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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-047「レベル以上の強さという物-5」

ちょっと短いです。

「固まっているなら今のうちに!」


幸いにもというべきか、建物は石を積み上げて作った物だった。


となれば効果的な魔法を使わない手は無い。


僕とマリーが詠唱を始めるのは火の魔法。


精霊への祈りの句を微妙に変え、想像する。


まっすぐではなく網を投げるように相手に襲い掛かる赤い雨を。


「「この手に集い、響き渡れ、赤き雷鳴! レッドシャワー!」」


僕の長剣、そしてマリーの杖の先から魔力が伸び、赤い力となって変化していくのがわかる。


魔法は精霊の力を借りた物。


自身の魔力はそのためのきっかけ、糧に過ぎない。


強い魔法という物はそれだけの魔力なりを精霊へと受け渡し、

思うような何かを生み出すことに他ならないのだ。


伝説によれば英雄の1人は、火よ、水よ、等の一言で

生活に必要な物から無数の魔物を滅ぼす魔法までを自在に発動させたという。


僕やマリーはまだまだちゃんと詠唱しないと威力などが弱まってしまうが、

こうして自分なりに改良した魔法が撃てるのは誇って良い事だとご先祖様は言う。


そして、雨に降られた、というにはやや物騒な光景が広がる。


体のあちこちを細い火の矢で焼かれたゴブリンたちがそこら中に現れた。


半分以上が固まって出てきたために多くを巻き込めたけど、

まだまだ魔法の範囲外にゴブリンはいる。


そのうちの数匹が魔法を詠唱しているのが見えた。


『受けるな、避けろ!』


ご先祖様の警告。


ほぼ同時に背中に走る悪寒。


エルフの力を少しなりとも得た結果だろうか。


僕の目には2匹のゴブリンがそれぞれ、

火の魔法と風の魔法を産み出そうとしているのがわかった。


それだけなら、防御の手段はいくらでもある。


ある……はずだ。


「マリー!」


「きゃっ」


でも僕は警告と自身の感覚に従い、

横にいたマリーを抱きかかえるようにして横っ飛び。


瞬きの間に、放たれた魔法は互いに意志があるかのように寄り添い、

一つとなって先ほどまで僕達がいた場所を突き抜けた。


『共鳴による合成魔法……プレイヤーかイベント戦でしか見ないような魔法が……。

 そうか、あのゴブリンたちは皆強さが同じか!』


ご先祖様の言葉の半分もわからないけど、危ないのだけはわかった。


僕達が慌てているのがよほどうれしいのか、ゴブリンたちは喜びながら

次々に魔法を放ってくる。


ほとんどは普通の魔法なんだけど、たまに先ほどのようなおかしな威力の魔法が混じる。


「森がっ……燃えるっ」


「どうしましょうっ!」


なんとか回避は続けるのだけど、被害は周囲に広がっていた。


僕達自身には直接影響はないけれど、あまり良い状況とは言えない。


そのうち燃え広がりでもしたらこっちも問題だしね。


撃ちあってもいいのだけど、相手の得意な部分で戦う必要も無いよね。


「準備できてますよっ」


「よし、3……2……1……今っ!」


合図とともにマリーが放つのは風の魔法。


長い詠唱も無く、魔法名も特に決まっていない。


短時間にちょっとした突風を産み出すだけ。


出来ることとしたら砂煙をすこーしだけ作るぐらい。


でも、それで十分だ。


ゴブリンたちはその砂煙に顔をかばい、動きが止まる。


その時間があれば、僕には十分だ。


姿勢を低くしてウィンドチャージを発動、風に追いすがるように飛び込む。


途中、既に抜き放っている長剣の柄を撫でるようにして魔法剣を付与。


属性は雷だ。


正直、生き物相手に近接攻撃を仕掛けるならこれが一番だよね。


ゴブリンたちがこちらにようやく気が付く。


ギ?って声を上げるけどもう遅い。


「サークル……カッター!」


言葉にするならそれはただ単に自分を中心に回転して斬るだけ。


でもスキルとしてのこれは切れ味も向上し、ほんの少しだけど剣より遠くまで届くのだ。


対複数が多いことを見越してご先祖様が習得を進めた両手剣用スキル。


やや長めの長剣であるがゆえに、今の僕でも使えるのだ。


ぼとりと、ゴブリンであった何かが地面に落ちて音を立てる。


こう近くては、魔法も使えない。


なにせ、詠唱前に僕が近づいてしまえばいいわけだからね。


マリーの援護を受け、ゴブリンたちを倒したのはそれから間もなくだった。


(ゴブリンたちは階位、レベルはそうでもないんだろうけど、攻撃面では強かったなあ)


