MD2-204「謎の石くじ」
アップするのを忘れてました。繋ぎ回です。
「これはまた……3人で潜ってきたにしては随分な量だね」
動く人形のルーちゃん、そしてその持ち主?のアイちゃんのご両親な鍛冶職人の店に戻った僕達は、さっそくとばかりに採ってきたよくわからない状態だった石ころたちを大きなテーブルの上にぶちまけるのだった。既にアイテムボックス持ちだとはばれているので隠すこともない。
「たくさんだー!」
部屋の灯りにキラキラと光る石たちが多いからだろうか、アイちゃんは目を輝かせてテーブルに昇らんばかり。僕達も、自分達で採ってきた物の結果を実は今はじめて見てるんだよね。
「ファルク君じゃなかったらこの3分の1もなさそうだなあ……偉い!」
「結構色々ありますね……ファルクさん、わかりますか?」
「僕より本職な人達の方が早いと思うけど……この辺は銅かな? 純度は随分高い気がするけどさ」
一番近いところにあった茶色が多い石を掴んで確認してみるけど間違いないようだった。よく見ると種類はともかく、どれも石の部分は少なめで大体何かしらの鉱石というか、そのまま余分な物をどかせば使えそうというか……。
『1ついくらでも売れそうだな、いい感じじゃないか』
ご先祖様の言葉が正解だった。このままでもあちこちで売れそうな物ばかりだった。と言っても、ほとんどは鉄や銅なんかのよく見る奴みたいだけど。
「この量、そしてこの種類……もしかして皆さん、人形のいるダンジョンに潜られたんですか?」
「え、わかるー? そうなのよね。ちょっと頼まれごとが……安産のお守りを取りに行ったのよね」
「何やら面白そうな気配がすると思えば……坊主、面白い場所を冒険してきたのだな」
鉱石類の山に、何か感じるものがあったのか奥さんに見事に指摘される。その筋では有名なのかもしれないね。これだけ色々持って帰ってこられるんだから知られててもおかしくは無いかな? ただ、あの門というか仕掛けを突破しないといけなそうだけど。
そんな会話の中、部屋に入ってきたのはお爺さんの方。小さい物を見るための道具なのか、よくわからない筒を取り出して鉱石たちを観察し始めた。お爺さんはダンジョンのことをよく知ってるのかも、知れない。
「魔物はそこまで強くなかったですけど、厄介な感じでした」
「私達も昔何度か挑んだことがありますよ。仲間に魔法使いを何人も連れて行かないといけないし、持って帰るにもどれが何やら……賭けみたいなものでした」
やっぱり、ダンジョンの中だとわからないというのは変わらないようだ。重さも同じなんだもんなあ、困ったもんだよ。どうせならここで買い取ってもらおうと思って持ってきたのだけど、思いのほか良い物が多かったらしい。
いくつかの種類に分けていくうち、いくつかの塊が残った。銀色と呼ぶにはちょっと違う色合いの物。そう、精霊銀だ。緑にも青にも、あるいは赤色にも見える光の反射。不思議な……色だね。
「気のせいでしょうか? 近くにいるだけでつい魔力が通ってしまうような……」
「ダンジョンから採れる精霊銀の特徴だね。周囲の魔力を吸収しやすい状態で産まれてくると言われる。人の手で作った物だとそうでもないらしいんだけど……それにしても、この量は初めてだよ」
結局、精霊銀だったのは赤ちゃんの頭ぐらいのが2つ、拳ぐらいのが1つ、銀貨ぐらいのがそこそこ。銀貨ぐらいの大きさでもかなり高いらしい。大きい方になると国が買ってもおかしくないんだとか。
「売るにも騒動が起きそうだね。おすすめはこっそりと装備の裏にでも伸ばした物を仕込んでおく形かな。魔力が通れば勝手に体が強化されるし、魔法の効きも良い。拳ぐらいのは2つに割って2人用のペンダントにでもしてぶら下げておくといい」
「あ、ビアンカさんの分け前も……」
「私はこっちの小さいので十分よ。これだってしばらく遊んで暮らせるぐらいの値段になるはず」
かなり贅沢に思える使い方の提案に慌てる僕とマリーだったけど、ビアンカさんは気にしない風に言って小さい方の精霊銀を指さした。確かにこっちだけでも価値はすごいらしいけど……いいのかな?
「本当によろしいんですか? せっかく3人で冒険した結果なのに……」
「いいのいいの、小さいのでも十分だし、なんだか大きいのはトラブルが舞い込んできそうで……」
「ひ、否定できない……」
これまでの僕の人生を考えると、上下に反動が大きいからなあ……あ、全部使うんじゃなくて何かの交渉に使えるようにとっておこう。どうせ大きいのを全部使う訳にもいかないだろうしね。
装備を預けておけば、数日でやってくれるということなので僕達は久しぶりに服だけという姿になった。どこでも戦闘という訳じゃないけれど、普段は装備を身に着けたままだから新鮮というか、なんだか落ち着かない。
「お待たせしました。打ち上げにでもいきましょうか」
「うん。そうだ……ね」
振り返った僕は固まってしまった。そんな僕を見て不思議そうに首を傾けるマリー。その拍子に揺れる髪の毛も可愛かった。そう、久しぶりに見た服だけの姿はなんというか、女の子って感じだった。普段だと付けていないアクセサリーなんかを付けているからかもしれない。
「ほーら、ファルク君。そういうのは言葉にしないとだめよ」
「あっ、えっと……似合ってるよ」
「ありがとうございます。せっかくだからおしゃれしてみました」
にこりと笑う姿に、僕の胸はときめいてしまうのだった。そうだよね、マリーも女の子だし、良いところのお嬢様なんだ。着飾っていけばそりゃあ、可愛くもなる。僕が、守らないと!
『まあ、言うほどマリーだってか弱いわけじゃあないが、守られて嬉しくないことはないだろうな』
(それは……わかってるよ。でもこんなに可愛いと変な場所に連れて行ったら絡まれるかな?)
「お食事ならおすすめの場所がありますよ、アンもそこの煮込みが大好きなんです。普段は野菜嫌いなのに……」
「むー、アンだってお野菜食べられるよ! ルーちゃんも一緒!」
元気に叫ぶアイちゃんの姿に故郷の妹が重なり、ちょっと鼻がツーンとしてしまう僕。早く父さんたちを見つけて帰らないとな……同じ悲しみを味合わせるのは良くない……わかってはいるんだけど、ね。
僕のそんな様子に気が付いたらしいマリーが腕を取り、感じる温かさが僕のそんな心をほっとさせた。あんまり心配かけちゃいけないね。
「あれ、お兄ちゃんお腹痛いの?」
「大丈夫だよ。あ、そうだ。アイちゃんにお土産があったんだった」
すっかり忘れていた……例のダンジョンで、石以外にも拾ったんだよね。細かいところは違うけど、多分ルーちゃんと同じような奴だと思う。動いてなくって、新品だよーって感じで収められてたからね。
「はい。大事にしてね」
「わ! お人形だ! ルーちゃんの妹だ!」
その人形の出所と価値がわかるためか、両親には遠慮されたけど装備の代金の一部だと思ってもらえればと告げると引いてくれた。作業時にあまる精霊銀のかけらで細工をしていいかとのことだったのでそれも了承する。
そうして僕達は、装備が新しくなるまで数日を街で休養として過ごすのだった。
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