての

古めのしきたりらしいけど、効果はばつぐんらしいから狙う価値はある。


問題はその騎士証が手に入るのがこのダンジョンの10階の中ボス、

しかも必ず手に入るわけじゃないということ。


他のうまみは無く、戦闘の回避も可能なので

普段は見向きもされない相手らしいけどね。


「私が必死になる理由はそのぐらいですね。ただ、ものすごく個人的に言えば、

 姉に言い寄ってきてる相手がその……姉の倍以上違う相手なんですよね」


聞けば彼の姉さんは貴族的にはとっくに結婚適齢期で、

結婚相手を探さないといけない時期ではあるらしい。


でもその相手が自分の親の方が歳が近いような相手だとすればどうだろうか?


「なるほどね……。そういえば相手も貴族なんだっけ?」


何気なく聞いた僕。


セリス君も、ああ、そういえば、といったように口を開く。


「はい。えっと、オルファン家です。と言ってもファルクさんは知らないと思いますが」


「オルファン!? それは本当ですか!?」


それまでずっと聞き役に徹してくれていたマリーが、

慌てたように僕とセリス君の間に乗り出してくる。


どうやら、思ったより話は複雑なようだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつもご覧いただきありがとうございます。その1アクセス、あるいは評価やブックマーク1つ1つが糧になります。
ぽちっとされると「ああ、楽しんでもらえたんだな」とわかり小躍りします。
今後ともよろしくお願いします。

小説家になろう 勝手にランキング

○他にも同時に連載中です。よかったらどうぞ
兄馬鹿勇者は妹魔王と静かに暮らしたい~シスコンは治す薬がありません~:http://book1.adouzi.eu.org/n8526dn/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