まだ強さという物が数字で区別される、というのは実感がわかないのだけど、

知れば知るほど、なるほどと思う。


例えば同じ人間であれば、その数字が違えば確かに強さが違うだろうなあと。


『レベルは種族が違えば扱いも変わってくる。ゴブリンの10と人間の10は別物だからな』


ランドルさんたちを呼ぶ前にゴブリンたちを片づけている中、

そんな言葉に僕は無言でうなずく。


『ともあれ、レベルというのはその体にどれだけ精霊を宿せているか、に尽きる。

 高いほど……そういう目で見るとすごいまぶしいほどになるんだ』


僕はそんな話を聞きながら、レベルという物に負けない強さ、戦い方を

身に着けるのが大事なんだろうなと感じていた。







「素晴らしい……思ったより綺麗に残ってますよ」


「ゴブリンにもわかるんですかね?」


ランドルさんたちはすぐさま作業を開始した。


といっても掃除からだけど。


そんな中、祈りの場所であろう部分にあったのは大きめの戦乙女の像。


白い、滑らかな石材を掘りだしたと思われる彫刻は僕が見てもすごさを感じた。


値段? 売り買いできるような物じゃないと思う。


誰かを導くように片手を伸ばし、背の1対の羽根が大きく広がっている。


各所の甲冑と、間から伸びる滑らかそうな衣服も良くわかる。


腰に下げた長剣が戦乙女が美しさだけでなく、強さも誇っていたことを明確に証言する。


「女神の代弁者、断罪の使者、人間だけじゃなく、亜人も導くと言われてますよね」


隣にきていたマリーもまた、像を見上げてそうつぶやく。


そう、戦乙女や女神は何も人間だけの味方ではないのだ。


リザードマンや他の亜人にも同様に導きを与える存在として有名だ。


ただ、ゴブリンやコボルト、オークやオーガ、

そういった相手にはそうでもないんだよね。


何が具体的にどう違うのか、僕にはまだよくわからない。


この話を聞いたとき、僕はこう考えたのだ。


いつか人間も導きを受けられない存在になるんじゃないか、って。


ランドルさんを手伝って掃除や片づけをしているうちにお昼となり、

昼食後に続けていつしか夕方。


僕とマリーは見張りに立つ。


同行の人達も交代しながらだ。


さすがにずっとは僕達も厳しいからね。


そうして夜。


僕は建物の出口付近でかがり火を作りながら空を見る。


見えるのは無数の星。


ご先祖様の言葉が正しければ、その中には僕達が

今いるような大地がある星があるかもしれないとのこと。


『実際に行ったわけじゃないから予想だけどな』


(それでも、夢があるよ。世界は広いんだなって)


こうして一人になると、最近よく考えてしまう。


霊山に本当に行けるのか、と。


そもそもいくつ祝福がいるのかもはっきりしていないのだ。


今のところ、砂と森だけだしね。


そうだ、帰ったら弟たちに手紙を書かないといけないな。


「……ん?」


一瞬、星の光を覆うように何かが黒く空を染めた気がしたけど、

気のせいだったのか星空はそのままだった。







翌日、無事にランドルさんたちの手で結界は作動したらしい。


建物を柔らかい光が包み、気持ちが晴れてくる。


これが結界……。


今後はここまでの街道の整備と、巡礼の日程を決めるのだそうだ。


行きとはどこか違う様子で僕達は街に戻る。


次の冒険先は何にしようか、と話し合う日々がまたやってくるのだった。




そろそろ特訓回の予感。


魔法の共鳴は同一量の魔力がどうとか必要なので

本人が同時に撃つか、イベント的に発動するか、ぐらいでしたが

データ上同じ強さの場合には……という感じです。

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